【第一話】ダンピール
一般的にヴァンパイアは、綺麗でかっこよくてゴシックなファッションを好むと言われている。でも、私の容姿はとても醜い。ファッションもエスニックスタイルが好きだ。
ヴァンパイアは鏡を嫌うと思っていませんか?嫌いではないですよ。映らないだけで。
だけど、私は鏡に映ってしまうんです。ただ、鏡を見たことがないだけで。だから、私は自分の顔を見たことがない。
あまりにも、両親に"ブス"だの"デブ"だの言われ続けたもんだから鏡で自分の顔を見る勇気ないのだ。
でも"ちょっと太ってるかなぁ"という自覚はある。
ズボンの上に、お肉が乗っかってるし、座ると乗っかったお肉でパンツが見えないし。それに、最近は膝も痛くなってきたし。
いくら不死身のヴァンパイアでも痛いものは痛いのだ。
「容姿が悪いなら愛嬌だけでも身につけなさい。あなた、全然笑わないんだから。」
「笑うどころか"喜怒哀楽"が伝わってこない。」
そんなこと言われても仕方ないじゃない。自覚がないんだもの。
こんな毎日、本当につまらない。
そんな私の名前は“アグリー・グラトニー”
今年18歳のダンピールである。
ダンピールとは、ヴァンパイアと人間のハーフのことだ。私の場合は、パパがヴァンパイアでママが人間である。
ダンピールは通常ゼリー状で産まれ、大抵は死んでしまうらしい。でも、私は生き残った。そしてヴァンパイアを倒せるほどの力を与えられたのだ。
この強力な力のせいで「ヴァンパイア・ハンターになりませんか?」という勧誘がよくあるが、私は争うことが嫌いなので丁重にお断りしている。
何より人間でもヴァンパイアでもない私を、人間たちが嫌っていることを知っていたから・・・
だからと言ってヴァンパイアに好かれているわけでもない。
14歳の頃。初めて好きな男の子ができた。もちろん、相手はヴァンパイアである。私は勇気を出して告白し付き合うことができた。
初めてできた彼氏の存在にウキウキしながら歩いていた。そして、私は聞いてしまったのだ。「怖いから仕方なく付き合った」と。
その時はさすがに殺意が芽生えたけれど、彼の気持ちもわからなくもなかったので「好きな人ができた」と別れを告げて身を引いた。こうして、私の初恋は終わったのだ。それ以来、私は二度と恋はしないと誓った。
話が逸れてしまったけれど、ヴァンパイアは何かしらの能力が備わっている。もちろん、こんな私にだって不思議な能力は備わっている。
頭の中で欲しいものを思い浮かべると実際にそれが出てくるというものだ。本当に不思議なことに出てくるものは食べ物と飲み物限定である。
ヴァンパイアの食事と言えば人間の生き血だということは常識ですが、私は血があまり好きではない。もちろん、味はおいしいよ!でも、なんか可哀想になってしまうのだ。
そんな顔をさせてしまうなら私はレバーを食べる
飲み物は鉄分が含まれたプルーンジュースで十分だ
これで貧血にならないかと言われればそうでもないんだけれど。私は、それくらい人間が好きなのだ。
【第二話】へつづく
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