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神と巫女(12)

「さあ、私たちと遊びましょう」


 赤の着物の神が言葉をかけた。可愛らしく透きとおった声が耳から入ると、三人の全身を駆けていった。


「遊ぶって。私たち遊びにここまで来たんじゃないんです。あの、教えて欲しいことが沢山あって」


 予想していない可愛らしいウサギの神の姿と遊びに誘う言葉に恐ろしい神様を想像していた霞は大いに戸惑ったが、本筋の用件を伝えることができた。霞にしては今までになく積極的な態度であった。


「あら、そうですか。それは寂しいです。何も答えられなくて残念です。このとおり、妹たちは耳を塞がれ、口を塞がれ、そして私は眼を塞がれていますので」

「ちょっ、ちょっと待って」


 霞が申し訳ないという表情をしながら、実菜穂と陽向を見て眼を潤ませている。


「私、神様の機嫌を損ねちゃいました。優しそうな言葉なんですけど、どこかすごく声に重みがあって。あれ、なんで。私、涙がでてるんだろ」

「うん。霞ちゃんは間違ってない。実菜穂、私も感じているんだけど、ウサギの神様は何か大きな秘密を抱えている」


 涙ぐむ霞を陽向が慰めている。実菜穂も霞を励ましていた。


「うん。陽向、霞ちゃん。ここに入ってから、私ずっと何だか苦しかった。何となく見えてきている気がする。ウサギの神様、見ざる、聞かざる、言わざるなんてそんな可愛いものじゃない」


 実菜穂の顔から笑みが消えていた。こういうときの実菜穂は爆発寸前で、何かの拍子にとんでもない力で突っ走っていくのだ。それが良い方向か悪い方向か分からないのがやっかいだった。陽向はいままでにも実菜穂の底力を何度も見てきた。いまもその兆候が出ていた。


(実菜穂がこの三柱の秘密を知ったとき、自分も同じ道を通ろうとするかもしれない。もう、退くことはできない。ならば進むしかない)


「実菜穂、霞ちゃん。このままでは埒か開かない。いまはぶつかるしかない」

「あっ、あの。ぶつかるってまさか・・・・・・」

「そう、そのまさか」


(えーっ、ここで神様相手にガチで戦うの・・・・・・。えっ、えー!)


 霞がオロオロしながら二人を見ている。声を出したいが賛成も反対もどちらの言葉も浮かばない。そんな霞を見ながら、陽向がにっこり笑った。


「霞ちゃん、何考えてるの?」

「えっ、だって、陽向さんがぶつかるって言うから。戦うのに戸惑いまして」

「霞ちゃん、陽向は神様の言葉を受けるつもりだよ」

「えっ」


 霞が高めの声を上げて驚いた。


「実菜穂の言うとおり。三柱と遊ぶよ」


 陽向がウサギの三柱にゆっくりと声をかけた。


「分かりました、いまから遊びましょう。何して遊びますか」

 

 三柱は顔を見合わせて笑った。


「遊びましょう。まずは私と遊んでもらおうかな。誰が相手になってくれますか」

「えっ、誰がって?あれ、みんな一斉じゃないの」

「はい。一柱と一人。神と人で遊びましょう」


 驚く霞に赤い着物の神が答えた。


「それならまず、私が行きます」


 陽向がスッと赤い着物の柱の前に進んでいった。


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