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巫女と物の怪(19)

 霞はポカンと天井を眺めている。ついさっきまで必死で戦いに挑んでいたとは思えないほど心は穏やかになっていた。もちろん水闍喜の出現により状況が変わったこともあるが、この場の空気は一変しているのが実感であった。その原因はすぐに分かった。陽向である。横にいる陽向の雰囲気がもとのポカポカノンビリとなっていたのだ。


(陽向さん、水闍喜が邪鬼であることは知っていたはず。それなら人を襲わない邪鬼もいることも・・・・・・)


 柔らかい空気は感じるものの、やはり怖いと思いながら陽向をチラリと見る。陽向は視線に気づきニッコリと笑っていた。


「ごめんね、霞ちゃん。みなもに頼まれて」


 陽向は駆けつけるまでの経緯を話した。



 陽向が階段を駆け上がっていくと、みなもの声が頭に響いてきた。


「陽向、聞こえておるか」

「はい」

「霞が相手をしておる邪鬼は、人を襲うことはないが、人を信用もしてはおらぬ。経緯は分からぬが、この場に留まってなんとか生を保っておる。じゃがな、ここにおってもいずれは物の怪に襲われるか、人に消される運命じゃ」

「それじゃ、霞ちゃんは辛い戦いを強いられるのでは」

「戦えばそうじゃ。じゃから、雪神に邪鬼たちの保護を頼んでおる。すぐに手は打つということじゃが、神に見放された邪鬼じゃ、易々と神を信用するとは思えぬ。そこでじゃ、すまぬが、陽向、お主には鬼になってもらう」

「鬼?」

「そうじゃ。手はずは・・・・・・」



 陽向が事情を話し終えたとたん、霞の身体から力が一気に抜けていった。さらには、ボロボロと涙を流し、子供のように泣き始めた。


「うぁーん、本当にわたし、怖かったです。だって、陽向さんは強いし、怖いし。でも、あの邪鬼さんたちは傷つけられないし。わたし、どうしていいのか、一人で、ひとりで必死で。でも、陽向さんとは戦いたくないし。戦うと心が苦しくて、苦しくて」


 陽向に抱きつき、胸のなかで涙を流してワンワンと大声で泣いていた。あまりにも泣くので鼻水まで出てしまうが、陽向は気にすることなく優しく霞の頭を撫でていた。


「ごめんね、怖がらせたね。霞ちゃんが護ったおかげで邪鬼たちは、白新地に移ることができたよ。あの邪鬼ならきっと和を尊ぶ存在になるよ。たとえ人は信じなくても、霞ちゃんのことは信じているはずだから」


 陽向の言葉を聞きながら霞は顔を押しつけ、陽向と戦ったときの怖さと孤独さを涙とともに吐き出していた。陽向はそれを柔らかく受け止めている。ひとしきり泣いて、気持ちが落ち着いてきた霞は一つ疑問に思ったことを聞いた。


「陽向さん、最後に水闍喜が止めに入らなかったときは、私の腕を切っていましたか」


 霞の問いに陽向は何も言わず、いつもの温かい笑顔を見せた。それで霞は全て理解した。


(陽向さんは、私の攻撃を受けるつもりだったんだ。やっぱり陽向さんは、強くて、温かくて、そして柔らかい。お日様の香りがする)


 霞はもう一度、陽向の胸に顔をうずめて温かさを感じていた。


 



 実菜穂が四階のフロアの入口に立っている。


(この中に神様がいる。御魂のない神様。どうして御魂を無くしたのだろう)


 実菜穂ドアに手をかけ開けた瞬間、身体が後ろに吹き飛ばされ、背中を強打した。ドアは再び閉められた。

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