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今日から学校と仕事、始まります。②莞

パピポの呪い

作者: 孤独

どんな世界であろうと、犯罪と呼ばれる悪さはあるものだ。

その悪さにやられ、命に等しき生活を失うこととなった、パピポという名を持つ魔法使いがいた。

彼は魔法の研究の成果と論文を、元協力者に奪われてしまい、挙句に国から追われる身となった。



努力と成果を奪われた彼は恨み募った魔法を編み出し、ペンダントの中に魔法を封じ込めて、命を終える事とした。二度とこんな悪い事が起きないように運命を操った。


◇       ◇



とあるタクシー会社には、誰にでも分かるくらい無造作に金庫が事務所に置かれている。

ダイヤルこそは、社長しか知らないものの。そんなものバールなどでぶち壊せば関係ないような気がする。犯罪に対して、あまりに無防備過ぎる光景に従業員は


「アッシ社長、金庫をこんな風に置いていていいんですか?」

「大丈夫ですよ、美癒ぴー。”パピポの呪い”で、窃盗からは護られているんでね」

「パピポの呪い?」

「金庫の横につけたフックに掛けている、ペンダントの事です。便利な魔道具なんですよ」


アッシ社長の趣味は、魔道具と呼ばれる、物体に奇妙な能力を宿したアイテムの収集であった。ほとんどが珍妙だったり、役に立たない物だったりする中で”パピポの呪い”は有用な代物だった。

とはいえ、こいつが特殊なアイテム。


「護身用にどうですか?」

「なんか嫌です」

「賢明でしょうね。パピポの運命を軽く話してあげますよ」



◇          ◇


魔法に限らず、分野の成長は喜ばしいものだ。しかし、それを生活源というものにする学者、博士のような立場からすれば、苦難の一言。成長、進歩を実証するのを世に知らしめるのがまた大変。

パピポの研究を奪い、個人の地位と分野の成長を高めた人物は勢いのまま、国に認められる魔法使いとなったわけだが。人から奪ったもので得られたこと。多少、わずかな時を優越に浸れるものの、時間と立場はいつでも揺らされる。


「研究せねばな、ぐひひひ」


そう言いながらも、頭の中では夜な夜な女と戯れる事を好み。研究についても、手に入れた部下達がやってくれればいいと思っている。

自分1人では非力なものであるが、自分がいなくても研究がされているという事実とも言える。

パピポがそんな人物に気を許した事も罪とも言えるが、騙されてない内は楽しかったのも事実なんだろう。ひとえにパピポの人の好さがあった。この時までは。

パピポという魔法使いの研究分野は、心境を変化させるものばかりだという。



薬や拷問、トラウマを見せて、心を変化させる幻術のような類もあれば。

運命という曖昧なものを実体験させて、心を変化させる手段もあった。

パピポの呪いは後者である。

この呪いに掛かったものの多くは、自らが罪をした時にだけ掛かり、それに気付くのが手遅れなものばかりだった。



「博士、博士!次回の研究はなんですか?」

「どのような魔法を生み出される予定ですか?」


何も悪くないと感じさせるよう、人々は讃えては動向を気にする。

甘い蜜のように、強い欲求が湧いてくるという。

パピポの呪いに掛かった者は、特に何もアイデアなどなく欲求を消化するように生活していった。効力がじわりじわりと来るため、まったく分からない。


「そうだね。やはり、ホレ薬の研究でもしようかねぇ~(ま、部下の作ったもん、出せばいいだろ)」


名を得た者達の一声というのは、大きいものだ。嘘も広まれば、真実と言えそうだ。

新薬的なものはなく、従来の魔法にちょっとアレンジをすればもう、大発見にでもなりそうな事。博士としての金も名誉も得られたまま、続きそうだった。

だが、二度も三度も、罪を重ねることに抵抗がなくなれば、呪いは満たされる。


「博士!次はどのような魔法をパクるのですか!?」

「みんな、期待してますよ!あなたのパクりに!」


失礼極まりない言葉が飛び交うも事実が起きれば、転がるように……。


「あなたのオリジナルには誰も興味がないですよ!」

「早く盗作してください!」


自分を認められるのは、犯罪だけ。

やがては、


「あなたに物なんか売買しません!しっかり、万引きや強盗をしてください!」

「誰も住んでいない空き家に住んでくれ!あんたは奪って生きてもらわなきゃいかん!」

「あんたに売るレバーはない!自分で狩ってこい!」


人の生活に対しても、常日頃。犯罪を要求されていく運命に落ちる。

罪をさらに重ねて呪いを膨らませ、罪の重さで死んでいくという。

それがパピポの呪い。



◇         ◇


「というお話です。悪い事をしちゃいけないんですよ、美癒ぴー」


抑止力になるという面より、天罰的な面が強い。


「犯罪を防ぐ物じゃないですね、アッシ社長」

「ですね。それに常習者となると、特にこの呪いが必要かどうかというと、あいまいです」

「さすが魔道具ですね。ロクなものじゃないです」


やるわけでもないが。こんな呪いがかけられたら、異様な生活になって死にたくなりそうだ。オチも納得がいく。そう思うと、


「刑務所って良いですね。人の更生を考えているんですから」

「ええ。パピポの呪いは、終わりなく苦しませるために作られているんです。ですから、変われる時に変わっておくべきなんですよ」


でも、罪に巻き込まれた者達の多くは、そんな更生を望んでいるなんて。そういないだろう。

だったら最初からするなよって話だし。



”パピポの呪い”

ペンダント状に固められた魔法石。

この物体の近くで罪を犯した者は、その罪を続けて生きていく事を要求される。

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