第三十二話、試作二
先日、商人さんがやってきた時に大豆を手に入るだけ持って来てくれと頼んだ、宿屋の奥さんがかなり押してたのが可笑しかったな。オレもちょっとお願いした物があったんだが頼んだ時変な顔されてしまったよ、さて何を頼んだのでしょうか。
取り敢えず、次のブツが届くまでにこっちで出来ることをやりますかね、次は大人の楽しみですよ!
この辺りでもエールやワインは作られている、ワインは主に白ワインだな。収穫したブドウを絞って最初の果汁は税金用のワインに持っていかれるが、搾りカスを更に絞った二番絞り以降の果汁を発酵させたワインが我々庶民の飲み物となる。
それをさらに薄められて水代わりで飲むのが定番だが、何と言ってもこの世界は魔石がありホーンラビットの魔石があれば飲める水が手に入るので、きっとオレが知っているエールやワインより使われ方が限定されているのかも知れない。
それでも町の飲み屋ではエールやワインが主だが、旅の商人や冒険者は魔石を使う、まあ冒険者はそれを集めるのが主な仕事だしな。使わなければ金にもなるし水を持ち運ぶより軽い。町ではそれぞれの家で井戸から汲んだ水を煮沸して使うのでウチでも狩で手に入れた魔石は殆ど売っている状態だ。
と、言うわけで何かというと酒作りだ。もっと言うと蒸留酒だな。美味しく酔う為のアルコール作りではなくて本当の目的は高濃度に蒸留したアルコールを作って、アルコール消毒をこの世界でも広めたいのだ。そのついでに美味しいお酒も飲めると、ね。
……
兜釜式蒸留器
何とかうろ覚えだった知識で作り上げた蒸留器っぽい物、きっとジーンに見せたら腹抱えて笑うんだろうな。
材料はエールの元になる大麦とホップを混ぜて発酵させた物やブドウ汁とカスのもろみ状態の物を試している。
水が沸騰しない温度でゆっくりともろみを加熱すると、アルコール分が先に蒸発して上の兜部分で結露になり縁に沿って降りてくる、それを周りの部分で受け止めて集めるという仕組み。
手作りで効率も悪いし一回の容量も少ないので何度かやる必要はあるが、どれだけ美味し……ゴホン!
何度か繰り返して蒸留すれば高濃度のアルコールができる事は分かっているので、ちょうど良い加減を(何の?)確かめている所だ。
先日、ジーンやバルトさん達に試して貰って好評だったから、もう少し量が増やせるようにして樽に入れて熟成出来たら良いな。おっと消毒用の高濃度アルコールも勿論つくりますよ。




