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神と巫女(6)

 実菜穂が狙いを定め弦を放した。矢は音を置いていき、壁をぶち抜き飛んでいく。


(!!!!!!!くっ)


 鋭く突き抜ける戦慄が脳裏に閃く。少女より先に左手から伸びている鎖が反応する。鎖は瞬時に1mほどの幅で幾重にも重なり壁を作っていった。手首のあたりまで重なったとき、音を切り裂き光と共に飛んできた矢が突き刺さった。鎖の盾に阻まれながらも矢は、なおも前進しようとする。ジリジリと迫っていくが、手首に届く寸前に止まった。


(あのビルから本当に矢を放った。800mは離れているのに矢が襲ってきた。しかも狂いもなく、鎖の元を狙ってくるとは。この力・・・・・・巫女)


 実菜穂が二本目の矢を構える。その動きを察知したのか、鎖は一気にフロアを引き上げていった。


(退いていく。あの子も消えた)


 弓をおろすと実菜穂は男の方に駆け寄り、討ち抜かれて傷ついた身体を心配して見た。御霊がない神の身体は頼りない白い光っを放ち、傷は悲しげな跡を残していた。


(これが神様の身体なの)

『そうじゃ。神の身体とて無敵ではない。御霊があればこそ光を得て、己の力を示すことができる。その光を与えるのが人の御霊。それこそがこの地上での理じゃ』

(御霊を無くすことは、この世界ではまさに命取りになるの?この神様はまだ人を助けようと懸命にこの世界に留まってる。なんとかして助けられない?)

『実菜穂、お主には儂の力がある。その傷を癒してやってくれぬか。まずはそこからじゃ』

「分かった。《《やってみる》》」


 実菜穂が大きな男の身体をゆっくりと抱き上げた。神の身体は、見た目よりも遙かに軽く、人とは違い御霊の方が重みがあるように思えた。


(この神様は、私に鎖が当たらないように護ってくれた。その優しさに応えねば)


 みなもの瞳を宿した実菜穂の顔を男は見ていた。実菜穂が身体に水色の光を纏い、手を傷口にかざすと御霊のない身体の傷が癒えていく。苦しみしかないはずの身体に安らぎを感じていく。神としての誇りが実菜穂の光で男に満たされていった。


「まさに水の神の巫女。私は水面みなもの神に再び助けられた」


 男の言葉に実菜穂は首を振った。


「みなもは、助けたとは思ってはいません。何が必要なのか感じているだけですから」

「水面の神。水波みずはの神の妹であることは頷ける。あの小さき神がいずれ古き神に光を与える存在になる。あなたの眼の光が語っておるの」


 男が実菜穂の顔に手を当て見つめている。見たときは、近寄りがたく、堅く全てを閉ざした神に見えたが、実菜穂の光を受け優しく清廉な瞳を見せていた。


『実菜穂、ここは儂の言葉を伝えてくれぬか』

(うん。この神様、みなものことを知っているみたいだよ)


 実菜穂の中にみなもの思いが入ってきた。神霊同体とは違い、身体の意識は自由のままで、思いの意識だけが重なっている感じである。 

『儂のことを知っておると申しておったが、儂も知っておるぞ。お主は龍の神であろう』


(えっ!)


 冷静に言葉を伝えながらも、頭の中は驚きの実菜穂顔で溢れていた。


「さすがは、水の神」


 男の言葉と同時にフロアには駆け付けた陽向と霞があたりを見回していた。

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