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5@都市ロスペリエ

 空に見える太陽らしき物が段々と傾いてきた頃、ようやく街にたどり着いた。

 この街の名前はロスペリエという名前で、王国内でも二番目に大きい都市らしい。


「シーナ、冒険者ギルドの場所ってわかる?」


 隣を歩くシーナに聞いてみる。

 なんでも、シーナが住んでいた村はここロスペリエと近いらしく、何度か来たことがあるそうだ。

 この辺りに広がる中世のヨーロッパ風の街並みには興味があったりするけれど、今はその景色を楽しんでいる時間はほとんどない。

 なぜなら、ボク達は今無一文であり、このままでは今夜野宿することになってしまう。

 野宿なんて危険なことはできない。今はボクも女だしね。


 ということで、すぐにお金が手に入る方法はないかな? とシーナに尋ねたところ、冒険者がいいと思います。と教えてくれたのでこうなっている。


「はい、このまま大通りを進んでいけばすぐに着くと思います」

「ほむほむ、じゃあ行こっか」

「はい」

 ボクとシーナは冒険者ギルドを目指して歩き出す。

 

 そうそう、ボクはシーナの主になった。

 街道を歩いているときに突然シーナにボクの奴隷にしてくださいって言われたときは驚いたよ。

 それで少しずつどういうことか聞いて奴隷の制度についていくつかわかったことがある。

 まず、シーナが最初に言っていた奴隷の種類。これは3種類あって戦闘奴隷、労働奴隷、そして愛玩奴隷。

 奴隷商人などに捕まったり売られたりされ、奴隷契約の首輪をつけられると、着けられた人は奴隷となる。

 この時首輪をつける時にどの奴隷にするか設定するらしい。

 この時に愛玩奴隷と設定されてしまうと、一生愛玩奴隷のままであり、戦闘奴隷や労働奴隷の様に解放されたりなどすることはない。

 そして、愛玩奴隷は主人となる者と本契約を行うと、その契約は誰にも破棄することはできず、主人が死ぬと奴隷も一緒に死ぬらしい。要するに愛玩奴隷は一度本契約をするとその人専用奴隷になるということ。主人がもういらないからと言って売ることなどもできないし、他の人がその奴隷を手に入れようと誘拐などしても、主人がいらないからあげると言ってもその奴隷の主人を変えることはできないそうだ。

 その愛玩奴隷にされたシーナは、ボクに主人になって欲しいと言ってきたのだ。


 おそらく、いずれ誰かの愛玩奴隷となるのなら、助けてくれたボクの奴隷になったほうがいいだろうと判断したんじゃないかな?

 ボクが同性ということもポイントになってるんじゃないかなと思ってる。


「ユーリ様、ここが冒険者ギルドです」


 溢れかえる人ごみの中を進んでいるとシーナから声がかかる。

 シーナの方へ顔を向け、シーナの見ている先に体を向けると、そこには周りに並ぶ建物よりも一際大きい建物が立っており、木でできた両開きの扉が目に入る。


 ここが冒険者ギルドかぁ……と見ているうちにヤンキー風の男が両開きの扉を開いて中に入って行く。


 あれだよね、結構ボク異世界にトリップとかの小説読んだことあるけれど、冒険者ギルドとかに行くとさっき入っていったような、がらの悪い奴に絡まれたりする場面結構見たんだよね。

 特に、冒険者ギルドに登録に行った主人公が女、子供とかの場合は確率UPだね。

 うーん……、ボク両方当てはまるんだけど、それに絶対絡まれそうな予感。なんたって美少女二人だもの。

 ボクの容姿はボクとマコトの自信作だし、シーナはボクが認めた美少女である。

 そんな可愛い子が二人だけでいたら絡まれるのも仕方がないかもしれない。

 まぁいいや、絡まれたらやり返せばいいだけだしね。


「いこっか」

「はい」


 ボクが扉を押して開き、中に入るとシーナがボクの後ろを離れずついてくる。

 扉を通り抜け、冒険者ギルドの風景が目に入る。

 フロアの中央にたくさんの木製のテーブルと椅子が置かれており、壁際にはたくさんの紙が10個くらいのボードにわけられて貼られている。そして中央のテーブルなどに座ってお酒を飲みながら騒いでいる人たちの向こう側、つまり奥には数人の列が出来ていることから受付だと判断する。そんな風景が広がっていた。


 そして、ボクたちが入ったときに何人かがこちらに振り向き、それに釣られるように結構な数の人がこっちに振り向いていた。

 まぁほとんどの人が一目見るだけで、その後振り向く前にしていたことに戻っていたのだが、何人かはジーっとこっちを見ていた。

 うわぁ、気持ち悪っ、気持ち悪い視線感じるんだけどっ!


「シーナ、あんまり時間ないし早く登録して依頼を受けよう」

「は、はい」

 時間がないというのも本当だけど、本音は気持ち悪い視線が嫌だったから。


 ボクがそう言うと、シーナもあまりここに居たくないというか視線がいやなのかボクにピタッとくっついてくる。

 

 受付にたどり着くと、並んでいた列はなくなっており、並ぶ必要がなくなっていた。

 

「こんばんわ、本日はご用件はなんでしょうか?」

「冒険者登録をしにきました」


 受付のお姉さんの髪は水色のストレートで背中あたりまで伸びており、顔も整っておりとても優しそうな雰囲気をしており、この冒険者ギルドの看板なのではないだろうか、人気も高そうだ。


「ではこちらの書類にご記入ください。必須記入は名前のみになります。代筆が必要であれば言ってくださいね」


 受付のお姉さんはそう言うとボクの前にだけ一枚の登録用紙を渡してきた。

 うーん、奴隷は普通冒険者登録はしないのかな?

 今のシーナはボロボロでところどころ破けていてそこから肌が見えるような服を着ているため、奴隷と判断されたんだと思う。

 

「あの、二人登録したいのですが」

「失礼いたしました」


 お姉さんはそう言うともう一枚登録用紙を渡してくる。

 ボクはそれを受け取り、シーナに渡し、ボクは自分の登録用紙に記入を始める。


 記入内容は名前、職業………って二つだけ?!

 まぁいいや、名前はユーリ、職業は……なんだろう、魔法使いでいいや。


 書き終わったので、用紙をお姉さんに渡す。

 

 シーナのほうもすぐに終わり、お姉さんに渡した。


 ボク達の登録用紙を受け取ったお姉さんは一度奥の方へ消えていき、しばらくして戻ってきた。


「冒険者の説明は聞かれますか?」

「はい」


 多分ここら辺も今まで読んできた小説と似たような感じだろうし聞かなくてもいいかなぁ、と思ったんだけど、もし違うところがあったりした場合は困るので聞いておく。


「まず、冒険者にはランクが与えられます。ランクは下からFからE、D、C、B、A、Sと上がって行き、冒険者のランクアップはギルドが判断します。冒険者が受けられる依頼にランクの制限はありません。

 冒険者はチームを組んで依頼を受けることもできます。チームは最大で6人まで同時に組むことができます。ランクD以下の冒険者は一ヶ月間一度も依頼を達成されていない場合、ワンランクダウンとなります。最低ランクであるFランクの状態で一ヶ月間一度も依頼が達成されていない場合や、その他でワンランクダウンなどの処置を受けた場合は冒険者登録削除となり、二度と冒険者登録を行うことはできません。もし、事情があって依頼を達成できない等の場合はギルドに連絡して頂ければ、ワンランクダウンにはなりません」

 

 結構長い文を言い切ったお姉さんは息切れすらしておらず、涼しい顔をしていた。


 うんうん、大体思っていた通りだった。

 

 お姉さんが説明を終えると、受付の奥の方から赤い髪のお姉さんがやってきて何かを渡していた。

 赤い髪のお姉さんはそれを渡し終えるとすぐに奥に消えていった。


「こちらがギルドカードとなります。ギルドカードに血を垂らしますと認証が完了し、冒険者登録は完了となります」


 ボクとシーナはお姉さんからそれを受け取って、受付に置いてある針を借りて指に刺す。

 うっ、こういうチクッとした痛みは苦手だなぁ……。


 ギルドカードに血を垂らすと、ギルドカードは血を吸収する。

 シーナの方を見てみると、シーナも血を垂らし終わったようだ。


「これで登録は完了です」

 ボク達が垂らし終わったのを確認してお姉さんはそう言う。

 

「あの、チームを組みたいんですが」

「ではこちらの書類に記入をお願いします」


 お姉さんから用紙を受け取り記入を始める。


 まずは、チーム名かぁ……。


「おい、嬢ちゃん達、チームなんて組まないで俺たちのところに来いよ。手取足取り腰取り、たっぷりと教育してやんよ」


 突然後ろから話しかけられ、振り返ると大して強くは見えないガラの悪い男がニヤニヤしながら立っていた。


 当然そんなチームに入るわけがない。


「遠慮します」

 

 こう言うのはきっぱり断ったほうがいいのだ。歯切れの悪い断り方やごまかしなどをしていたらいつまでたっても寄ってくる。


 ボクは用紙の記入を再開する、というかチーム名を考えはじめる。

 うーん、何がいいかなぁ……。


「シーナはどんなチーム名がいいと思う?」


「おいっ!! 無視してんじゃねぇぞ! せっかくDランクの俺がチームに誘ってやってんだ、さっさと入りやがれ!」


 Dランクって……、確か下から3番目だったような……。

 まぁ、いいや、こういうトラブルの時どうなるのかお姉さんに聞いておこう。


「お姉さん、こういう絡まれたときに相手ボコボコにしたらボクたちに何かある? 罰金とかワンランクダウンとか」

「い、いえ、絡まれたときは何もありません」

「そうなんだ」

 

 流石に殺したりはいけないよね。


「おいガキ!」

 

 そう言うと男はボクの肩を掴んでくる。

 こういう奴らは自分の思い通りにいかないとすぐに力づくでやろうとしてくる。

 なので前もってお姉さんに聞いておいたのだ。


 ボコっても大丈夫だよね? と。


 男が肩を掴んできた瞬間に、ボクは『氷結』を無詠唱で発動させる。

「ねぇ、ボク達は忙しいの、邪魔しないでよ。邪魔するっていうのなら覚悟してよね」

「なにを、っ!? な、な……」


 魔法は結構応用が効く。だから今回は『氷結』を足元からゆっくり凍るように設定し発動させた。


「ま、魔法か!! お、おい今すぐ氷をとかしやがれ!!」


 ここでやめたらまた絡んできそうだし、もうすこしやっておこう。


「うん、わかった。『火球』」


 『火球』を詠唱破棄で男の頭上に発動させる。


「お、おい! 助けてくれ! 俺がわるかった!!」

「えー、せっかく氷とかしてあげようとしてたのにー」


 このくらいで十分かな。

 そう思い、二つの魔法をリリースする。

 ちなみにリリースも無詠唱ですることも可能だ。


 火と氷のサンドイッチから解放された男は床に座り込む。

「二度とボク達に話しかけてこないでね」

 

 ボクがそう言うと、いつの間にか周りに人ごみができており、その中から二人の男が出てきて床に座り込んだ男を連れて出て行った。


 さて、チーム名考えないと。

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