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思惑と神命(3)

 午後の日差しが入り込む部屋で、実菜穂はベッドの上で天井を眺めていた。明け方までビルを駆けずりまわり、身体は疲れているはずなのに眠ることはできなかった。     

 

 ただ実際は、みなもから癒しを受けているので疲れはないというのが正解であり、むしろ活動する元気は増していた。


 眠れない理由は、はっきりしている。そう、あの一夜の出来事は普通という言葉が適当かどうかはさておき、この世界で生きている高校生であれば、ほぼ知ることがない事実を知ってしまったということが、実菜穂の心を奮わせていたのだ。


(巫女になるときに、みなもが言ってたな。『力を得る代わりに、見たくないものを見、聞きたくないことを聞くことになる。それが、神の力を得た代償』・・・・・・この事実もそれなのか)


 息を深く吸い込むと、フゥと勢いよく上体を起こした。


 ピンポーン♪


 スマホからメッセージを受け取ったチャイムが鳴った。秋人からだ。


「今日、午後から時間あるかな?実菜穂と陽向に観て欲しい動画があるんだ。詳しくは会って説明するけど、相当過激な動画だよ。大丈夫なら観てもらいたい」


(秋人が頼みごとするなんて、よほどのことだよね。陽向と一緒ってことは、巫女に関わることかもしれない。それなら)


 実菜穂がテンポよく返事を打つ。


「いいよ。3時に陽向の神社でどうかな。あと、もう一人来てもいい?」


「実菜穂の紹介なら構わないよ。でも、確認してもらいたい動画は、かなりショッキングなものだから、それが心配だ」


「大丈夫だと思う」


「ありがとう」


 秋人とのやりとりが終わると、実菜穂は陽向と霞にメッセージを送った。


 すぐに二人から返事が届いた。どちらもニッコリマークが付いていた。


(着替えよかな。その前にシャワー浴びたいな)


 ハラリとTシャツを脱ぐと風呂場へと向かった。水を浴びる実菜穂の身体は、以前とは比べものにならないほど変化していた。成長といえばそうなのだが、腰回りの変化が特に顕著であった。一年前は、みなもの水着姿を見て羨ましく思ったが、いまは、みなものスタイルに近づいて腰が締まっているのだ。


(巫女になってから、また腰が締まったかな)


 シャワーを終え、サラリとした肌に水色のブラウスを身につけると時計を見た。2時を過ぎていた。


(そろそろ、行こうか)


 涼しげな空気を残し、実菜穂は部屋を出て行った。


 神社についたのは、約束の時間の15分前だった。すでに秋人が待っており、陽向の姿もあった。陽向の明るく元気な笑顔に、実菜穂も笑顔になった。一夜の命がけの遊びでは、恐れをおもてに出さずに先頭に立ち、見事くぐり抜けてきた陽向。実菜穂にとっては、出会ったときから尊敬と憧れの女の子である。


「あっ、早かったね」


 秋人が声をかけてきた。秋人の顔を見て、あのビルから無事に帰ることができたことを実感して、また笑みがこぼれた。


「たしか、もう一人来るんだよね。名前を聞いても良いのかな」

「うん。霞ちゃんだよ。秋人は一度ここで会っているよ」


 実菜穂の言葉に秋人は、ツンと考えた後、何度か頷いて思い出していた。


「ああっ、もしかして、実菜穂に会いに来た女の子。そうかあ。あのときは、みなもの言葉を伝えたんだ」

「うん、それだ」


 実菜穂が指をパチン叩いて、正解だというポーズを決めると、秋人も陽向も笑っていた。笑う三人の真ん中に、サーッと優しい風とともに霞が姿を現した。


 秋人は、目を大きくして霞を注視した。その顔を見て、霞も「しまった!」とばかりに秋人と同じ目をした。二人が見つめ合うなか、実菜穂と陽向が苦笑いしていた。


「まあ、秋人、いまのは気にしないでね」

「ああ、大丈夫だよ。いまさら、何が起きても驚かないはずだから・・・・・・」


 陽向が言葉をはさみ、空気を一変させた。秋人もいまさら驚くほどでもないと、気を取り直した。


「早速なんだけど、三人にはこれから動画を観てもらいたいんだ。観る前に、注意しておくとことがある。内容はかなり残酷で気味のいいものじゃない。それでも大丈夫かな」

「私は大丈夫」

 

 陽向が即座に答えた。


「それでも秋人が観て欲しいって言うのなら、確かめたいことがあるんだよね。私も大丈夫だよ」


 実菜穂が頷くと、秋人はホッとした表情になった。


「あのう。私が観て何か役たてますか?もし、力になれるのでしたら観ます」


 霞が申し訳なさそうに答えた。


「なるなる!霞ちゃんの力が一番頼りになるよ」


 実菜穂が両手を握って笑うと霞も安心した表情になった。何事に対しても安心感を与えるのは、実菜穂の魅力である。


「みんなありがとう。じゃあ、観てもらうよ」


 秋人がタブレットを取り出し、再生を始めた。


 三人は画面に視線を集中していた。

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