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水と鼓動(4)

 実菜穂が次に入ったのは倉庫の部屋だ。文具類やデスクチェアが保管されていた。ロッカーもあり、身を隠すには格好のいい場所だ。


 保管されている物は少々、埃はついているがどれも新品であった。出番がないままずっとこの場で活躍する時を待っていたのであろう。悠長なことであるが、そんな声が聞こえたように思えた。


「ロッカーにはいない」


 一つ一つ扉を開けて、青の神の姿を必死で探して調べていく。チェアが置かれた隙間、棚の上、身を隠せそうなところは全て見ていった。


「この部屋もいない」


 部屋を出ようとドアへと向かうと、足下にノートが落ちていた。


(ノートは入ってきたときには無かったはずだ。もし落ちていれば、踏んづけているはず。これも青の神様が置いて行ったのかな)


 ノートを拾い上げて表紙をめくると、そこにはボールペンで文字が書かれていた。


【ごようのないものとおしゃせぬ 


このこの七つのお祝いに 御札をおさめにまいります



 ひとはみなかみのこかみのこ】


(なんだろう。前半は「とおりゃんせ」の歌詞だ。でも、この最後の言葉は、歌とは関係ないような・・・・・・【人はみな神の子、神の子】ってことかな。謎解きでもなさそうだし・・・・・・うん、これも覚えがあるぞ。あばあちゃんが言ってた。いつだったかなあ。そうだ!七五三のときだ)


◇◇◇


 小さな実菜穂が着物を身につけ、髪飾りをつけ紅をさしていく。可愛らしく着飾った姿を鏡で見ながらおばあちゃんが綺麗に着物をそろえていく。普段と違う自分の姿を実菜穂は驚きと照れくささから固まった笑顔で見ていた。後ろからおばあちゃんが笑顔で見つめている。


「実菜穂や、可愛いのう。実菜穂もこれで人の子だね」

「人の子?」

「そうじゃよ。人は七つまでは神の子じゃ。大切に育てなければ、神様の元に引き取られてしまう。実菜穂は七つを迎えたから、人の子となったよ。だから、今日は神様にお礼を伝える大切な日じゃ」


 このことを後日、祠のみなもに言った。みなもは、静かに笑った。


「人と神の違い。それは、生きることにあるのじゃ。人も神も同じ御霊じゃ。実菜穂も儂も同じなんじゃ」


◇◇◇


 実菜穂には何のことか分からなかったが、みなもが優しく語りかけたことで納得をしていた。すっかり忘れていたことだが、ノートを見てその言葉が鮮明に思い出された。


「みなもは、『人も神も同じ御霊』だと言っていた。だけど、卯の神様の見せた光景には、そのようなものは感じられなかった。まるで、人を喰らう神様がいるような。それに捧げられる人のような。なんだろう、この嫌な感じ。かごめかごめ、鬼ごっこ、それにこのかくれんぼ。卯の神様は何を伝えたいの?まだ分からない」


 実菜穂は部屋を出ると再び青の神を探し始めた。

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