第四十四話、収穫
パンパカパーン!
さあ、待ちに待った麦の収穫です。
既にアルさんとコールさんや町長も集まってガヤガヤやっています。
麦は黄色く付き丸々と太った実を付け、農家の皆さんも穂を触ってはしきりに唸っています。
そしてジャジャーン!
ここでも新道具の登場です!
鎌ではなく人力刈り取りき〜
刃のついた車を押して歩くだけで、麦の穂が刈り取られる仕組みです。これも麦が一列に植えられたおかげで出来る事。
さらにセンバコキで脱穀され乾燥に回します。
これまでの人力オンリーから大幅に省力化と大量生産に対応した道具の登場です! 農家の皆さんも道具を次々と試しては喜びの声や感涙を流しています。
うんうん、皆さんの反応を見ているだけで大成功って分かるよね。
ここには領都からやってきた三人も来ていますが、農業には余り詳しくなさそうで農家の皆さんの反応を見て困惑している様子。ここで見た光景も伯爵に報告されるのかな?
センバコキは冬の間に増産、さらに簡単な木製のやつは各農家さんでも自作したりで着々と増えています。大工のジーンには乾燥機と唐箕の作成で頑張って貰いました。
後でお酒持って行くねー。
……
「やっほー」
ジーンの家へやってきた、手には冬に麦汁を蒸留し樽に詰めていたアルコール。まだまだ若いけど作りたてより馴染んでる様子、元がワイン樽だったので独特の風味が付いて美味しかったです。
「これか?」
ジーンがオレが持ってきた作物を手に取って訊ねる。
「そうそう、ポタタだよ」
こぶし大の茶色い塊がゴロッと並ぶ、商人さんはポタタと言ってたけれど、うんジャガイモだね。
「台所借りるよー」
鍋によく洗ったポタタを入れ、浸かる程度の水を入れたら火に掛けて。
「あとは茹で上がるまでこれ飲んで待っててよ」
コトリ、と作りたてのガラスのグラスを出して並べる。
「おいおい、何だこれ!」
ふっふっふー、ジーンさんは知らないかな? コレはガラスと言うのだよ?
「オレが作った、ガラス製のグラスだよ」
「ガラスって、たしか都会の方の金持ちの家にしか無いっていうアレか?」
「知ってた? 窓についてるアレもガラスだけど、あのガラスでグラスを作ってみた」
「作ってみたってオマエ……」
じーんさん、ホヘーと間抜けた顔になってますよ。
「まあまあ、取り敢えず飲んでみて」
焼き物の瓶に詰め替えたウイスキー擬きをグラスに注ぐ、こうなるとガラスのウイスキーボトルも欲しいなー。
「おっ!?」
グラスを口元に運んだジーンが何かに気づいてこっちを見た。
ふっふっーん、気がつきました? 半年足らずですが香りが付いて風味も出てるのですよ。
続けてクイッと飲んで……。
「ッカァーー! なんだコレ! 前に飲ませて貰ったのと全然違うぞ!」
「美味しくなってるだろ?」
「あと、このグラスで飲んでる感じもイイ!」
でしょ! でしょ!
蒸留器を改良し、度数を高めたアルコールをワイン樽に詰め込んで保存したウイスキー擬きだが、上手くいったようだ。
「あとはコッチも」
茹で上がったジャガイモを皿に盛り、十字に切り目を入れたらバターを乗っけて、さあ食え!!
「熱っふぁ!」
涙目になってるジーン
ホフホフさせながら食べる。
ジーンを見ると、最初熱かったのが気になるのかフーフーしながら、けれど食べる手は止まらない。
ジャガイモも大丈夫そうだな。
「旨いなこれ!」
「そうだろう、毒あるけど」
ブブッーーーーーーッ!
「汚いなあ……」
「毒って、お前!」
「大丈夫だって、オレだって食べてるだろう?」
「まあ確かに、分かってて食べさせてるわけか」
「食べ方に気を付ければ大丈夫なんだよ。日に当たって緑になったやつと、芽が出たやつを食べなければ大丈夫。小さな芽の窪みは切り取ってな」
ヒョイっと残りのジャガイモを口に入れる…… ちょっとまだ熱かった。