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眠れないなら

作者: 夜朝

休みたいのに休めない

たくさんの寝息の中で

取り残される夜


こんなに人がいるのに

どうして

自分はひとりなんだろう


誰も起きていない暗闇の中で

星の代わりに常夜灯

無機質な明かりは硬すぎて

せめて瞬いていてほしい


そんな夜があった

私にとっては昔の話


君にとっては

今の話かもしれない


価値ある時間に

変えてください

むだにするよりは

いいと思う


今なら

その日一晩もかければ

翌日の夜は

起きていようと思っても

じっくり熟睡なのです


起きていたくて

起きてるのはいいけど


眠りたいのに

眠れないのは

くるしいことだ


そんな夜に

気持ちを満たしてしまう案件

分けっこさせてください


必潰と書いて必ず潰す


すこやかなスリーピング

じゃまするものは

ただじゃおかないから


おひざを貸せたらいいのに

誰にも貸さない特等席

君だけは特別


話してもいいかな

少しだけ

私の話


あったのは

入院していた頃


色んなことがこわくて

気が張っていたのかな


眠りたいけど

眠るのもこわくて


でも疲れていて

眠りたいのに


……朝になってしまった


その白みに受けた衝撃は

どこまでも静寂の中


一日のうちで

一番大好きなはずの

夜明けの時間が

その日ばかりは

残念だったり

落ち込んだり


夜に一度も起きなくて

朝 ぱきっと目覚めるのが

子どもの頃から好きだから

そうでない自分が

すごく困ったっけ


あの頃は

夜が近づくと緊張した


また眠れなかったら

どうしよう


夜に眠れなかったら

いずれ

死んじゃうじゃない


と思ったので

生死をかけて臨んだものです

昼も夜も

祈りの強さで

自分に言い聞かせた

繰り返し繰り返し


夜にぐっすり眠るんだって

そうさせてくださいって


あの頃

聞かされたこと


頭の中にあるコントローラーが

壊れてしまったのに似ているんだって


修理はできないんだって


それを聞いた私は


何しろ

直せないなら

新しいのと取り替えなくては


そう思って

脳内で具体的に想像してた


真新しいコントローラーは

十字キーがあって握り込むような

ゲームのコントローラーとは違ってて

テレビやレコーダーのリモコンみたいな

黒い四角に色とりどりの小さいボタンが

たくさん並んだものだった


……一体私は

何を脳内で想像してたんだか

あやしいんだから


いや

私の想像があやしいのは

子どもの頃からだけど


不眠は確か

一週間かからず治ったのだ

病院のベッドの上

ひと安心


でも

お医者さん言ってたけど

寝不足で死ぬ人はいないらしい

睡眠が不足しすぎると

身体が勝手に寝落ちするらしい

ふた安心


でも

眠れないのは

本当に

とても

つらいね


寝落ちなんかじゃなくて

おやすみなさいの後で

ほかほかのおふとんの中

すやすやできたらいい


アンテナが立っていたら

私のご自慢の沈睡成分

いくらでも届けるのに

ふだんは余っているの

寝つくのに一分も要らない


ぴぴぴ


届くかな

無意識の更に下から

届け届け

夜十時のテレパシスト

心の中から手を伸ばす


熱くなりすぎた頭の奥

夜風を纏う手のひらで

ふんわり

ひやり

癒せますように


回転数を

落として

落としてね


ほら

すーっと深呼吸して

働きすぎてる頭の中身に

「だいじょうぶだよ」って

「ひとりじゃないよ」って

だから

「やすんでもいいんだよ」って

教えてあげてください


考えなきゃいけないこと

いっぱいあるね


でも

みんなも

心配してくれてるよ


「あいつが眠れますように」

「夜があの子に優しくしてくれますように」

「頭も体も疲れが取れますように」


そばにいられなくても

心はいつも想っている


伝わってくるのは

一言じゃ収まりきらない

何かの感情


例えば

以前はよく効いていた

不眠対策が

効かなくなったとか

取れなくなったとか

あるのかな


最近

よく目につく言葉

「過去の成功体験にとらわれる」

……これは破滅の遠因なんだって


何だか

とらわれていた気がするの


現状を見すえて

「今」に

ぴったりくる

新しい智慧を引き出したいね

どこからって

自分の中からだよ


私は出せると思うの

君も一緒にどうかな


そうして

「おやすみ」と「おはよう」を

両方ともセットにして

お耳に入れさせてもらいたい

そうしたら

夜の始まりから終わりまで

一緒にいられるから

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