第二十七話、乾燥機
燃える炎
蚕の繭が羽化しないように、乾燥機を作って中の蛹だけ干からびさせると良いのではと考えたオレは、ジーンの所に行ったが追い返された。
危うくハンマーで殴り殺される所だったからな、そんなに怒らなくてもなあ……大きな物でなくて良いのだし、仕方ないので今ある道具で何とか工夫して作ってみたところだ。
「さて、上手く行くかな」
釜の上に木枠を組んで繭を入れた籠を置き、熱を当てて乾燥させる、火力の強さが難しいな近いと火が強すぎて繭が燃えたら大変だ。燃え尽きる前の炭みたいになった火で良さそうだな、そういえば炭ってないのか?
木枠の高さを変えたり、火の強さ等いろいろ試す、乾燥させる温度や時間はまだ試行錯誤が必要だが何とかなりそうな気がするぞ。そのうちジーンがやってきて「何だコレは」とアレコレ改良してくれるに違いない。
結果として、繭を乾燥させて中の蛹を干からびさせる事に成功した。町長の奥さんからも繭の品質には問題ない事を確認できたので、これからは繭にさせる蚕の数を増やしても大丈夫と言う事になった。
とは言え、蚕を増やすと桑の葉が足りなくなるので、今年は桑の木を増やす事もやっている。再来年くらいにはこの町の産業としてやっていける程には増やせていると良いな。ちなみに桑の実は子供たちのオヤツとして大人気なので残すようにしている。
この乾燥機を作って思ったのだが、麦とか穀物は収穫後に乾燥させなければならなかった筈だ、よく畑に吊るしてある姿があったが雨が降ると大変だし、オレの元いた場所ではサイロとかあったよな。あそこまで大規模でなくとも、手作業でやっている事を少しでも効率化できるように考えないと麦の収穫量が増えても人手が足りなくて無駄にしてしまっては元も子もない。
脱穀、乾燥、ふるい分け、色々機械や道具があったよな、ちょっと今ある道具を調べて考えてみるか。
……
この世界の闇を見た気がする……
穀物を収穫した後どうやって脱穀してるのかなと思ったら、やべーよ。お箸みたいので挟んでビーってやるんだと、ほぼ一本一本をだよ、何日掛かるんだよ!
その間に麦が劣化するんじゃないか?
たしか江戸時代でもセンバコキとか足踏みのやつあったんじゃねえの?とにかくセンバコキから始めるか、足踏みはジーンにやらせよ。
試しに作ったセンバコキを持ってノーフォーク農法を手伝ってくれる地主のコールさんの所に持って行ったら、もの凄い勢いで食いつかれた。ほんと食い殺されるかと思ったよ。
コールさんと一緒に試してくれてる農家さんのウチへ行って、それこそ収穫した麦の脱穀をセンバコキでやってみせると、これまた凄い勢いで泣かれた。特に女性達に……
脱穀の作業は収穫後の農家の皆さん家族総出の仕事なのだそうだ、昼間は畑に出ている男性より女性が多くやっているのだそうで、それこそ一日中お箸で挟んでザー!お箸で挟んでザー!
それを、センバコキだと束ねた麦の先をくし形の歯に挟んで引っ張るだけでザザザーッと取れるのだから、どれだけ楽になるのかホント泣いて喜んで貰えました。
もちろんコールさんは直ぐにこれを発注、それを知った他の地主さんからもセンバコキの注文が大量に届いた大工のジーンからも血の涙を流して喜んで貰ったよ。
センバコキは江戸時代に広がっていますが、足踏み脱穀機は大正時代の様です、ゴウの知識ではその辺が曖昧なので一緒に語らせてもらいました。