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「あたし、このまま生きていくことはできないよ……どうしたらいいの?」
確かにお姉ちゃんはそう言った。
そういえば、今日のお姉ちゃんはまったく笑わなかったし、ほとんど誰とも話してない。
いくらおとなしいといっても、家族とくらいは普通に話してたのだ。
心配。こんなお姉ちゃんを残して、成仏なんてできないよ。
……成仏?
そう、そうだよ!
多分、あたしはお姉ちゃんのことが心配で成仏することが出来ないんじゃないかな?
うん、きっとそう。
意識したら、そうに違いないという気持ちになってくる。
よし。あたしお姉ちゃんにひっついて、お姉ちゃんが元気になるように見守る!
そんな決意をしたあたしは、次の日、お姉ちゃんといっしょに中学校へと登校した。
◇
ガラガラガラ……。
お姉ちゃんが戸を開けると、クラス中の視線がこちらに集まった。いつもより遅めに家を出たお姉ちゃんは、ちょっぴり遅刻したのだ。
うあ、やばいよお姉ちゃん! 先生もう教壇に立ってるじゃん!
少しがやがやとしていた教室が、お姉ちゃんの登場でシーンとなる。
「お! 鷲尾! 大変だったな。みんな待ってたぞ。席に座りなさい」
さすが先生、すかさずお姉ちゃんに声を掛けると、窓際から二番目、前から四番目のお姉ちゃんの席に手のひらを向けた。
お姉ちゃんは一礼して、自分の席へと向かう。
あたしとお姉ちゃんの住む街には、中学校は一つしかなかった。
しかも小学校からみんな一緒なので、全校生徒顔見知りなのだ。
だから、お姉ちゃんのクラスメイトも顔くらいならわかる。
お姉ちゃんの隣の席に座っているのは、多分クラス委員の美羽ちゃんだと思う。
美羽ちゃんは、ちらちらとお姉ちゃんを見ていた。きっとお姉ちゃんのことを気にしてくれてるんだよ。
『ほらお姉ちゃん、美羽ちゃんがこっち見てる!』
お姉ちゃんの隣に立って、あたしが声を掛けると、お姉ちゃんはあたしの声に応えるみたいに顔を上げた。
美羽ちゃんと目が合う。そして――
「おはよう」
「おはよう。お休みしている間のこと、わからないこととかあったら聞いてね」
「うん、ありがとう」
二人のやり取りに、あたしは、自分の声が届いたみたいで嬉しくなった。
やったあ! やったね、お姉ちゃん。なんか、いい感じで声をかけてもらえたんじゃない?
あたしは姿が見えないのをいいことに、お姉ちゃんの隣で手をたたきながらぴょんと飛び跳ねた。