表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/16

-12-

 夜。

 しとしとしとしと。

 雨音だけが聞こえる。

 すうすうと眠るお姉ちゃんを、あたしは真上から見下ろしていた。

 

 ピピピ・ピピピ・ピピピ・ピピピ!


 突然鳴り出した電子音。。

 寝ていたお姉ちゃんが目を覚ました。覆いかぶさるようにしていたあたしの身体を突き抜けて、ガバリと起き上がると、時計を確認し「よし!」とつぶやく。

 夜中の二時だ。


「やるよ、影山くん! それから☓☓☓☓☓☓!」


 あ、またあたしの聞き取れない言葉。

 なんだろう。お姉ちゃんがその言葉を言う度に、世界がぐるぐると回るような気持ち悪さを覚えるのだ。きっとなにか大きな意味のある言葉なのだろうけど、どうしても聞き取ることができない。

 お姉ちゃんは橙色の小さい電気だけをつけて、ろうそくとライターを持って向かい合わせになった二枚の姿見の真ん中に立った。

 肩を上下させながら大きく深呼吸をすると、ろうそくに火をともす。

 何が始まるの?

 姿見の前にろうそくを置き、お姉ちゃんは大きく開いた目で、瞬きもしないで鏡の中をのぞいていた。

 なにが見えるんだろう。お姉ちゃんの後ろから、あたしも鏡の中を覗き込んでみる。

 うわ!

 覗いた鏡の中に向かい合わせになった鏡が映って、その中にまたこっちの鏡が映って、そこにまた……。エンドレス。鏡の迷宮が出来上がっている。

 あれ?

 お姉ちゃんの後ろにモヤのように何かが映り込み始める。

 しだいにはっきりと形を取り始めるそれは……。


「みつけた! ☓☓☓☓☓☓(おねえちゃん)!」


 鏡を覗き込んでいた()()()()()が言った。

 

 鏡の中にくっきりと映ったあたし。

 その姿はふわふわの猫っ毛で、くりっとした二重の鷲尾明日香じゃなくて、黒髪のストレート、青白い頬をした鷲尾史香だった。

 鏡の中に映るのは、現実の史香と、幽霊の史香。

 同じ顔した史香が二人、鏡の中で見つめ合っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ