監禁
ープロローグー
何も考えられない。
でも確かに分かるのは、体じゅうにある打撲と傷とボロボロの精神と
どうしようもないこの状況。
うっとうしいと…彼のことを一度も思ったことがない。
しーんっとしているこの部屋…さっきまでの彼の怒鳴り声が嘘のようだ。
てるてる坊主が部屋の中に飾られてる。この前雨が降らないように彼と作ったんだっけ?
私手首にはリストカットの跡、もう消えることはない…
のばした手はヒラヒラと宙を舞う。
手をグーパーグーパーする。「あぁ私生きてる」こうすると“生きてる”って感じれる。
首を絞められた事が何度あるだろう…。息がもう出来ないくらいになると、首にある手の力を緩めて、手を私の背中に回し私を強く抱き締める。「ごめん…ごめんな…」と泣きながら…。
切られる箇所は手首、足、指…言い出したらキリがない。
るんるんといつも鼻歌を歌っていた楽しい毎日は遠い昔のようだ。
のばらは今は綺麗に咲いているだろうか私が大切に育てていたのばら…確か花言葉は“孤独”だっけ?
いまの私に似合いそうで似合わない花言葉ほかにもあったけど、何故かこの花言葉しか思い出せない。
たくさんののばらをもう一度見たい。
いまの季節はわからないけれど、もし咲いているのならこの目で見てみたい。
よっつの頃からイジメが始まった。何年も続いたその時にリストカットをしたもう消えない傷…。
でも、この傷は私にとって苦しかったけどそれでも頑張って生きてきた証。
もう消えないって知って後悔もしたけれど、今ではこの傷が誇らしい。
ねぇ幼い私。今まで辛かったこと、それを忘れたくて切ってたよね。でもこの傷は誇れるものなんだよ。
私ね。イジメを受けてる毎日が息苦しくて仕方なかったでも、それでも生きたかった。
あの頃の私に会えるのなら、「頑張れ!」「負けるなっ!」って言ってやりたい。
ないてばかりだったあの日の私に…
たいせつな人が出来た。
がっこうにまだ通っているときの話…高校の頃だ…それが私の初恋だった。
好き、大好きその言葉を何度も伝えた。
きらわれたりするかもしれないって思って怖かった。
だけど、彼は私を嫌ったりしなかった。むしろ愛した。
けったり、殴られたりされたこともある。でも私は彼を愛した。
どなられるなんて今はしょっちゅうだ。
だけど、彼は私を愛す。私も彼を愛す。
めが涙でおおわれて視界が滲んでしまうこともあった…
だけど、私はこんなにも…彼を…
もう一度切りたい衝動が今でも私を襲いかかる。
うるさいくらい幻聴が頭に響く…。
疲れた。助けて。苦しいよ。
れいせいにやっとなれた私に襲い掛かる幻聴。
たくさん聞こえる。疲れた。助けて。苦しいよ。という声そして「切りたい」と
でも、それはもうしないと私は決めた。
もうリストカットはしないって
それをやってももう何も意味はないって分かったから。
れいせいになれるようにもう一度心を落ち着ける。冷静になれるようにと…だけどこんな場所でなんて…
でも今私がいるのは静かな部屋。
もう光が差し込まない今、朝か昼か夜かそれすら分からない。彼が家を出ていくとき今は朝かと分かる。
私が愛した彼は私を独り占めしたくて閉じ込めた。そうこの前私に言った。
あぁ愛しい人…私をちゃんと見て…
なかないで?
たいせつでかけがえのない人…
がんぼうを叶えるためなら彼は手段を選ばない。
好き好き好き好き好き好き好き大好き大好き大好き大好き大好き愛してるあいしてるアイシテル
きもちが痛いほど伝わってくる。
一番に思ってくれてるってそれがよく分かる。
つらそうな顔をしないで?悲しそうな顔をしないで?私がいるから…
願いがもし叶うのなら私は…あの頃のようにいつも通り学校に通って、あなたと会うそんな毎日に戻りたい
がんばってもこれは叶わない
叶ってほしい願いほど叶わない
うるさい…。幻聴が私の頭に響く
なきたい。なきたい。なきたい。
らくになりたい。「やだっ!楽になりたいとか言わないでっ!」頭に響く幻聴に言う。
外に出たい。外に出たい。確かに出たい…
にっこり微笑んで「いってらっしゃい」って言って外に出ることを許してくれるわけない。
でも私は彼を裏切れない。
もうあの人からは離れられない
……。
彼はひとりぼっちになってしまう。
はなしてくれない。束縛をする彼…
私、こんなにも彼を愛してしまった…。もう戻れない…こんなの嫌なはずなのに……なのに、どうして私は、ここを離れることが出来ないの?
束縛、独占欲
縛りつけられた生活を何故心の底から嫌がらないの?わからない…。自分のことなのにどうしてかそれすら分からない。
るびーの小さなネックレス…彼がくれた。宝石は赤く光った。その赤い光が彼を包んでいるように見えた
そんな彼を見つめる私。
うるさい幻聴は今も頭に響く
でも愛してる。
もうこれは一生届くことのない願いだ…だけど願う…あの高校の頃に戻りたいと…
しりたくなかった彼の一面
なきむしな彼となきむしな私。
いっしょにいたいけど、いたくない。そんな複雑な気持ち
ともだちには見せない私にしか見せない。一面
彼と抱き締めあった。
はなれたくないって何度も言われた。
満足したい。
足りない。何が足りないのか聞くと彼は無言のままだった。
しずかな時間は気味が悪かった。
なきたい日には目が腫れるほど泣く。
いとしいあなたは何も言わず私を抱き締めてくれる。あめとむちのように感じた。
********
部屋のなかでなら自由に動けるそれが唯一の私の救いかもしれない。
屋外にはいけないけど、自由があるだけまだマシだ。
はしの小さな模型を彼と私で作った。一緒に頑張って作った思い出の品。
静かに時は刻まれていく。時計がないこの部屋…秒針があれば時が刻まれているように感じられただろう。
かがみに写る私は高校の時から何も変わってなかった。姿は少し大人になったけど何かが止まっていた。
だれもいない…私以外いない…
私にはこの部屋のどこにでもいていい自由がある。
はしの模型はいつの間にか少し崩れていた。いつ崩れたのだろう
それだけこの模型をちゃんと見てなかったのだ。
のばらの絵を描いてみたいと思った。今度彼に言ってみようかな…きっと書いたら喜んでくれる。
とそんなことを思った。
きっと一生ここから出られないのかもしれない。
がっこうに行ってたあの頃が懐かしい。
嫌いだったあの子はどうしてるだろう。クラスメイトはどうしてるだろう。誰も教えてくれない。
だってもうみんなと連絡取れないもの…それにきっとみんな私が死んでるって思ってる。
取り残された私。
りんごをかじって涙を流した。「甘酸っぱい…」りんごみたいな甘酸っぱい恋愛をしたい…
残された私はこれから何をしよう。繰り返す毎日何も変わらない…。彼以外の人としばらく話してない。
さって行った私の…いいえ。行方不明になった私を誰も心配していないだろう。
れいせいに考えれば分かることだ。だって私には肉親は誰もいないもの
たいせつな人は彼だけだ。
よっつの頃から続いてたイジメは高校になってピタリとやんだ。解放された気分になれた
うざいと言い続けられた日々ともさよならだ。
にあってると彼に言われた高校の頃の制服
なくしちゃったかな?どこにしまってるんだろう…
るっくすのそこそこ良い彼はモテたでも全員キッパリふったと言ってた。私に会って恋に落ちたからと…
もっかい言って?と少し頬を赤らめた彼に言う。昔話が少し恥ずかしい様だ。何だか懐かしい記憶だ。
うるさく耳元で誰かが囁く…
すてちゃいなよ彼のこと…
ぐっばーい。と…ふざけないで…
彼を捨てるなんてありえない。
がんこな私は心に何度も誓う。
戻りたいけど、あの頃に…でももう戻れないの知ってるから…と思ってるとガチャっと玄関から音がする。
るんるんで帰ってきた。どうやら機嫌がいいようだ。
「おかえり」
「ただいま」
優しく微笑む彼の頬にキスをする。
しくらめんの花を片手に持って
くれた。会社の同僚がくれたらしい。
微笑んで答えてくれた。
笑った彼はとても可愛い。
むっとちょっと怒った彼も可愛いけど…でもそんな
彼…でもこんな優しい彼が変わってしまう。
愛してるよずっと…
しくらめんの花を私に渡す。
てれてるようだ。なんか可愛い…プレゼントなんて渡すこと全然ないからかな?渡し慣れてないのかな?
るんるんだった彼と大違いだ。
とても愛おしい…
言って?愛してるって…
うるさい幻聴をかき消すように…
私を抱き締めて…お願い…
もう離さない…彼は言った。
と言われたその言葉はとても重く感じた。
伝えられた言葉は重い…
えらぶ権利はあった。決められる筋合いなんてなかったこんな運命に…閉じ込められる運命に…
ただもう一度学校に行ってみたいと思う…
彼は多重人格者でもなんでもない。
はなれたくない。と何度も言う彼。
微笑む彼はとても優しい。
笑ってると私もつられて笑ってしまう。
むっという顔をするとイジメたくなる。
そんな彼が私は愛おしい。
しくらめんの花をくれた彼。
てが私より少し大きい彼。
私よりちょっぴりいじわるな彼。
はしの模型は崩れかかってる。どうしてだろう?
傷がなぜか痛む。もう消えないリストカットの傷…
つめたいからだ…
けだかく咲くのばら…高貴な花のように感じる。そんなことを思った私。
らせん階段の上には景色が綺麗な屋上が待っている。高校の屋上
れいせいな彼はいつも私に冷たかった。高校の頃…冷たい人という印象が強かった。なのにモテた…
るっくすがいいというのはこういうところで発揮されるのだろうか…私にはわからない…
のばらは綺麗だろうか…何色なのかな…
暴力を振るわれようとこの気持ちはどうしてか変わらなかった。
力はいつも彼に負けてしまう。
…男ってずるい。
逃げつづけるよく分からないゲーム。この前彼が買ってきた。
げーむは好きだけどこのゲームはすぐに飽きた。
たいせつにしている物の一つに小説がある。本はいつも新刊が出たら彼がすぐ買ってくれる。
いまの私にとって小説は私の心の小さなよりどころともなっている。
ー彼女の小さな叫びー
でも、この生活に慣れてしまった。
もう私はこの家から出られない…
私は今日も朝、仕事に向かう彼を見送ってから静かになったこの部屋に一人でいる。
はぁ…と珍しくため息が出た。
こんなこと…いつまでも続けていいのだろうか…本当に一生このまま出られなくなっても…でも…
この部屋にも愛着が少し湧いている。だから余計ここから離れられないのかもしれない…。
かと言って「このままでいい」と思っている訳ではない心の中で「このままではダメだ」と思う私がいる。
らんらんと歌う声が聞こえる雷雨の酷かったあの日…私は彼に呼び出されここに連れてこられた。
出たい。出たいよ。帰りたい。帰らせてよ。痛い。痛いよ。大好き。大嫌い。大好き。大嫌い。大好き。……死にたい。
いつまで続くか分からない。この生活が終わるのは今日かもしれないし、明日かもしれない…。
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パソコンでこの小説を読むとき文章の頭の文字を上から下に読んで見てください。
もう一つの文章…物語が見えます。
そして、この小説にはもう一つ
AfterStoryがあります。
彼氏目線です。
よければそちらもよろしくお願いしますm(_ _)m




