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水と鼓動(13)

 実菜穂が2階へと駆け下りていく。


 フロアに入るとヒントになりそうなものがないか、隈無くまなく探して行く。


「ここは何もないぞ。でも、陽向の気を感じる。これって残留思念とかいうのものかな。神様のは何度か感じたことあるけど、人のは初めてだ。聞いた話では、あまり良くないことを感じるっていうけど。でも、これはそれほど険悪なものはない。陽向の温かい気が満ちている」


 フロアの中をウロウロと歩き回るが、何も見つからなかった。


(すごいな。陽向の気の他には何も残っていない。ここは綺麗に祓われている)


 辺りの気配を窺いながら、フロア素早く歩き回りドアへと向かった。


(たぶん来るな)


 女が来ることを予想して早めにフロアを後にすると、やり過ごすためにトイレの個室に隠れた。少し待っていると実菜穂の期待どおり女が入ってきた。トイレの中をウロウロしたあとしばらく立ち止まって、辺りを見渡したりしている。実菜穂にはその様子は分からなかったが、息を潜めて床スレスレに顔を近づけて足の動きを見張っていた。


(よし、出ていった)


 気づかれないようにそーっと、後を追って女の行き先を見送る。女は実菜穂が入ったフロアとは別の入口に立っていた。動かずにドアを見つめている。距離がありハッキリとは見えなかったが、女の瞳か澄んだ光を放っているように思えた。物の怪のように襲っていた顔とは全く違う雰囲気であった。


(入らないの?鍵がかかってるのかな)


 女がドアを離れ、上の階へと姿を消した。実菜穂はそれを見送ると、女が入らなかったフロアのドアに手をかけた。ノブが回り、ドアが開いていく。


(鍵はかかっていない。中に入れるけど、どうして女性は入らなかったのだろう)


 実菜穂は警戒しながらフロアへと入っていった。


 明かりのない薄暗いフロアに実菜穂は身体を入れると、ドアを閉めた。


(えっ、私、何を見てるの?)


 音のない世界のなかで実菜穂は見ることはないはずの光景を見ていた。

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