思惑と神命(7)
驚きの声を上げる三人に、秋人の方がビックリしていた。
「あれ、もしかして、みんな知ってた?」
秋人がタブレットの画面を見せながら笑うと、三人は一斉に首を振って否定した。
「あーっ、びっくりした。ナナガシラだね。『何かしら』って聞こえちゃった」
「そうそう」
実菜穂が必死で訳の分からぬ言葉で誤魔化すのを、陽向と霞が追従していく。三人の必死の笑顔を秋人は目を細めて見ていた。
「確かみんなナナガシラって言ってなかった?」
「言ってない言ってない。『何かしら』がツボにはまって」
実菜穂がお腹を抱えて笑うと、陽向と霞は笑い転げる実菜穂を見て笑った。三人の笑う姿に、秋人もつられてフッと笑みを浮かべた。
「あ~、秋人、ゴメンゴメン。話を折ってしまったね。シチトウ村について、教えて。歴史が古いことに興味がわいてきたよ」
実菜穂が笑いすぎた潤んだ目を秋人に向けた。実菜穂の笑顔に見入っていた秋人は、陽向と霞の視線を感じて慌ててタブレットを操作した。
(さすが実菜穂。秋人をうまく導いてる)
(実菜穂さん、ナイスです!私もその笑顔見とれちゃいました)
二人目で実菜穂に「ナイス」と合図した。
秋人がタブレットの画面を見せながら、説明していく。
シチトウ村。神の集まる村として、平安時代にはすでにその存在が記されていた。もとは、神代の時代に六つの集落があって、それぞれの集落を「山、川、沼、土、野、田」の神が治め、人々から信仰されていた。やがてそこに七つ目の集落ができた。そこを治めたのは天上神である白龍神の兄弟。白龍神は、集落の地上神である六柱を従え、一つの村にまとめた。そこから七つの頭が集まる村。ナナガシラという名の所以となった。
ナナガシラは、神の庇護のもとに農業、地場産業で栄え、歴史の書物や都にもその名を馳せていた。だがある時を境にその繁栄は止まり、歴史のなかに消えて忘れ去られていった。
戦後は、GHQによる農地改革のなか、ナナガシラはシチトウ村に改名された。その後は衰退の一途をたどり、昭和58年に廃村となった。
秋人の説明を三人は、食い入るように聞いている。昨夜の出来事の根元がこのナナガシラなのだ。知りたかった情報だけに、表情も真剣そのものだった。秋人にしてみれば、真剣に聞いている姿に悪い気はしないが、実菜穂が興味を持って聞いていることに一抹の不安を拭うことができなかった。
「ところで、ナナガシラがシチトウ村に改名されたのは、農地改革の他にも理由があるんだ」
「理由?」
実菜穂がすぐさま反応した。
「うん。この村にある因習が原因。子供を神様に捧げるという人柱の悪習があったみたいだよ。これには、GHQもかなり手こずったという記録もある。いま分かるのはこんなところかな」
「うんうん。すごく謎が多い場所だね。神様がどうして因習で人を縛ったのか不思議だな」
実菜穂が素朴な疑問を口にした。
(サナもキナもこの因習に小さな命を翻弄されたんだ)
三人は黙ったまま、秋人のタブレットを眺めていた。
秋を感じる日差しが木々の間から、実菜穂たちを照らしていた。それはまるで神々の囁きのように揺らいでいた。
実菜穂たちはその光を、みなも、火の神、シーナの蹂躙された人への思いを伝えているのだと感じていた。




