神と巫女(5)
実菜穂の頬をかすめ鎖がフロアを駆け巡っていく。何体かの白い影は無惨にも打ち砕かれてしまった。巨体の男は鎖に身体を貫かれながらも、実菜穂を守るために鎖を引き寄せて庇っている。
『実菜穂、ここの放浪神を消してはならぬ。弓をとるのじゃ』
実菜穂の手に水流が巻き付いていく。その水流が生き物のように実菜穂の腕から伸びると、ドアをぶち開けて弓を包み込んで素早く手元に引き寄せた。実菜穂は鉄の弓を手にしてジッと鎖が放たれた先を睨んだ。
(女の子、朱色のネクタイと紺のスカート、城北門校の生徒だ。凄く離れているのにはっきりと見える。これ、みなもの力かな)
実菜穂の眼にはハッキリと城北門校の制服を身につけた少女の姿が見えていた。夏服のためブレザーは身につけていないが、朱色のネクタイで城北門校だとすぐに分かった。
少女の両手首からは鎖が伸びており、右手から放たれた鎖が実菜穂のいるフロアまで届き放浪神をを次々と襲っていた。力のない放浪神はあっけなく打ち砕かれていった。だが、巨体の男だけは簡単には消すことが出来ずにいる。
『実菜穂、その鎖は鉄鎖の神のものじゃ。変幻自在に攻防一体と成すやっかいな代物じゃ。それより、なにゆえこのような仕打ちをするのじゃ』
「みなも、私の眼では女の子が見えるよ。もしかして、あの子は巫女なの」
『いや、どうもまだ巫女ではないの。じゃが力はそれに等しい。実菜穂、このままでは皆、消されてしまう。この神たちを護らねばならぬ。矢を放てるか』
「あっ、うん。やってみる」
実菜穂が壁を通り越して見える少女に弓を構えた。
『実菜穂、相手は見えておろう。矢は外れてもかまわぬ。威嚇できればそれでよい』
「分かった。これ以上、神様を消させはしない」
実菜穂が弦を胸元まで引くと、銀色の矢が現れた。矢から溢れる光を受け、実菜穂の瞳も青く激しい光を放った。
実菜穂の瞳にはハッキリと狙う箇所が映し出されていた。驚くことに長距離スコープのごとく、間近に少女の右手首を捉えていたのだ。
(実菜穂。お主・・・・・・)
みなもの瞳には実菜穂の狙いの先が同じように見えていた。これは、みなもでさえ想像できなかった光景である。
(実菜穂が狙いを定めるいる。この力、儂は持っておらぬ・・・・・・これはいったい)
制服の少女の動きが一瞬止まった。
(・・・・・・なに、この感覚。何か私の中を触るものがいる。放浪神の他に何かいる。これは人・・・・・・!!)
少女が鎖でフロアを見通す。実菜穂が弓を構えている姿が映し出された。
(私を狙っている?ブラフか、それともバカなのか)
少女は実菜穂のいるフロアを攻め続けていた。




