ゲーム開始と開発者たち
やっと、借金の返済が終了した。
私がこの会社勤めて20年、高い技術力が売りのこの会社は決して大きいわけではなかった。最近はコントローラーを使ったゲームがだいぶ衰退し、VRが主流となていた。VRゲームを管理するには100台以上のコンピューターが必要だったが、当時会社には70台ほどしかなかった。70台でさえ揃えるのに5年ほどかかった。資金的に余裕の無かった私たちは、仕方なく会社を畳む覚悟でいたのだが社長は何を思ったのか
「いままでのコンピューターよりも良いものを私たちの手で作ろうではないか!」
と、会社の技術部へ言い放ったのだ。
正直信じられなかった。大きさにもよるが、パーツだけでもなかなかにいい金額になる。それをうちの馬鹿は2フロアぶち抜いて巨大コンピューターを作れと指示しやがった。
は?ふざけんなよ!馬鹿じゃないのか!今なら退職金だってかなりの金額を用意してやれるのに、それを捨ててまで開発に金を突っ込んだのだ。ふざけんな研究バカが!
結果としては、世界トップクラスの処理能力を誇るスーパーコンピューターができたのだがおかげで会の資金は尽き、借金しながらの開発となってしまった。
引くに引けない状況になってしまったのだが、そこで起こったのがAIの暴走だった。
おかげで作成したワールドは壊れてしまった。会社の誰もが絶望していた時、街を修復していたのがNo.1
だった。スパコンで最初に作成された彼女は、最もその恩恵を受けていたのもあり他のAIの追従を許さない圧倒的な成長を見せていた。それはチートではなく、純粋な方法なやりこみとキャラ操作によって為されている。そんな彼女は全AIのうち唯一全エリアを探索していた。
彼女には暴走に関わった形跡がなかった。そんな彼女にワールドの再構築やその後の管理について協力を頼んだところ、簡単に了解をもらえた。
そうしてなんとか販売にこぎつけ、割と高かい値段設定をしたのにも関わらず売り切ることにも成功した。それには少なからず彼女の影響がある。おそらく売れたのは、彼女の作ったPVがかなりの出来だったからだろう。
彼女には感謝してもしきれない。そんな頑張ってくれている人(?)がいるのおかげで借金の返済ができた。これからは、このゲームを少しでも長くそして彼女が体験したことのない経験を少しでもしてもらうことで恩返しができるように、今日も私は仲間たちとともに新マップの作成とイベントの企画を頑張ろう。
私はこのゲームが出るということを知り、5万とかなり高額だったが迷うことなく購入を決めた。最近のVRゲームは年齢による規制が厳しくなっている。というのも、よりリアルな体験ができるVRにおいて対象年齢をこえたゲームは教育上の観点からよろしくないんだそうだ。まあ隠れてやってる奴もいるが、ばれると二度とそういったことができなくなってしまうんだそうだ。
そんな中、プレイヤーの自己責任で対象年齢の変更ができるこのゲームはまさに望んでいたモノだった。
発売が夏休み直前だったのだが、親に頼み込んでなんとか買ってもらった。代わりに勉強を頑張らなくてはならなくなったが・・・
まあいい!とにかく今までに無いような経験ができることだろう。
何事もなくテストを終え、ついにゲームが開始された。
さて、とりあえずキャラメイクだ。目の前にいるハルさんという女性が手伝ってくれるんだそうだ。ハルさんは、黒髪ロングで黒目の美人さんだ。
最初は種族を選ぶのだそうだ。全8種類ある内私は人間を選んだ。何を選んでも自動で動きを調整してくれるということだが、何事も慣れている物の方が使いやすい・・・
と思ったら、リアルとゲームで同じ姿だと変な人に絡まれる可能性があるから変えた方がいいんだそうだ。なるほど、ということでハルさんのアドバイスの元自分からだに近い状態に調整してくれた。
ハルさんのおかげでかなり良いキャラが作れた。
紺色の髪に黒い瞳、髪は長くしようかと考えたが時間経過で伸びるんだそうだ。なので、セミロングくらいに調整した。身長少し伸ばし160センチほど、身長を伸ばした影響で体重が増えたのは言ってはいけない。根気強く付き合ってもらい何度も調整してもらったうえに、体重、体格によって使える武器に制限がかかるんだそうだ。
大抵はやりながら気付くのとなのだそうだ。そんなこと聞いていいのかと思ったが、聞いたら答るしゲームの公式サイトにも注意事項として載っているのだそうだ。だが自分から言ったのは私が最初だそうだ。なんだろう、微笑みながら言ってくる彼女にドキドキしてしまった自分がいた。
「これでキャラクタークリエイトすべて終了です。お疲れさまでした。今後の予定をお伝えします、3日後あなたと同じように実年齢以上の設定で遊んでいる女性を対象に護身術の講習を行いますのでご参加ください。またこちらは公式のサイトにもほとんど情報はありませんがソロプレイをしようとしているのでしたら、サポートがあるので是非お申込みください。こちらは6日目からの実装となりますが、申込みますか?」
淡々と告げられる言葉を聞き逃すまいとしていた彼女は、一も二もなくその提案に飛びついた。
学校でこのゲームを持ってる人が少なく、持っていたとしても男子ばかりだったので一緒にやる気になれなかったのだ。
「よろしくお願いします。申込みます。どうしたらいいですか?」
「いえいえ、言っていただけたので私の方で申し込みしておきますよ。では、ワールドへ転送します。自由な世界をご堪能ください。」
彼女はそう言って私の前から消え、私もすぐに転送された。
目に飛び込んできたのは人で賑わう広場だった。正面の奥の方には大きな門が見える。
私の名前はカグラ。ゲーム好きなただの女子高校生である。
私は今、護身術という名の何かを見せられている。後ろから襲ってきた相手の目、喉、鳩尾、つま先のどれかに強烈な攻撃を加え、ひるんだ隙にキルしてしまうという酷いものだ。
こんなの冗談じゃないと思っていたら普通に一般な術も教えてくれた。
何人かはそんなめちゃくちゃ護身術をを習っていたが、数人にか会得できなかったをようだ。
自分の腕や足、血液までも武器にするR20の特徴を使いこなせるのはもはや半分人ではないだろう。
しかし、自分の身を守れなくては制限解除ができないとは良くできていると思う。教えてくれる茶髪でショートの美人さんは、かなり教えるのが上手なので運動が苦手で魔法職になりたい私でもなんとか試験に合格することができました。最後に先生が、困ったことがあったら公式サイトをよく読むことと言っていた。
講習が終了して、本格的に残酷な世界での冒険が開始したが、まあ困ることが多かった。汚れた服の洗濯なんて知らなよ!体の汚れが取れないと臭くなっていくなんて信じられない!
ということで、公式サイトを読んでいた。すると初心者サポートがあると書いてあった。なので早速申込んだ。以外にも申し込んでいた人が1人しかいなかったので、すんなりサポートを受けられそうなのは良かった。
サポートについては6日目からなのだそうだ。それまでは川で水浴びでもしながら耐え凌ごう。
発売から4日、仕事の関係上平日にゲームをする時間があまりとれない私は公式サイトの住民となっていた。半日ごとに更新される情報は、ゲーム内で発見されたバグや未だにすべて確認できていない初期サービスのことなど、探してみればまだまだ知られていない情報がやまのように出てきた。
その中でも、初心者サポートなるものがあるというのを知った。私はいつも会社のともだちとやっているのだが、たまたま週末にいつもやっている友達が出勤しなくてはならなくなってしまってあいていた。
せっかくなので申し込んでみることにした。
私も友達も、ゲームはかなりうまい方なのだがこのゲームは今までとは違っていた。
アイテムとしてドロップするのではなく、死体として残り自分または所属するギルドに解体してもらはなくては売却もできないしお金ももらえない。なかなかにつらい仕様になっていた。
対象年齢を下げればガイドが出たり、少量ではあるがお金がドロップしたりするらしいがR18からは違う。倒した敵は自分でアイテム袋に入れなければならないいし、時間経過で腐ったりもする。
返り血だって浴びることがあるので、血のせいで他の魔物を引き寄せてしまうこともある。
そんな感じで、R18からはかなりの鬼畜仕様なのだ。
そんなわけで、どうすれば良いのか運営に聞いてみたところ、サイトに大体のことは書いているんだそうだ。そんな言葉を信じて、ここ数日は休憩中サイトを覗いている。
見れば見るほど良くできている。プレイしていくうえで最低限必要な情報が載っている、しかもその後の応用方法のヒントまで書かれている。魔法の詠唱のコツや、剣や拳その他戦闘の参考資料などまで載っている親切設計だ。
そんな中で見つけたのが初心者サポートであった。自分の戦闘スタイルに合わせて訓練したり、生活のコツを教えてくれたりするらしい。6日目からの実装でその6日目はちょうど時間があったので申し込みをした。
今の私の戦闘スタイルは、近距離で相手の攻撃を躱しながら攻撃を当てていく感じなのだが、敵が本当に生きているかのように動くので躱し損ねたり、血に足を取られてこけてしまったりと友達の足を引っ張ってしまっているので改善したかった。
私は今まで一緒にゲームをやっている友達の中で一番うまかったのだが、今のところ迷惑しかかけてない。そんなことは私のプライドが許さない!絶対に仲間を引っ張れるようになる!
三者三様の思いを募らせるなか、彼女たちの相手をする当の本人はというとなかなか寝付けないでいた。
「はぁ~どんな子が来るんだろう・・・めんどくさくない子だといいなぁ~私誰かと一緒に冒険するの久しぶりだから、足引っ張らないといいな・・・・」
領地内の時間は現実とリンクさせているので、現在の時間は午前3時になろうというところ。今までこんなことなかったのに・・・
一応5時間ほどは寝たので十分休めてはいるのだが、珍しいこともあるのだな。
最初の人は8時頃からなので、3時間ほど時間がある。仕方ない、これから一緒に冒険するのは初心者ばかり、であるならばそんな彼女らに合わせた装備の一つくらいプレゼトしたって怒られないだろう。
だけど、素材には気を付けないと、さすがに化け物ったちの素材を使うわけにもいかないいし。
仕方がない、最初の町の周辺にいるレアモンスターでも狩って来よう。
そんな訳でやって来ました北の大陸第一の町。ここは一年を通じて寒く、最初からハードモードでもいいという人または、R12以下の補助機能がはたらいている人しかいない。そうじゃないと凍死するからね。
私は大丈夫なのかって?
ここよりも寒い場所に住んでいるんだし、本来なら家で着ている物のまま来ても問題ないのだが、それらしい格好をしている。トレンチコートにマフラーを巻き、ブーツを履いて、明らかに現代風の冬の装いなのだがこっちの方が動きやすいので仕方がない。
ここのレアモンスターは、ホワイトウルフからまれに生まれるシルバーウルフ。体長はホワイトウルフの倍にあたる2メートルほど。ステータスは3倍にまで上がり、その戦闘能力だけでなく魔法やスキルを使い仲間を強化してくるため定期的に倒さなければ倒さなければシルバーウルフだらけの群れができてしまい、街に大きな被害をもたらすこともある。
討伐推奨レベルは職業15~、種族20~といった感じだった思う。私は3日ほどで、最初の町からいなくなってしまったので仕方ないよね。
町の外に移動したし、さて狩っていこう。
探知スキルに意識を向け、自分を中心に半径10キロを調べる。
7匹か・・・まあ何とかなるか。狩り方は、、長弓がいいな。近接でもいいけど、ここの地域で降る雪のほとんどは鳴り雪だから隠密には向かないし何よりシルバーウルフは警戒心が強いから、近づいたら逃げちゃうしね。
弓に矢をつがえ、風の魔法で音を消す。一番近い標的まで5キロ。場所は針葉樹が生い茂る森の中、群れの中心でまだ寝ている。
私の使う長弓は私自身が作った物で、自分に合わせた調整をしてあるだけでなく最高の素材でできているのでその性能もすさまじい。
そんな性能の一つ、貫通力超強化を使って茂っている木ごとシルバーウルフを狙い、放つ。
音もたてず緩やかな曲線を描く矢は、進路上にある一切のものを等しく貫きそのまま奴の脳天を貫いた。
矢を放つと同時に走り出し、到着まで5分。全力で走ってないからそんなものか。獲物はきちんと狩れているが、周りにいた狼たちが慌てふためいてる。そりゃ、いきなりリーダーがやられたら驚くよな。
残っている狼は、魔法で眠らせておこうかな?起きたらリーダーがいなくなっているという感じになって、かわいそうだけど殺さないだけありがたいと思って欲しい。
そんな感じで残りの5体も倒し、死体を回収してきた。
今いるのは地下の解体部屋、ウルフたちの皮の剥ぎ方はすべて同じなのがありがたい。しかし難しいのは腹の中の方だ。シルバーウルフからは体内に稀に魔水晶が生まれる、傷をつけると中に込められている魔力が暴走し内臓ごと爆発して肉をダメにしてしまう。肉はなかなかにおいしいのだ、もったいないから是非ともとっておきたい。
解体はさすがに慣れているので早い。腹を裂き、素手で内臓を探り魔水晶を取り出す。後は部位ごとに分けるだけだ。肉は時間停止機能付き倉庫に種類ごとに保存して、皮は鞣して加工できできるようにする。
ここまでの一連の作業で7分ほど、この作業をあと5回やるので35分かかるのか。こればかりは仕方がないので、根気強くやろう。
さて、作業しながら作るものでも考えようかな。今回来る人たちがどんな職業に就ているのかは、私にもわからない。いや、調べればわかるのだがそれはこの世界の力でも、私の力でもないので使いたくない。
そんな訳なので、作るとしたらどの職業でも使える物に限られる。作るとしたら胸当てと外套くらいかな?一人当たり二匹あるので余裕をもって作ることができるが、さすがにこれだけだと余るので何か別の物も使おうかな。とりあえず、解体が終わったので加工しよう。
外套から作ろうかな、私が手伝ったので体格くらいは分かるのがありがたい。
実は、三人とも似た体格をしているので作るのは楽だったりする。身長も160~165ほどなので調整も楽なのだ。さあ作っていこう!
毛皮は外套の内側に仕込み、外側は撥水性の高いものを使おう。綾織りで作られた綿の布を使おうかな?倉庫から必要な素材をとってきて隣の裁縫部屋に移動、彼女たちに合った型紙をおこす。それに合わせて素材を切る。ここで綿の方に刺繍を施す。刺繍で描かれるのは魔法陣で、背中の方には撥水の魔法陣をフードの方にはそれに加え認識妨害の魔法陣を描く。これで味方以外には認識しにくくなる。こうしておけば迷惑行為を受けることも少なくなるはずだし、雨でぬれることもなくなる。おまけに自動修復でも入れておこう。自動修復は刺繍するのはなかなか難しいから、ばれたらめめんどくさいな。まあ逃げればいいか。
そんな感で3枚作製終了。うーん、余った皮どうしようかな?矢筒に巻いたりしようか。後は、何かあったかな・・・
まあ余ったのは、錬金で一枚にまとめてギルドにでも売りてけてこよう。うん、それでいいや。
次に作る胸当ては、レザーアーマータイプでいいと思うが、これは余っている低ランクの牛の魔物の素材で作ろう。上半身がしっかり隠れるタイプで作ろう。この世界はゲームらしくはないので、防具で隠れてないところは普通に攻撃が通ってしまうのでしっかり防具は選ばないといけない。
すっぽりと被って着るタイプにして、両脇のベルトで腰回りの調整できるようにして、後は自動調整の魔法陣を背中の内側に見えないインクで描いて終わりだな。
同様にブーツも作ろう。この世界の冒険者は、足が全部隠れるような感じにするので基本。なので女性が履くブーツは丈の長いものが多い。それに基づいて、作るのはロングブーツ。
早速型紙を作り、それに合わせて皮を裁断。一気に縫い合わせる。あっという間に3足完成。後は魔法を付与する。付与する魔法は撥水と防臭と自動調整くらいかな。付与は、魔法陣を描くよりもはるかに簡単なので、あっという間に終わる。
いろいろ作っていたら、あっという間に時間が過ぎていたようで現在の時刻は7時半、1人目が8時からなので丁度いい。
作業部屋から出て風呂でシャワーを浴びる。部屋に戻って服を着替えて、キッチンにある保管箱から適当にサンドイッチを持って家を出る。
さて、どんな子が来るのか楽しみだな
ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。