水と鼓動(15)
実菜穂が鍵を手にして文字を眺めた。
(火と光、風、水。これはきっと、陽向、霞ちゃん、そして私だ。だとしたらその後ろの言葉も繋がる。いまがそうなんだ。それに共通しているのがこれだ)
木箱の○の中に鍵を差し込んだ。
カチッ!
引っかかりが解ける音が微かにした。
「開いた」
蓋をスライドさせると、予想どおり御札が入っていた。ピンと張りがあり綺麗なままであるが、、紙の色が時の経過を感じさせた。なかでも目に付いたのが御札に飛び散っている錆びた鉄色の斑点だ。
(これは血じゃないか)
実菜穂は御札を手にして箱を眺めた。○の所には「鬼」の文字が入っている。
(そう、これは遊び。後ろにつくのは「かごめかごめ」、後を追うのは「鬼ごっこ」、そして見つけるのは「かくれんぼ」だ。それに共通しているのは、鬼だ。だけど、私が祓う、ナナガシラ、どちらも意味が分からない。でも、これであのサナという女性を助けることができるかもしれない。この御札はサナが持っていたもの。なぜ、幽閉されたのか、キナはなぜサナを切ったのか。いったい何があったのか・・・・・・あっ)
実菜穂が箱を眺めながら呟いた。
「鬼成・・・・・・キナ」
5階の廊下に実菜穂は立っていた。サナの姿は見あたらない。
(私の考えに間違いがないのなら、女子トイレに秘密がある。サナに襲われたのも女子トイレだった)
「とおりゃんせ、とおりゃんせ、ここはどこのほそみちじゃ」
とおりゃんせを口ずさみながら、3番目の真ん中の個室の前に立ち、ゆっくりと中に入った。
「いきはよいよい かえりはこわい こわいながらも
とおりゃんせ とおりゃんせ」
扉を閉め、御札を扉に張り付けた。
瞬間、御札が青色の光を放ち、その光が個室の右から左へグルリと輝いていく。個室いっぱいに、文字が浮かんだ。血で書かれた文字だ。実菜穂はその文字を瞳に映していった。
(そんな・・・・・・)
目に霞がかかる。瞳から溢れだした涙が床に一つ、一つと雨粒のようにこぼれ落ちた。哀れみと悲しみで潤んだ瞳が赤くなると、拳を握り身体を震わせた。
「これじゃ・・・・・・これじゃあ、紗雪と同じじゃないかあ!」
大声で叫ぶ実菜穂の拳は壁に突きたてられた。皮膚を切り裂き、飛び散った血が文字に重なった。
「また人も神様も同じ過ちを起こしたの。いったい何がそうさせたあ」
実菜穂の声がビルの中を駆けめぐった。
「実菜穂も事情が分かったようじゃな」
実菜穂を見守り続けていたみなもが、沈黙を破って声を出した。
「いったい実菜穂殿は何を見たのだ」
火の神が懸命に中の様子を見ようと全身から光を放った。
「知ったのじゃ。サナという悲しき巫女のことを」
「サナというのは、実菜穂殿を襲った女か」
「そうじゃ。そのサナの生涯の話じゃ。もとは村にある巫女を選ぶ儀式からはじまった・・・・・・」
みなもが火の神とシーナを見つめ話を始めた。




