第十八話、新しい事には
ガヤガヤと人々が集まる集会所で、町長とゴウはヒソヒソと話をしていた。
「本当に大丈夫なんだろうな」
「大丈夫だって、もう皆集まってくれているんだから。ほら、町長が行って話してくれないと」
のそのそと前に出て行く町長、皆も町長が何を言うのかと注目する。
「皆、忙しいなか集まってくれてありがとう。今日集まってもらった者は、主に麦を育てている畑の地主たちだと思うが良かっただろうか?」
町長が見回すと、殆どの者が隣の顔を確認して頷いていた。
「今から話すのは、麦の収穫量を増やす方法の話しだ。胡散臭い話かと思うかも知れんが、どうか最後まで話を聞いてから判断して欲しい。もちろん無理にとは言わん、聞いてられんと思うのなら途中で帰って貰っても構わんし、後から話を聞いて興味を持ってくれたなら、わしの元に話を聞きに来てくれ。」
そこまで聞いて帰ろうとする者はいなかったが、怪しんでいる感じの者は相当いる様子だった。
「それでは、話を始めたい……」
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ガヤガヤガヤガヤ……
ウチは……、どうする?、帰るぞ……
町長の話が終わり、集会所の中は訝しむ声が溢れていた。
ウンウン、そうだろうそうだろう。オレだって信じられないような話しだ当事者なら疑って当然だろう。だがなオレが生きていた世界ではこれが知られてから、あっという間に世界的に広がった方法なのだよ。収穫量は通常の約三倍ですよ!
この日集まって来たのは十人ほどだったのだが、この話に乗ってきたのは四人とまあ想定内というか、ちょっと多い……かな。ゴメン地主舐めてた、種……足りるかな?
クローバーの種は以前桑の葉を集めて貰っていた時に追加で依頼かけて集めていた。牧場や畑の周りどこにでも生えているからな。孤児院でもギルドの依頼を受けられない小さい子でも出来る手伝いとして集めていたのだが、足りない分は町長にも手伝って貰うか。
とりあえず話に賛同して試してくれる地主には、秋に麦を植える予定の畑に早めに種を撒いて欲しいとお願いし手持ちのクローバーの種を渡しておいた。中には牧場用にと種を持っている者もいたので是非畑にも撒いて欲しいとお願いした。
あとは秋の麦の種蒔きまでほっときましょう。
……
地主A
「確かにクローバーを食べさせている牛は乳の出が良くなったりするが、麦が増えるってのはどう言う事だろね。まあウチは牛のついでに少し種を蒔く畑を増やす位で手間はないんだが、ちょっと面白そうだし手伝ってやるか」
地主B
「またあの町長は面倒な事始めやがって……水車やら井戸やら世話にもなってるし、しゃあねぇなあ」
いきなり麦の収穫量が増える話なんかされても、中々信じて貰えませんよね。
それでも手伝ってくれる農家さんもいて良かったです。
次回は、ゴウさん久しぶりに算数ですか?




