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水と鼓動(12)

「大丈夫だった?ごめんね、水闍喜みじゃき


 手を伸ばし、水闍喜の背中を優しく撫でて申し訳ないという顔をしていた。


「あーっ、やっぱり実菜穂の姉ちゃんが撫でてくれたら、痛みがひいた。すごく楽になったぞ。これって、水面の神の力だろう」


「おーっ」と目を輝かせて水闍喜が実菜穂を見ている。実菜穂は大げさな反応だと、笑っていた。


「たしかにみなもに傷を癒してもらったことあるし、不安な気持ちを和らげてもらったよ。でも、私にそんな力あるのかな」

「何言ってるんだい。実菜穂の姉ちゃんは、水面の神の巫女なんだぜ。どんだけ凄いことか、知らないのかい。水面の神は、あらゆる傷を癒し、あらゆる穢れを祓うことができる神。その力で神も物の怪も関係なく救っていく神だぞ。その巫女なら・・・・・・グッェ」


 自分の手を見つめながら首を傾げる実菜穂に水闍喜は、ここぞとばかりにみなも推しの講釈を始めようとしたが、首に巻かれた蔦に絞め上げられてその場に転がった。


「水闍喜、どうしたの」

「いあや、何でもない。サクヤヒメが、いや、それよりおいらの用事を」


(サクヤヒメって綺麗でフワリとした感じなのに、怒らせるとイワナガヒメより、おっかないもんなあ)


 水闍喜は、ブルッと身体を震わせて肩を抱いた。


「大丈夫?それで水闍喜の用事は何だったの」


 実菜穂に促されたことでようやく本題に入ることができた水闍喜が、右手の袖口から長方形の物体を差し出した。


 実菜穂が物体を受け取り眺めた。短冊ほどの大きさの随分と年季が入った木箱である。漫画の単行本くらいの厚さだ。ふたはスライドして開けるようになっている。


「これは随分と古そうな箱だけど、あっ、開かないな。あれ、これは」


 実菜穂が上に下にと眺めていると、箱の底にかかれた文字と穴を見つけた。穴の隣に「成」の文字がある。どうやらこの穴が鍵となっているようだ。


「○成、なんだろう。水闍喜、この箱は何?」

「邪鬼の頭領から母様に渡して欲しいって預かったんだよ。だけど中味が大切だからそのままでは駄目らしいぜ。巫女さんに開けてもらわないといけないんだって。なんでも正しい鍵で開けないと二度と開かなくなるってよ」

「あーっ、やっぱり。でも、母様って、それに巫女って誰だろう?陽向でもないし、霞ちゃんでもなさそう。だって、二人とも安静第一だし。私はいま「かくれんぼ」の最中だし。やっぱり、2階にもなにかありそうだな」


 実菜穂がフッと息をついたとき、女がドアを開けて入ってきた。


「やば!水闍喜ありがとう。水闍喜はそこにいたほうがいいよ。絶対安全だから」


 女が追いかけてくるところをかわして走りだすと、別のドアから逃げていった。


 女は水闍喜の所で立ち止まると牢の中を見ていた。その眼は優しい光を持ちながらも悲しげな陰が曇らせていた。


 しばし水闍喜を見てから、手にある包丁をスッと袖の中に隠した。まるで怖がらせないように気を使っているような仕草である。

 

 ジッと水闍喜を見つめたあと、クルリと向きを変えて実菜穂を追っていった。


「なんだあの眼は?なんだか不思議な眼だな。人なのに邪鬼の頭領と似ていたな。あれは、巫女の眼だぜ」


 水闍喜が開いたドアの先を白い格子の中から見つめていた。

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