51. 攻略するから
51. 攻略するから
家のリビングにいるオレと咲夜さん。2人の間に静寂が流れる。咲夜さんは話を聞いてほしいと言ったけどなんの話なんだろうか……。
「……私ね最初は颯太君にここを出て行ってもらおうとしていたの」
「……うん。まぁなんとなくそれは分かったよ」
「でも私の方が一週間あとにこの家に来たから、強くは言えなかった。やっぱり見知らぬ年頃の男女が一緒に暮らすのは怖かったしね」
まぁ咲夜さんの言うことは分かる。オレと咲夜さんはその時ただの隣の席のクラスメート。それ以上でもそれ以下でもない。そんな状況で一緒に住もうなんて言われたら誰だって断るだろう。
「だから私は咄嗟に考えたの。素の自分を出せば私を嫌いになるんじゃないかって。嫌になって出て行ってくれるんじゃないかって」
「咲夜さん……」
「ほら、私は学校ではモブキャラ生徒Aだから幻滅するかなって思ったの。どうせ私と付き合いたいだけじゃないのとか思ってみたりしてね?」
完全に否定はできん……。でもまぁ最初は戸惑ったのは事実だが。いや今も戸惑うことが多いのは事実。
「でも、颯太君は私を理解してくれようとしてくれた。それが嬉しくて……気づいたら一緒に住むことに抵抗はなくなった。むしろ今の生活は楽しいかな?」
そう言って微笑む咲夜さんはとても綺麗だった。そしてオレは無意識のうちに言葉を口にする。
「オレは今のままの咲夜さんのことが好きだよ。だから気にしないでいいと思うぞ?これからもっとお互いを知っていったらいいんじゃないかな。オレたちは初級冒険者で仲間なんだし。」
すると咲夜さんの顔がみるみると赤くなり顔を背ける。なんだか照れくさい雰囲気になってしまったな。
「あー、そのさっきの好きっていうのはその仲間としてであってだな……」
「わっわかってるから……。その……これからも魔王を倒すためによろしくね?」
「ああ」
咲夜さんは素直で優しい人なんだろう。今の話をわざわざオレにしなくてもいいのに。少しはオレも信頼されてるのか?それとも……オレのこと……いや、考えすぎか。
でもオレももう逃げたりはしない。やっぱり咲夜さんのことが好き。だから咲夜さんに伝えることにする。
「咲夜さん」
「なに颯太君?」
「オレ……必ず攻略してみせるから!待っててくれ!」
「攻略……ええ……期待しているわ」
魔王を攻略する。そう咲夜さんは思っているかもしれない。でも今はそれでいい。必ずオレは咲夜さんを攻略してみせるから!
そうオレは熱く誓う。ふとテーブルを見ると咲夜さんが持ってきたミネラルウォーターが汗をかいている。そう、これはまだ夏前の暑い夜のことだった。
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