4話 衝撃の腕前
最近お気に入りの作家さんたちがどんどん書籍化していきます。
読む側としては嬉しい限りです。
シオンとともに部屋に戻ると早速道具を広げる。はいっていたのはシオンより少し少ないぐらいの道具だった。
本のほうも見てみたが最初のほうに書かれていたのはシオンに教えてもらったことと同じだった。
「早速始めましょうか。何でもいいので草を出してください」
俺は残っていた2種類の草を出すと1つをすり鉢の中に入れてペースト状にしていく。
「最初はきれいなペースト状にするようにこころがけて下さい。スピードより質ですよ」
一生懸命草を潰していると草はだんだん紫色になって滑らかなペースト状になっていく。紫!?
「シオンさん!紫色になってきてるんですけど!?」
「大丈夫なんでそのままやっててください~」
ぜんぜん変わらない笑顔で声をかけてくるし、本当に大丈夫なんだろう。
ある程度ペースト状になったらティーパックの様な袋に入れてお湯につける。
「シオンさん!お湯がドロッとしてきてボコボコ泡が出てるんですけど本当に大丈夫なんですか?」
中身は魔女が大鍋を混ぜている中身とそっくりだ。紫色で泡が出ているのはなんとも不気味で禍々しい。
「大丈夫ですよ。そろそろ袋を出しましょうか」
一応袋を出して、容器に移して完成となるが黒に近い紫色でドロッとしている液体は飲む気になれない。シオンさんが作ったのはいかにもポーションって感じだったのに、なぜ…
「これが私が作ったポーションです」
シオンさんが先ほど自分で作ったポーションの説明欄を見せてくれる。
ポーションLv1
効果の低い薬草を使い簡単に仕上げたポーション。
使用者のHPを少量回復する。
なんとも分かりやすい説明だった。
「同じLv1でも造る人によって回復量が変わります。珍しいですがLv2より回復量が多いLv1のポーションもありますよ。私のLv1ポーションで大体Lv1プレイヤーのHPを1~2割回復させます」
なるほどな。で、俺が作ったポーションはというと…
ポーションLv0
へたくそが作ったポーション。毒薬草を使っているため中身が恐ろしいことになっている。
使用者のHPを10回復する。9割の確立で毒状態になる。
「ざけんな!」
思わず怒りとともに投げ捨てそうになった。9割で毒って何だよ!しかも回復量が10って何だよ!
このゲームではHPを数字で確認することはできない。でも、ネットに薬草をそのまま食べた人の検証動画が載っていたのを俺は見たことがある。薬草はHPを5回復するがLv1プレイヤーのHPゲージを1ドット回復させるだけだった。単純計算で俺が作ったポーションは2ドット回復させることになる。それで毒になるのならどう考えてもHPは減るだけだ。
「落ち着いてください。回復量は何度も作っていればあがります。それに今では簡単な毒抜きもできますし、もう少し必要な道具を集めれば完全に毒を無くすこともできます」
「でも、へたくそって…」
「それは…気にしないで下さい」
シオンさんの同情する目が妙につらい。それでも俺は残り1つの草を手に取り、ポーションを作ることにする。
先ほどと同じように丁寧にペースト状にしていく。
「おっと」
力がはいりすぎ手しまったのか中身が少し飛び散ってしまう。シオンさんに目で大丈夫か確認すると無言でうなずいてくれたので手に飛び散った薬草を拭き、また潰す作業に戻る。
「ん?」
なんだか手に力がはいらないような気がする。疲れたり、腕がしびれたりしてしまったのだろうか。
それでも何とか潰していき、袋に移してお湯につける。出来上がったのはシオンさんの作ったものと比べて少し明るい黄緑色のポーションだった。
見た感じ普通のポーションだ。多少の色の違いは効果の差か使った薬草の違いだろう。
ポーションLv0
へたくそが作ったポーション。麻痺薬草を使っているためもはやポーションではなく毒
使用者のHPを10回復させる。9割の確立で麻痺毒になる。
またもや投げ捨てそうになった。使っている薬草が悪いのかと思いシオンに聞いてみるが、言い難そうにしながら普通はそこまでの毒は付かないことを教えてくれた。ついて2~3割、高くても4割だそうだ。
俺の一体何が間違ってるってんだ。シオンからも特に悪いところを指摘されたわけでもないのに。
そんなことを思う俺の目から一つ汗がこぼれた。
読んでいただきありがとうございました。
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