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血液型の街3

 部屋の中にはベッドと机と椅子が置いてあった。洗面台にトイレもあった。悪くない。とりあえず、トイレシートを敷いてくれた。


「ありがとう」

「どういたしまして」

「ねえ、シュー」

「なんだい」

「キスしたの?」

「ブッ」


 シューは吹き出した。オイラの質問が予想外だったのだろう


「そんな吹き出さなくても」

「い、いきなり変な事聞くから」

「変なことかな?」

「不躾だよ」


 シューは腕で口を拭っていた。オイラの人間の知識では、タオルか何かで拭うのだが……腕がべちょべちょで汚く見えた。


「人間って難しいな」

「まだ慣れてないの?」

「慣れの問題ではないよ。一度身に付いた思考や行動は治らないものだよ」

「ただのモノグサだよ」

「そうかな」

「そうだよ」


 シューは物憂げだった。なにか考え事をしている様子だった。


「そんなことより、どうするの?」

「どうする、って」

「彼女のことさ。わかってるだろ」

「ああ、それか」

「彼女、本気だよ。たぶん」

「僕はね……」


 シューはベッドに座りながら続けた。


「……断ろうと思うんだ」

「どうしてだい?」

「そういう主義だからさ」

「どういう主義さ?」

「その場所には関わらない主義さ。その場所その人にはそれぞれの考え方がある。そこに変に介入したら、新たな問題が起こる。」

「それとこれとの関係は?」

「彼女に介入したら、新しい問題が起こるということさ。今抱える問題を解決したとしても。だから、だから彼女はここにいるほうがいいと思う」

「なんだいそれは?それこそモノグサだよ」

「モノグサで結構」

「あー、開き直った」


 シューはベッドに寝転がった。おいらはその上に乗っかろうと、ベッドの横でカンガルーのごとく跳ねていた。

 外はさらに暗くなっていた。



 次の日、どんより雲だった

 再び別の店を訪れた。シューはりんごを3つ持ってきた。


「すごいよ、ポー」

「どうしたんだい」

「お店で血液型を聞かれたんだ。それで、昨日のことを思い出して、物は試しだと思って『A型です』と答えたんだ。すると、2つのところをもう1つおまけしてくれたんだよ。本当にサービスしてくれたんだ」

「それはすごい。でも、嘘はダメだよ」

「君は真面目だな」


 りんごは頂いた。残った1つはカバンに入れていた。


「いいね」

「いいりんごだった」

「その『いいね』ではないよ」

「この街がかい?」

「そっちでもないよい。おいらの言ったことがわかったのかという確認の『いいね』だよ」

「それぐらい分かっているよ」


 シューは静かに笑った。


「君は感情が薄いから、冗談かどうかわからないよ」

「よく言われるよ」

「おいらがよく言っているの」

「いや、その前からも」

「その前?」


 オイラは首をかしげた。


「君と出会う前からさ」

「そうなのかい?」

「冗談だよ」

「もう」


 シューは静かに言った。

 周りは静かだった。そういえば、人の賑わいがなかった。普通なら仕事に行く大人、学校に行く子供、鳴き騒ぐ動物と賑わうはずである。少なくとも、おいらたちが今まで行った街はほとんどがそうだった。洗濯物がバサバサと風に遊ばれる音が響いていた。


「なんか、静かだね」

「昨日来た時はもう少し賑やかだったけどね」

「おいらの気のせいじゃないよね」

「ああ。僕もつい君に話しかけたくらいだ」

「軽率だね」

「冗談だよ」


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