エピローグ
デルフィニウム解放。
その報せは四海に響き渡り、〈業魔〉の脅威に怯えるこの世界の人々に確かな希望を灯した。
俺は名実ともに勇者となり、ジナイーダの名誉も回復され、3年ぶりに”勇者ハル”とそのパートナー”魔導師ジナイーダ”が戻ってきた。
こういうことはあまり表に出すべきではないと思うが、その日の夜に俺はジナイーダに”ごほうび”貰った。勇者だけでなく”男”にもしてもらった。ジナイーダには感謝の言葉しかない、まったく。
俺たちはその後、はるかな昔に星の霊脈の結節点に建造された”魔法の塔”の奪還に向かった。
かつての人類は、この世界の神に届くほど高い塔を作った。神はそれを喜び、祝福を与えた。それ以来、塔は共和の象徴となり、いかなる言葉と文字であろうとも人々の意思疎通が妨げられることはなくなった──そんな伝説があるという。
俺がこの世界で見た文字や言葉が何の通訳も要らずに通じたのもこのおかげらしい。
それを、〈業魔〉に乗っ取られているのが現状だ。
俺たちは戦った。
〈方舟〉から流れてくる歪みの雨の降りしきる中、人類と世界のために戦った。
俺は──この世界が好きだ。
ジナイーダのことが好きだ。
ろくでもない〈業魔〉の波動が人々を苦しめ、地獄絵図に書き換えられ、滅びを待つのみであろうとも、この世界で出会った人々のことが好きだ。
滅んでほしくない。
だから戦う。
ネイキッドOMSを駆り、俺は俺に与えられた力をすべて使って戦う。
いつか、この降りしきる歪みの雨を晴らし、この世界に真の青空をもたらすために。
「金色の魔女と世界の果ての青い空」
(了)




