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1@VRMMO『AnotherWorld』

 VRが一般家庭にも普及し、VRによる仮想世界内にも街ができ、仮想現実内でも買い物ができるようになり、他にも仮想現実内でいろいろなスポーツの大会等も開かれるようになっている。

 今の技術ならば、仮想現実内でのアバターを自分で自由に設定する事など簡単なのだが、犯罪防止やその他いろいろの理由からアバターは設定できず、現実世界での本来の容姿をそのまま使うことになっている。


 そして、VRといえばVRMMO等のVRを使ったオンラインゲームを思い浮かべる人が多いだろう。


 しかし、VRが発表されて今現在まで8年間、VRを使ったゲームは出てきていない。


 それは、人間となんら変わりのないAIを作ることが難しかったから。他にもいくつか問題点があったが、一番の問題点といえばAIだった。



 VRでない、普通のゲームではNPCにはAIは使われていなかったし、AIが無くても元々用意されていた言葉を画面に表示し、決められた行動をすればよかった。

 しかし、VRは現実と何ら変わりのないものである。そんなところにそんなNPCを配置しても全然現実らしくはならない。

 そのため、企業はAIを研究し、開発時に設定された大まかな設定(性格や重要な役目等)だけをし、NPCはその中で自分で考え、自分で行動させることを目標とした。


 VR発表から8年が経った今、ようやく史上初のVRMMO『AnotherWorld』が発表され、βテスト等は行わず、今日からサービス開始される。


そして、今俺はAWの初期設定をしていた。


VRで仮想現実に行くために必要な機器を装着し、機器の電源を入れ、仮想現実へ向かう。

 意識は仮想現実内の何もない真っ白な空間に送られる。ここは仮想現実に入った時に一番最初に送られる場所であり、ここから仮想現実内でどこに移動するかを選択したりする。

 俺はメニューを開き、目の前に現れたウィンドウからAWを選ぶ。


 すると、景色は真っ白な世界から一転して真っ暗な世界に切り替わり、アナウンスが聞こえてくる。


『ようこそ、AnotherWorldへ。これから初期設定を行います』


 聞き取りやすい速さではっきりと話すお姉さん風の声。


『まずは容姿の設定から行っていきます。容姿データを使用しますか?』


 そう、今までVRではいろいろな理由から現実世界での容姿しか使えなかったのだが、今回はゲームということもあり、容姿の設定は自由にできるようになっていた。

 そして、容姿は今日のサービス開始から一週間前の日から事前に容姿の設定を行うことができた。

 これは、容姿の設定にはたくさんの時間をかけたいだろう、しかし初期設定の容姿設定でそんなに時間を使うとゲームをはじめるのが遅くなってしまう、それならということで事前に容姿だけ設定ができるようになっていた。


「はい」


 そして、俺も当然事前に容姿の設定を行っていた。

 親友と語りながら完成させた俺の自信作である。

 それを使わないわけがない。


 俺が容姿データを使うと言った瞬間、すぐに俺の容姿は現実の容姿から作成した自信作の容姿に作り替えられ、目の前にウィンドウが開き今現在の自分の容姿が映し出される。


 その容姿の年齢の設定(作成時のイメージ設定)は俺と同年齢であり、平均よりも少し低い身長。そして腰あたりまである金髪に紅い瞳。胸は平均よりも少し大きめである。

 そう、目の前に映し出されたアバターの性別は女だ。

 

 言い忘れていたが、別に俺が一人称が俺の俺っ娘というわけではない。現実での性別は男だ。

 

 AWのアバターの性別が女にしたのには理由がある。親友と容姿設定をどうするか語り合っていたときのことだ。

 突然親友がある一言を言い放った。


「男が無双するよりも、可愛い子が無双したほうがいいよな」と。


 VR前のオンラインゲームなどでも女性キャラを使っていた俺は納得し、カラオケで歌うとき男の声と女の声を使い分けて歌っていた俺は女性アバターを作成した。


 とまぁ、そんな理由から俺は女性アバターを使うことにした。一応言っておく、俺はロリコンではない!


 こんな簡単に異性のアバターが作れるならVR内でネカマやネナベをする人が結構出てくるのでは、と思うだろう。しかし、恐らく殆どそんなことをしようという人は出てこないはずである。


 なぜなら、それには容姿設定に一つの特徴があったからだ。

 それは、声は現実での声が使用されるというもの。


 なので、男が容姿を女性にしても大抵の人は声は男のままであり、逆に女が容姿を男にしても声は女のままである。


 そのため、異性のアバターを作る人はまずいないだろう。俺はショタ声からロリ声、普通の女性の声、渋い声などいろんな声を出せるので問題ない。

 一応既に親友とどの声がいいかなどの話し合いも済んでおり、準備は完璧だ。


 まぁ、俺の用に異性の声を出せたりする人なら異性のアバターも使っても大丈夫だろう。もしくは、無口で通すとか。


 そういうわけで、俺はAWでネカマになろうと思います。



『次は名前の設定をお願いします』


 名前も一応既に決まっている。


「カタカナでユーリで」


 この名前にした理由を言うならば、響きがいいから。

 確か思いついたのは容姿アバターの完成直前にそのアバターを見たときだったはず。


『では次に種族の設定を行います。種族をランダム決定にしますと、極稀に通常選択では表示されないレアな種族が選ばれることがあります』


 アナウンスの声が聞こえると、新しくウィンドウが一つ目の前に現れ、人間をはじめとしたエルフ、ドワーフ、妖精、竜人、魔人、獣人猫、獣人犬その他多数がずらりと並んでおり、その一番下にはランダム決定があった。


 ここは、当然これでしょ。


 そして俺はランダム決定を選択した。


『ランダム決定が選択されました。これで本当によろしいですか?』

「はい」

 

 確認のアナウンスに返答する。

 すると、種族選択のウィンドウの前に新しく小さなウィンドウが現れた。

 そのウィンドウには『レア種族、サキュバスに決定しました』と出ており、そのしたにはサキュバスについての説明があり、その下に物理は竜人並みに、魔法はエルフよりも秀でている、と書かれていた。さらに一番下にはレア種族、女性専用種族と書かれてあった。


 おぉー、確かにレア出ればいいなぁと思ってランダムにしたけれど、まさか本当にレア種族が出るとは思ってなかった。



 これは面白い日々が送れそうだ。


 種族が決まり初期設定は終わると、目の前の足元に光の輪が現れ、そこに立つと次の瞬間には始まりの都ブルーミシアにワープしていた。




 AWを初めて一週間が経ち、プレイヤーのLvも上がり、一番最初の職業、見習いから卒業し自分に合う職業を選んだり、武器やスキルの組み合わせなども個性が出てきた頃だ。

 

 俺も……いまはAW内だからボクと言っておこう。ボクもこの一週間プレイしてきたので戦闘にも慣れてきた。

 

「雷よ、風よ、一条の光となり、見えなき刃となり、敵を貫け、切り刻め『雷弾』『風刃』」


 二つの魔法を同時に詠唱し同時に発動させる。

 対象は今私の目の前にいるオーガ。

 『雷弾』がオーガの腹を貫き、『風刃』がオーガの体の全体を切り刻み、オーガのHPは0になって地に崩れ落ちる。


「いつみてもすげぇな、二重詠唱とかよく思いついたな。てか思いついても普通はできないけどな」


 そう、今の戦いの時から隣にはあの容姿を一緒に作り上げた親友が見ていた。名前は赤倉真あかくらしん、プレイヤーネームはマコト、種族はハイドラゴニアとかいうレア種族で竜人の上位の種族とのこと。

 マコトのアバターは厨二風味たっぷりの銀髪で身長も185程度のイケメン。あ、瞳もオッドアイで左が翠、右が蒼。

 そう、マコトは高校生になっても未だに少し厨二から卒業できていない子である。


 そしてマコトが言った二重詠唱の方法は二つの魔法のイメージを完璧に持っていればできる。ほかには詠唱を口に出さず心の中だけで詠唱したり、魔法名だけで発動させたり、全く詠唱せずに発動させる無詠唱などなど。

 口に出さずに心の中だけで詠唱するのは知性を持つ相手と戦う時に便利だ。普通に唱えれば詠唱から何の魔法を使うかがわかり、対処しやすくなるのだが、この方法だと相手に何の魔法を使うのかバレないというメリットがある。もちろんデメリットもあり、口に出さない分、イメージしにくくなり、発動が難しいというものと、威力が普通に唱えた場合よりも少し落ちるというもの。


 無詠唱はすぐに発動できるというメリットがあるが、心の中で詠唱するよりも更にイメージが難しく、威力も落ちる。

 

 魔法名だけで発動させるのは心の中で詠唱する方法と、無詠唱の間と思ってくれればいい。名前をつけるならば詠唱破棄かな。


 つまり、魔法を使うにしてもいろんな方法があって奥が深いということだ。


 

「おっと、もうこんな時間か、明日も部活あるしそろそろ落ちるわ」

 

 落ちる、というのはログアウトするという意味であり、オンラインゲームをしている人ならばほとんどの人が知っているだろう。

 

「はいよー、お疲れ様」


 マコトは剣道部に所属していて、一年生のうちからレギュラー入りをして全国大会にも出場している。現実でもイケメンであり、よく告白されるところを見たことがあるのだが、全て断っていた。その中にはすごく可愛い子もいたというのに……もったいないことをしやがって馬鹿め。


 まぁそれはいいとして、ボクもそろそろログアウトしますか。





 携帯の着信音が流れる。

「……ん、ん~」

 目をつぶったまま、ベッドの隣にある台に向かって手を伸ばし、うるさい携帯を探る。

 すぐに携帯を見つけ、うっすらと目を開け、携帯に表示されている掛けてきた相手の名前と現在時刻を確認する。

 こんな朝早くから掛けてくるなよ真……。


 半分眠った状態で電話に出る。


『おい、優! やべぇぞ! 今すぐテレビつけてみろ。どこも同じ緊急ニュースやってる』


6/11 ユーリの時の一人称を私からボクに変更

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