表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/332

巫女と物の怪(3)

 入口の扉を陽向が開けた。自動ドアのスイッチは切られており、とうぜん施錠されていたが陽向は難なく開けてしまった。経験は少ないが、当たり前のように力を使うところは、それなりに訓練をしていた賜であろう。


 三人はビルに入った瞬間、ザラッとした感覚を味わった。それは空気、光、音とも言えないもの。いわば第六感とでもいうのか、感じるのにその感触がハッキリとしない。


「これは、何かいるよね。陽向ちゃん、見える?」

「うん、感じるけど何も見えない。ここはいないと思います。奥の部屋に何か潜んでいます」


 実菜穂と陽向が奥のドアにを凝視している。ドアの奥にあるフロアに雑多の物の怪が集まり蠢いているのであろう。

 霞は二人と同じくドアを見ていた。確かに奥に多くのものが蠢いているのが分かる。だけど奥にいる物の怪がザラついた感覚の根元とは思えなかった。


 霞はもう一度周りを見渡した。今度は空気の流れまでを注意深く見ていく。この世界を作っている粒子一粒までも見ていった。色の違いがすべて霞に伝わってくる。やがて、目の前に見えたものがあった。三人の頭の上だ。見たこともない顔。一畳ほどの大きさの不気味な笑い顔だ。


「あーっ、実菜穂さん、陽向さん。上に。あいつが変な感覚の原因です」


 霞が指さす先を二人は注意深く見ると顔色を変えた。巨大な顔が頭上から見下ろしている。その顔が三人の視線を受けてさらに不気味に笑い、3D映像のようにヌーッと飛び出してきた。


「イッ・ヤー!」


 いままで落ち着いていた霞が口を大きくあけ、叫び声を上げた。このときタイミングが悪いとしか言いようがないが、大きなアシダカグモが霞の顔に落ちてきた。


「ア”ーーーッ!もっとイヤー」


 クモ自体は人畜無害であるが、このときの霞にはそのようなこと理解できるはずもなく、無我夢中で首の痣に手を当てた。霞の驚きに敏感に反応したのは実菜穂である。さらに、その実菜穂に同調したのが陽向だ。


「青龍」

「朱雀」

「ピーチャン!」


「??????ピーチャン?」


 実菜穂と陽向が「何じゃそれ?」という顔を霞に向けた。


「えーっと。ピーチャンは私の式神で・・・・・・」


 霞が言い掛けたそのとき、三人の首の痣が光を放った。


 青竜が天上に現れフロアめがけて巨体をうねらせていく。同じく朱雀が紅い翼を広げると青竜とともに一階を覆い尽くすように飛んでいる。この二体の式神だけでも凄まじい光景であるのに、さらに霞の光を帯びた巨大な隼のがフロアに現れた。その隼は翼を広げると無数の隼に分かれ、物の怪を蹴散らしていく。哀れなのは、フロアの物の怪たちだ。一体の式神だけでもこのビルを鎮めるには十分であるのに、それが三体に追い回され蹴散らされたのだ。雷のように無数の光が飛び交い、辺りを浄めていく。それは外から見ても凄まじい光景であった。とうぜん、みなもにもそれは見えている。


「あやつら、なーにしとんじゃ!」


 みなもの言葉に火の神は目を覆ってうなだれた。シーナもポカンと口を開けて見ている。


 呆気にとられる三柱が見つめる先には、美しく神々しい無数の光の帯がビルから漏れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ