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風と言葉(1)

 フロアには赤の神と陽向が静かに横に倒れている。不思議なことに陽向は出血していなかった。紅雷が傷口をきれいに塞いでいるのだ。だが、身体を突き抜けていることに変わりはなく、人にとっては危険な状態であった。


 霞は色で陽向を見ていた。生気が失われていく状態なのはすぐに分かった。


「遊ぶって、もう終わりじゃないの。陽向さんが死んじゃうよ」


 霞が青の神に訴えて詰め寄る。


 青の神が焦る霞にゆっくりと首を振った。


「まだ私たちと遊んでいません。一の姉と陽向はこのまま静かに休んでもらいます」

「休むって。陽向さんは早く治療をしないと危ないんですよ」


 霞が再び駆け寄ろうとしたが、眼の前に飛び出してきたものに動きを止められ弾き返された。


「あっ、痛いっ!」


 一瞬の出来事に霞は為す術もなく実菜穂の横に戻された。霞を弾き飛ばしたのは、緑の神だった。一番幼い卯の神だ。


「治療ですか。誰に診てもらいますか。いま姉と陽向は御霊が繋がっています。これを無理に引き離そうとすれば、陽向はただでは済まないでしょう。もっとも、このままでいたとしても身体が先に衰弱して死に至り、御霊は姉に取り込まれます」


 青の神が、柔らかいながらも重みのある言の音を響かせた。


「ちょっ、だからって。実菜穂さん」


 青の神の言葉と横たわる陽向の姿に、霞は弾き飛ばされた痛みも忘れて実菜穂に反論の救いを求めた。実菜穂は言葉が出ない霞の心を理解し、軽く頷いた。


「私たちが二柱と遊べば、陽向は助かるのですか」

「はい。ただし、『私たちに言葉と音を与えてくれたら』ですが」

「陽向が光を見せたように、二柱にも言葉と音を授けよということですか」

「はい」

「そのときはどうやって、陽向を助けることができますか」

「もう察していることでしょう。この場所と外には壁があります。巫女であれば、外で様子を窺う柱がいることでしょう。その柱の力があれば助けることができます。ただし、陽向がこの状態でいられるのは長くありません。迷うこと無きよう」


 実菜穂の問いに青の神は笑みを浮かべ答えた。実菜穂と青の神のやりとりのおかげで、霞は心を落ち着ける余裕を取り戻ることができた。


(みなもとの繋がりが切れた。これは青の神様の力なのは間違いない)


 実菜穂が青の神を見つめると、青の神も実菜穂から視線を外さないでいた。


「それでは、遊びましょう」


 前に進もうとする青の神を緑の神が遮り、自分が先に遊ぶと訴えた。


「そうなの、あなたが先に遊びたいのですか。良いですよ」


 姉の許しを得た緑の神が実菜穂たちに近づいて来る。幼い緑の神の瞳は健気とも無邪気とも感じる光を放っている。だが、その幼い顔の口は白い絹のベールで覆われていた。


「妹が先に遊びたがっています。どちらがお相手してもらえるのでしょうか」


 前に出ようとする実菜穂の腕を霞が腕を引っ張り止めた。


「実菜穂さん、私が行きます。さっき、飛ばされたときに感じました。『私と遊びたいって』緑の神様は言ってました」


 霞はニッコリと笑いフロアの中へと歩いていった。


(霞ちゃん、泣いていた。陽向が見た光景を霞ちゃんも感じていたのかもしれない。だとしたら、どう言葉を授けるのだろう)

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