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神と巫女(9)

 実菜穂が龍の神に頭を上げるよう頼んだ。


『これで御霊がもどれば、龍の神は人を助けてくれるであろう。そうなれば儂らが是が非でも御霊を取り戻さねばならぬ。その前に分からぬ事が一つあってな。鉄鎖の神の力を持つ者が現れてお主等を消そうとした。知ってのとおり、鉄鎖の神は地上の世界の見張りと言われる存在じゃ。その力を持つ者がここを狙った。これに心当たりはあるか』


 龍の神はしばし考えていた。実菜穂の顔を見つめながら、覚悟を決め口を開いた。


『確かなことは分からない。もしかしたら、この我らの姿に失望したのかもしれんな』

『では、いまなら狙われることはないか』

『定かではないが、もうなかろう。次はその根元を絶つのではないか』


 実菜穂の口元が微かに揺るんだ。それを陽向は「またか」という眼で見ている。


『もう一つ聞く。優里という女子おなごは知っておるか。ここに来ておったはずじゃ』

『知っている。その人は、物の怪を見る力のあった人。ここで我らを見ることができた人だ。何者が連れだしたかは言えぬが、行き先はナナガシラ』


 実菜穂の眼が鋭く光った。陽向と霞も同じ反応をする。霞は優里の行き先について詳しく聞こうとしたが、シーナが「やめろ」と止めるので奥歯をかみしめた。


『まあ、この上に行けば少しは先も見えるの。それよりどうじゃ、儂らが御霊を取り戻すまで、ここにおるわけにもいくまい。その間、儂の祠で休んでおれ。これだけの数だとちと狭いがの。安全は保障されるからの』


(ちょっ、みなも、それは・・・・・・良いの?)


 実菜穂がギョッとした表情をするよりも早く、陽向が詰め寄ってきた。


『おまえ、何言ってるんだ。なにゆえ、お前の祠にここの柱が入るのだ』

『なんじゃあ、火の神?どうせ儂等は御霊を取り戻しに行くのじゃ。その間はもぬけからじゃ。留守番でおってもらうのもよかろう』

『よくないわ!なーんで、嫁入り前の女神の祠に男神がゾロゾロ入るのだ。おかしかろう』

『おかしくなかろう。儂はおらぬのじゃ』

『おかしいわい。そのようなこと、アサナミの神にも水波野菜乃女神みずはのなのめかみにも申し訳たたぬわ。だったら、俺の社に入ればいい。ここよりはましだろう』

『お主はあほうか。お主を参拝に来る者がおるのに、他の神がおったのでは驚くじゃろ』

『お前も同じだろうが』


 陽向が実菜穂に食いついていく。このやりとりは、クラスメイトの漫才のごとく周りを巻き込んでいた。霞もポカンと見ていたが、シーナが割って入った。


『それならわたしの社に来たらいいよ。どうせほとんど留守にしているから何様がきても変わりないよ。その代わり、わたしがみなもと一緒の祠に入るう』

『儂が嫌じゃ。お主が側にいては騒がしくて敵わぬ。行くなら火の神の社に行け』

『お前、なんてことを。そんなことになれば、こいつの兄が怒鳴り込んでくるだろうが』


 今度は実菜穂が霞に食いつき、再び陽向が実菜穂に絡む。一連のやりとりを見ていた龍の神は、久しく絶えていた笑い声を響かせた。白い影も笑っているように揺らめいている。


『有り難いことだ。だが、気遣いは無用。あてはある。それよりも、どうか無理はしないでくれ。ここにいる者たちはみな、御霊を奪われたもの。すべては呪われた地だ。我は縋るのみだ。願わくば、忌まわしき呪いから救ってくれ。頼む。そのためなら、水面の神のめいを喜んで受けよう』

『有り難いことじゃ。とにかく行くがよい。ここは儂らが抑える』


 龍の神は全身を青く光り輝かせると白い影とともに姿を消した。実菜穂にも気配が遠く離れているのが伝わってきた。


(みなも・・・・・・うん、分かった)


「陽向、霞ちゃん、上にいる神様を抑えよう。放浪神が逃げる時間を稼がなきゃ」


 三人はフロアを後にして階段を駆けていった。

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