第三十四話、種を蒔こう
「「「おおおおおおー」」」
今日からいよいよ麦の種蒔きです。
この日までに、牛さんに引かせた犂で畑はしっかり返されて、石灰を撒き、肥料を混ぜて耕された畑
畝を作り、畝に沿って手押し式播種機を押して歩く。それだけで、畝に適度な間隔で種を埋め、均す作業が完了するのだ。
それまでと言えば麦はばら撒きが主だったので、初めて見た時は鳥にエサやってるの!?て思った。種を蒔いた後で少し土を返すから完全に外に出てる訳では無いけれど、それでも食べられたりあまり土を被ってなくて芽が出なかったり確率悪かったと思うよね。
今回の方法は手間が掛かると思われるだろうけど、発芽して成長していく間に分かって貰えると思う。さらに収穫の時期になったら……ね。
取り敢えずは、説明会で手を挙げてくれた四人の地主さんの所で一クタールにも満たない畑で試しているだけだけど、来年の収穫の時期が楽しみです。
犂は他の畑でも順番に使って貰っている、他の農家さん達からも好評でジーンの所には注文が殺到しているそうだ。もちろん手押し式播種機もすごい事になるんだろうね。
「あ、コールさん、これ忘れないうちに渡しておくよ」
オレは手に持っていた袋を地主のコールさんに渡す。中身はオレの家で収穫して乾燥させておいた大豆だ、来年育てて貰うために渡しておく。
「おう、確かに。けど良かったのか?」
コールさんが気遣うように聞いてくるが、大丈夫!家族にはしっかり話して納得して貰いました。来年の収穫時にはコールさんがもっと沢山持ってきてくれるからと、ねコールさん!
一応連作障害の話もしてあり同じ畑では作れない事、他にも育て方のアレコレ話してお願いしておいた。
……
「ねぇおとうさん、この豆ホントに持って行っちゃうの?」
いつものキラキラした笑顔で見上げて聞いてくるリリちゃん、くーっ家族団欒のために皆で食べたい所だけど、今後の食糧事情改善のためにはコレだけは残しておかないといけないのだよ。それでなくとも枝豆の時や大豆を収穫した時にも味見として結構食べちゃったよね!?
「そうだなあ……よし!」
家族の食糧事情改善のためとは言え、取り上げるだけでは忍びないので、オレはある物を作ることにした。
ジャジャーン!
最近、狩の途中で見つけて取ってきていた梨だ、元いた世界でいう西洋梨に似た梨で追熟させていた物を小屋から持ってきた。
「わあ、梨!リリこれ好き〜」
「そうだねえ、リリちゃんは梨好きだよねー、だけど今日はこれをもっと美味しくしまーす!」
まずはこの梨を切って鍋で煮ます。柔らかい実なので火が通って色が変わった程度でよいかな?
次は小麦粉にバター、塩少々、これを混ぜてー伸ばしてー畳んでー伸ばしてー畳んでー伸ばしてー以下
(冷やすとか寝かすとか細かいことは置いといて)
伸ばした生地の中にさっきの梨を置いて、上から細く切った生地で網目のようにフタをしまーす。ハジの方は綻ばないようにフォークでギュッとしたら。
火を入れておいた窯にそーっと置いて。
待つのみ!
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「ん〜、いい匂い」
お母さんが匂いに釣られてやってきました。