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美羽ちゃんとは給食の班も一緒だった。
お姉ちゃんの顔には、まだ多少の緊張を見て取ることができたけれども、笑顔が増えてる。
うん、いい感じ。
これならあたしもはやくあの世とやらに行くことができそう。
でも、あの世に行くにはどうしたらいいんだろう?
その時が来たら、空からはしごでも降りてくるのかな?
「おーい、はやくはしご降りてこーい」
教室の後ろで膝を抱えながら上を向いて声に出してみた。
誰にも聞こえない……って思ってたんだけど、視線を感じてあたりを見回す。
影山那緒!
影山くんがこっちを見てる! びっくりしたあたしは、壁を通り抜け教室の外へ飛び出した。そしてふと気がついたら、三階の窓の外に浮かんでいた。
地面が、ない!
ひゃああ!
思わずギュッと目をつぶった……けど……あれ? 待てよ?
そうだった。あたし幽霊なんだった。
あたしはふわふわと空中を漂ってみる。あ、思った方向に動くよ! これ、ちょっと怖くて、かなり楽しい。
天気がよかったら最高かもしれない!
しとしと雨の中、しばらく空中散歩を楽しんでいたけど、お姉ちゃんの様子が気になって、校舎の方へと目を向けた。
そうしたらなんと、今度は壁を通り越し、教室を覗くことができてしまった。
幽霊ってこんな事もできるんだ!
あ! 大変!
給食を食べ終わった影山くんがお姉ちゃんの隣に立って、なにか話しかけてる。
なに話してるの!?
すごく気になるのに、影山くんが怖くて戻れない。
二言、三言会話をした後、影山くんはお姉ちゃんの隣から離れていった。
あたしはそうっと壁を通り抜け、またお姉ちゃんのそばに舞い戻る。
「史香って、影山と仲良かったっけ? 昼休みに理科準備室に呼び出すなんてさ」
そう言ったのは美羽ちゃんだ。
え? 影山くんが、お姉ちゃんを呼び出したの?
不安。
なんだかよくわからないけど、影山那緒は危険。そんな気がするの。
怖いけど、影山くんがお姉ちゃんに何を話すつもりなのか、ちゃんと確認しなくっちゃ。
あたしは勇気を振り絞り、理科準備室へと向かうお姉ちゃんの後を追った。