【第五話】ヴァンパイアのお食事③
夜の闇はとても心地がよく
小さな月の光がとても綺麗だった
私はベッロ様の家の前までやって来ると
ベッロ様がいるであろう2階の窓から
こっそりと中を覗き込んだ
いたーっっ!
私は静かに窓を開けようとした
か・・・・鍵が閉まっている!?
・・・・・・想定外だった
どうしようもなくて窓を叩き壊そうとしていた時
「アグリー」
誰かに声をかけられて後ろを振り返った
そこにいたのはスレイヤーだった
「スレイヤー?こんなところで何してんの?」
「それは、こっちのセリフです
あなたこそ、こんなところで
何をやっているんですか?」
「それは・・・・・・」
「・・・・・・はぁ
いいですか?あの方の血を飲んでも
あなたの空腹は満たされません」
「どうして?スレイヤーは何か知ってるの?」
「・・・・・」
「お願いスレイヤー、教えて!」
「・・・・・・わかりました
本来ならヴァンパイアに変化しても
血を飲むことで空腹は満たされます
ただし、ダンピールからヴァンパイアに
変化した場合は別です
ダンピールからヴァンパイアになった場合
空腹を満たすものは“血”ではなく“精”となります」
「“精”? どういうこと?」
「“精”を吸うこと・・・つまり・・・
あなたの空腹はセックスをすることでしか
満たすことができないのです」
「セッ・・・・セックス・・・・」
「・・・・・・このまま、あなたが空腹を
制御できるのなら黙っておくつもりでした
しかし、人間に手をかけようとするほどまでに
追い込まれていたのでお話するべきだと
判断しました」
「・・・・・・」
「アグリー、早くパートナーを見つけなさい
人間なんかではなく同じヴァンパイアのパートナーを
そうすれば、あなたは空腹に悩まされることは
なくなります」
「・・・・・・ダメだよ
私が好きなのは、ベッロ様だもん
他の人となんて考えられない!!」
「では、あなたはあの方をヴァンパイアにしてしまう
おつもりですか?」
「それは・・・・・・」
「・・・・・・もうすぐ夜が明けます
今日のところは帰りましょう、ゆっくり考えなさい」
「・・・・・・」
スレイヤーから真実を聞かされてから一週間が過ぎた
私は今日も空腹感に苛まれている
ベッロ様に会いたい・・・・・・
そして私はベッロ様を一目見ようと
焼け付くような日差しに耐えながらベッロ様の家を
目指したのだ
着いた・・・・・・
ベッロ様の家に辿り着いた瞬間
私は意識が途切れてしまったのである
【第六話】へつづく




