第十九話、計算
オレは、町長の家で久しぶりに机に向かって算数の計算をやっていた。
「この数字がこうなって、凡そこんな感じか。よし!町長出来たぞ」
「おお、出来たのか見せてみろ」
ここは町長の個室、町長の仕事の書類やら何かが置いてある場所なので本当ならオレなんか入れないのだが、この話を進めるのにどうしても必要な書類があったので無理を言って入れて貰った。
「まずコレが去年取れた小麦の収穫量と税金で納めた量、で残りがこれだけ」
「そうだな……」
「で、こっちはオレが言う方法で同じ面積で小麦を育てた場合の収穫量の予想だ」
「!!」
ガサッ、数字を見た町長から計算した紙を奪いとられた。
「ゴウの言う通りにやったら、本当にコレだけ取れるようになるのか!?」
「あ、ああ、あくまで全ての畑でこの方法を使って、上手く行った場合の予想だけどな」
「やる!今すぐやるぞ!すぐに地主どもを集めて!#⁉︎$※金@※〜!?」
この後、興奮しすぎておかしくなった町長を抑えるのが大変だった。
……
「ふー、さっきはすまんかったな」
居間に戻ってお茶をし、やっと落ち着きを取り戻した町長は恥ずかしそうに頭を下げる。
「いやいや、誰でもあの数字を見たらおかしくもなるさ」
「そうだな!」
いや、まだ少し興奮しているようだ。
「とりあえず手持ちのクローバーの種も全ての畑に使えるほどは無いし家畜も足りないだろう?まずは地主の人たちに話を聞いて貰って、興味ある人にだけ手伝って貰うという事から始めようや」
「いや、それだと……ううむ」
とにかく、今ある準備の量で始められる所から始めようか。
……
それにしても、数字や単位が元の知識に近くて助かった。
一センチが、一セルチ
一メートルが、一メルト
一キログラムが、一キロム
ヘクタールがクタール
ちなみに時間は一日を二十四で分けて二十四刻で一日だそうだ
この町での小麦の作付面積がだいたい80クタールで、昨年は約24000キロム取れている。来年の種用に8000キロムを引いた16000キロムに税金が掛かる。
小麦の税金は五割だ、他の作物の税金を低くするため小麦だけ高くなっている、全体では約四割が税金だな。
税金分で8000キロムを納めると残り8000キロム、一人当たりの消費量は身分にもよるが約150キロムとすると約五十人分の計算になる。
しかし、これは麦の状態での計算なので製粉するともっと減る。
この町では約500人が生活していて、その中で五十人弱しか毎日小麦のパンを食べられる人がいないのだ。
そりゃ麦粥やフスマ入りの小麦パンしか食べられないわけだ。
さあ、美味い小麦のパンが食べられるよう、ひと頑張りしますかね!
帰り際「ゴウは計算も出来るんだな」と言われたが、
さぁ何のことやら。
収穫の計算は大事なお仕事です。
コレを持って農家さん達の説得にあたるんですね。
次回、年頃の女性の誘い方です。




