第三十六話、ガラスリベンジ
魔石から出せる水の温度が変えられる事は、実は誰も知らないようでした。
考えてみたらこの世界の人たち、水は井戸の水か川の水、雨、海、池、とにかく自然の状態の水しか知らない訳で、そりゃ冬の井戸水とかビックリするくらい冷たいけれど、それをそのまま飲みはしない必ず煮沸した湯をさましてから飲む。
冷たい水が飲めるだなんて、元いた世界での比較的新しい時代の人しか思わないよね。そりゃ温度を変えるなんて発想も出てこない訳だ、もしかするとコレって大発見なのかも知れない。この世界での初めての発見か!!
「ふー」
さてさて、魔石感動はこの位にしてガラス作りに戻りましょう。
前回、何度も試作を繰り返し何となく丁度良い配分は分かった気がするので、今度こそ本番です!
予め熱しておいた窯の中の坩堝に、配分通りに混ぜた原料を入れ、さらに火口に向けて吹子の風を送り込む!ゴーと言う音と共にどんどん炎の色が変わり高温になっていく窯……
なかなか温度が上がりませんね。
実はこの辺も何度も試行錯誤を繰り返しているのですよ、鍛冶屋のバルトさんの工房にも見学に行き、鉄を溶かす窯を見せて貰い。窯の周りに熱が逃げない様に粘土で固め、窯自体もサイズを考えて調整したり。
おっとと、溶けるまでの時間を使って完成までのイメトレ!イメトレ!
ガラス溶ける
吹き棒入れる
ガラス取る
吹き棒吹く
ガラス膨らむ
形を整える
底を作る
別の棒にガラス付ける
底にくっ付ける
吹き棒側を切る
飲み口を整える
底の棒を外す
冷ます
よしよし!
おっ!溶けてきたようです。
そい!
やっ!
んしょ!
んんん?
てい!
こうやって!
ゴロゴロー
んんー!
コン!
出来たあ!
出来たよ!
形はちょっと歪になったけど、ガラスのグラスだよー!嬉しい!!
あとは、冷ますための窯にいれて数日放置です!
……
「ふんーふんふーふんーふん」
嬉しすぎて鼻歌なんか歌っちゃうよー
「おかあさん、おとうさんが変……」
「しっ、見ちゃだめよ」
浮かれすぎました……
愛するかわいい嫁のユユと娘のリリさんへー
「はい、プレゼント」
コトリ、と絹布で包んだ物を置く。
「えっ!なあに?!」「わあ!」
二人は包みを開けて驚いてくれたよ。ふふふーその顔が見たかったんだよね。
「うそ、ガラスじゃない!」
さすがユユさん、何度かだけど見た事はあるもんね。
「ガラス?」
リリちゃんはガラスが分からず首を傾げてる。
「どうしたのこれ!?」
「ふっふっふー、作っちゃいました!」
ドヤ顔キメる!
「すごくキレイ!」
リリちゃんは、グラスを持ち上げたり光に透かしたりしてとても喜んでくれている。あっ落とさないように気を付けてね、割れると危ないから。
本当は切り子みたいに加工したかったんだけど、そこまでは無理だったので磨いて磨いてキラキラにしてやりましたよ。
「二人ともグラスをそこに置いて」
ワクワク顔でテーブルに置く二人
魔石を取り出しグラスの上に
「水」
チョロチョロチョロー
「「えっ?!」」
グラスに魔石の水を丁度ずつ注ぐ。
「さあ、飲んでみて!」
二人がグラスを持って口に運ぶ、一口飲んで……
「冷たい!」「なんで?」
驚いた二人に、最近気がついた魔石の効果を説明すると。
「おとうさん、まだ寒いからリリは温かいお湯が飲みたかったな」
もう一度魔石をだして、お湯を入れてあげました。
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