思惑と神命(5)
グループが柵を乗り越えて村に入るシーンで、実菜穂は動画を止めた。
「この柵の前に岩があるよね」
「うん。この岩がどうかしたの」
「これ、たぶんこの村の入口にあたるもの。つまり、神社で言えば鳥居のように仕切になる部分だよ。この岩を超えたときから、この人たちは狙われてた」
動画は店のなかを覗く場面になった。実菜穂が再び動画を止めた。
「ここ。陽向、霞ちゃん。見えてるよね」
実菜穂が確認すると、二人は頷いた。秋人はがジッと画面を見ている。初めはガラス戸の奥に雑貨などの商品だけが見えていた。だが何度も目を凝らして見るうちに、秋人の顔色が変わってきた。
「はじめは分からなかったけど、ガラス戸の向こうに何かいる。蠢くものが、こっちを見ている。実菜穂、僕には数えるほどの影がこっちを窺っているのが見えるけど、もしかして本当はもっと凄いんじゃないのか」
「うん。店の商品の数以上の物の怪や人の悪霊がビッシリいる。このガラス戸から間近にこっちを見ている。ギラギラしながらいまにも飛び出そうとしている。もし、このとき一目散に入口に逃げていれば助かっていたはず」
「物の怪というのは何となく想像つくけど、人の悪霊っていったいどうして」
「見る限りには、ここで何かに囚われ亡くなった村人。それにこの村に訪れて襲われて亡くなった人」
「じゃあ、このグループの人は」
「同じように、ここに入ってきた人を襲うようになる」
実菜穂が唇を噛み、悔しさを滲ませた。秋人は「実菜穂のせいではない」と声をかけたかったが、それは慰めにはならないことを悟り、言葉を飲んだ。
「一つの疑問は解けた。それなら、なおさら分からなくなってしまう。二つ目の疑問。この動画は、誰が何のために上げたんだろう」
「それも説明するね」
実菜穂が動画をスキップすると、廊下でグループが襲われる場面が映された。ちょうど低い声の雄叫びと人の悲鳴が響き、パニックになって逃げているところだ。
「この場面は僕も初めて見たとき、影が無数に見えた。やはり、物の怪や悪霊が襲っているんだね」
「うん。でも、ここで確認して欲しいのはここなんだ」
雄叫びがあがるシーンで、動画を止めた。
「秋人、ここの音声を逆再生できるかな」
「うん、分かった。ちょっと待って」
秋人はタブレットを持つと音声データを取りだして、逆に再生をした。
「・・・・・・えっ!いま、たしかに」
「もう少し早くできる?」
「わかった」
「・・・・・・これは」
「もう少し早く」
実菜穂がお願いすると、秋人は音声を3倍速で逆再生した。
秋人の顔つきが変わった。女の子の声がはっきりと聞き取れたのだ。
『くるな!』
一言だけが、重く、険しくそして突き刺すように秋人の耳に届いていた。




