隷属
異世界から連れて来られたらしいことを正直に話す?
話して判ってもらえる?
「ストラグル」
「ぐぅっ!?」
「嘘をつかない代わりに黙秘する。 なかなか頭が回るようだが、自分の立場を考えろ。 リリース」
脅しだけだったのかあっさり解放された。
「私は、日本という世界からここに連れて来られました」
「日本?」
「たぶん、こことは異なる場所。 異世界だと思います」
「ストラグル」
「誰が与太話をしろと言った」
「ほん・・・と・・で・・す。 しん・・じぃ・・て」
「ストラグル」
もう一度同じコマンドが繰り返されるとさらに首が強く締め付けられる。
「まだ、その与太話が本当だと言えるか?」
「がっ・・・っ!」
押し潰された喉が、空気の通り道をふさいで声が出ない。
息のできない苦しさに床を転がり、苦しさにのた打ち回る。
キーーンという耳鳴りが周りの音を消していく。
視界が赤く染まり、視界がギュッと狭くなる。
「もう限界だ」
「リリースッ」
「ゲフッ!」
「ひゃっ、HP少なくて、よ、よかったなぁ」
息ができるようになって忘れていたかのように脂汗が全身から噴き出してくる。
プールで溺れかけ、助けられたときのように身体が重く力が入らない。
(・・・・正座しなきゃ)
息ができなかったせいでうまく働かない頭でそのことだけを考える。
(もう、苦しいのはいや)
無理やりに身体を起こす。
時間をかけ、かろうじて女の子座りの形で身体を支える。
「きつい罰を受けた後だというのに、なぜ、すぐに身体を起こした?」
「さっき・・・・教えて・・・・頂きました」
整わない呼吸で何度も言葉を詰まらせながら何とか答える。
「そうか」
そういって、ザコイ様がガラスのコップに水をそそぐ。
美味しそうな水の入ったコップに、小さな瓶に入った赤い液体が数滴たらされる。
(飲みたい)
近づいてくるザコイ様が持つコップに視線が吸い寄せられる。
ザコイ様のものを欲しがる自分を叱りつけ、ザコイ様のお顔に視線を戻しても、無意識にコップへと目が行ってしまいます。
(喉がカラカラ)
私の目の前にしゃがんだザコイ様がコップに口をつけます。
ひと口、ふた口と消えていくお水に目を奪われたまま、飲みこむ唾液すらないのに喉がコクリと音を立てました。
そしてゆっくり唇が近づけられ、まだ冷たさの残る水が口の中に送り込まれました。
「んっ!」
喉がコクコクと音を立て、身体のの隅々に染み渡っていきます。
「まだ欲しいか?」
「あ、・・・えっと・・・」
「言いつけを守ったご褒美だ。 今は甘えてもいい」
「はい」
許しの言葉に甘え、私はもう2回キスをねだりました。
「ありがとうございます。 ご主人様」
この時私はようやく理解できたんです。
罰を受けるのは私が間違ったことをしたから。
ちゃんと命令を守れば優しくして貰えるんだってことを。
こうやって正気を無くしていくんですね。