思惑と神命(4)
「はーい、僕たちはいまシチトウ村に来ています。説明するまでもなくね、廃村マニアでは伝説の場所ですねー」
大学生だろうか、男性がにこやかにレポーター役をやっていた。後ろでは、普段着の女性二人、男性一人が笑顔で手を振っている。あとは撮影者を入れて、五人のグループが山村の入口に立っている。廃村探索をメインにした動画を上げているグループである。
村の入口には大きな岩があり、その後ろには木製の柵が設置されて、【関係者以外立ち入り禁止】の札が掲げられていた。
メンバーが柵を乗り越えて入っていく。
歩いて行くと家と店が並んでる。雑貨や食料品を売る小さな店だ。その景色は令和、平成を超え、昭和という時代には多く見られた村の姿だった。不思議なのは、村の景色には荒れた様子がないということだ。人影こそは見えないが、廃村のはずが人が生活しているようにきれいに整えられているのだ。
外から店を覗くと、商品が並べられている。これにはメンバー全員が驚いて声を上げていた。廃村マニアにとって伝説となっている所以である。
ここまでが前半部分だ。
学校へと場所が移る。校舎はコンクリート造りの三階建てである。ここも荒れた様子は見えず、廃村の建物とは思えないほどきれいなままである。グループは、教室に入りイスに座ったり、授業を受けている振りをしてはしゃいでいた。
突然、廊下から男性の悲鳴が聞こえた。みんなが一斉に廊下に出る。映像には、血まみれになった人が映っていた。メンバーの男性だ。右腕は無惨にも引きちぎられ、足下に転がっている。まだ、身体は引き攣って動いていた。
「おい、大丈夫か。救急車!早く。ばか、撮影やめろ」
大声を出すレポーターの男性。女性二人は既にパニック状態であった。そのうち一人は、走り出して階段方向に逃げていく。姿が見えなくなったところで、悲鳴が上がった。レポーターが追いかけていく。撮影は続いていた。
階段の先からレポーターが何か叫びながら走ってくる。
「やばい!逃げろ逃げろ」
ここからは、撮影の人もカメラを振り回して逃げているのか、映像が床だの壁だのアチコチと定まらずにいる。音声に入る何かの雄叫びと人の悲鳴が、映像のリアルさを形づけた。振り回されるカメラから映る人が逃げる姿、飛び散った血、そして引きちぎられた身体。最後は撮影者も襲われたのか、カメラが床に転がり、そこからの映像で逃げながら悲鳴を上げ、何かに襲われたて身体が崩れ落ちるシーンで動画は終わった。
実菜穂、陽向、霞は瞳を光らせながら神の眼で観ていた。陽向の表情は真剣そのもので、確信を持った眼をしている。実菜穂は、事実を一つ一つ認めていき、全てを受け入れた眼をしている。霞は、消えていったグループの人一人一人を追いながら、その最後を見届け、プルプルと震えていた。
「これで動画は全てだよ。結論から教えて欲しい。この動画は、本物かそれとも作り物か」
秋人が真剣な顔をして三人に質問した。実菜穂たちは、顔を見合わせて頷くと声を合わせて答えた。
「本物」
予想はしていたが、三人が声を合わせて答えたことで現実に起こったこととして受け入れることができた。だが、それが事実であったとすれば、秋人にはどうしても理解できないことがある。
「じつは僕も本物だと思っていた。だけど、これが事実を映した動画だとすると、分からないことが二つある。一つは、このグループを襲ったのは何者なのか。二つは、誰がこの動画を上げたのか。どうしても分からないんだ」
「うん、そうだよね。秋人、私が説明するね。信じられないかも知れないけど、この動画が始まったときから見えていたの」
「見えていた?」
「うん。なんて言えばいいのかな。とにかく、柵を越えたところから物の怪と人の悪霊がウヨウヨしていたの」
実菜穂は動画のリプレイをお願いすると、説明を始めた。




