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コンクリートと夜の華(7)

 シーナの声と同時に、フッと何かが切れるような感覚がした。霞はシーナがなぜ叫んでいるのか分からず、首を傾げていた。


「オワーっ。ガーッ、イてーよ」


 距離のある叫び声に霞は振り返ると、香奈の横に吹き飛ばされ、悶えながら叫んでいる男子がいた。


(えっ、なに?)


  恐々と男子に近づく霞は、「えっ」と目を開いた。


 憐れにも男子は、右肩を押さえ、顔面蒼白で震えている。右足はあらぬ方向に曲がっていた。


「あーあ、折れたね。肋も折れてるね。まあ、頭からいってたら死んでたよ。これは運が良いのか悪いのか。さぞ痛かろう。霞、やるね~」

「でも、シーナ、私ほとんど力入れてないのに」

「だから、あなたには私の力があるのよ。これでわたしの言ったこと分かったでしょ。人で霞に逆らえるものはいないよ」

「そんな」


 霞が香奈の側に行き、男子を見る。呻いて自力で動けそうな状態ではない。さっきまでの香奈への威勢のよさは、感じられなかった。


「ほら、霞、とっととケリつけてよ」

「えっ、でも、もう十分じゃ」

「何言ってるの?キッチリ香奈と切れさせないとこいつはまた絡むよ。霞にも先は見えてるでしょ」


 知らなかったとはいえ、男子を吹き飛ばしたことを反省してシーナを見るが、「やらなにのなら、わたしがやる」と言わんばかりの激しい目で霞を睨んでいる。


(あー、ダメだ。分かるよ。シーナめちゃめちゃ怒ってる。シーナが手を出したら、本当にこの人を殺しちゃう。あー、でも、香奈さんとは切れさせないといけないし)


 霞が香奈に目をやると、霞を心配した目で見つめている。いままで自分が受けていた暴力による支配が、今度は霞に向いたことを憂いている目をしていた。神の眼を通して霞はその光を感じている。


(香奈さんて本当は優しいのかな。この人からの支配から逃れたかったでけなのかな。いまは、それが分かる気がする。シーナが睨んでいる。香奈さんのこともあるし、なによりこれ以上、目の前で血しぶき上げられるのは見たくないよ。ここは)


 霞はスッと息を吸うと、男子の胸ぐらを掴み、表情を変えて声を張り上げた。


「てめえ、いいかよく聞け。金輪際、香奈には関わるんじゃない。私の目の前にも現れるな。もし、ノコノコ現れたら、両手両足の骨をバラバラに砕くぞ。分かったら3秒以内に返事しろ。さーん・・・・・・」

「あぐぁ、わっ、分かった」


 霞が秒読みをすると同時に、男子は青ざめた顔で答えた。


「返事が、はえーんだよ」


 男子の顔を外して床を殴りつけると、地響きと共にコンクリートの床が砕けた。我ながら理不尽な怒りであると霞は頭で呟いた。


「お前のスマホを出せ」


 男子からスマホを取り上げて、急連絡通話をタップした。


「はい。救急をお願いします。場所は・・・・・・・」


 霞は救急車を呼ぶと、スマホから嫌な気を感じた。


(この中に香奈さんの写真もあるのな)


「いいか、お前。本当ならこのまま放って帰るとこだが、救急車を呼んだのは香奈の温情だ。だが、次はないから憶えておけ」


 霞がスマホを壁に投げつけた。スマホはコンクリートの壁に当たると、粒子状に砕けて消し飛んだ。シーナが「粉砕」と口にしていたが、その意味が分かった。


「香奈さん、行くよ」


 霞は香奈の手を引いて、走ってビルを出た。


「霞、香奈を連れてこっちに。ちょっと、霞に見せたいものがあるから」


 シーナがビルの裏手へと霞を導いた。

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