第三十三話、防具屋の独り言
「まったく……」
一人ゴチっているのは防具屋のギルさん
水車小屋で作っているある物を防具に仕立て上げる為に試行錯誤を繰り返している真っ最中。
そんな中でも躊躇わず他の仕事を持ち込んでくる誰かさんのせいで、なかなか進んでいないのも事実であった。
「ゴウに言われるばかりも気に入らないが」
防具屋としては、新しい素材には興味があり薄くて向こうが透けて見える事を生かした防具も作ってみたい、が流石に他所で目立ち過ぎる。
絶対に破られない壁盾を作るのも良いが、この町で誰が使う?壁盾サイズでもかなり軽いのだが擬装のため木枠や金属を使わざるを得ないので多少は重くなる、いっそ目立つように作ってしまいたい欲求も湧いてくる。
使う防具の仕様はほぼ決まっている、それを防御力と軽さ、使い易さで何処まで拘れるかがポイントなのだ。革とこの素材で合わせたパーツを組み合わせて作ると良さそうな気がしている。
材料自体を大量に作るのがまだまだ難しいので、先の壁盾はまず無理なのだが、少量でも革にはよく馴染むので塗りこんで乾かすとかなり硬い革が出来る。その後の加工は難しくなるが、それは完全に乾く前に加工する事で何とかなりそうだと言う事が分かった。
木材にはどうだろうかと今試している所だ、木材も革のように硬く出来れば、槍の柄や他の事にも使えるかも知れない。
何だかんだとゴウの目論見に乗ってしまっているが、職人としては楽しい時間を過ごさせて貰っている実感もある。もう長い事新しい仕事が出来た喜びは感じていなかったとも思い、初心に返った気持ちだ。
「さてと、よっ……と」
背丈ほどもある木枠に革を貼り、素材を塗りこんでさらに革を貼る、何度かこれを繰り返し、終わったら金属で補強という誤魔化しをつけて完成の予定だ。
って、ええー!?ギルさん壁盾作ってんじゃん!
しゃあねえだろ、デカさは男のロマンなんだよ!