12星座別恋愛小説 ~さそり座~
これはあくまで私の主観で書いたさそり座像ですので
この小説を読んで気を悪くしたさそり座の方がおられましたらご容赦下さい。
♏10月24日~11月22日生まれ Scorpius♏
*情熱的
*執念深い
*飽くことなき探究心
*閉鎖的
*ミステリアス
「その彼とは相性がすこぶる悪いという結果よ、わるいことは言わないから今すぐ別れなさい。」
「先生がそうおっしゃるんなら・・・・・ええ、別れますわ。反町先生には毎回お世話に
なっていますもの。」
品の良さそうな女性、実際有名ブランドの服を着て指や耳には宝石とおぼしき
高級な装飾品を身に着けている三十路近くの女が良く当たると評判の占い師に
苦言を呈され従順にそれに応えていた。
占い師の顔は黒いヴェールに下半分を隠されはっきりとは見えないが
人の内面を射抜くかのような鋭い光を帯びた目がとても印象的な若い女性だ。
世間でも彼女、反町紗季の名声が上がってきたのはつい最近の事である。
「次の方どうぞ。」
先程の女性が退出した黒幕がかかった扉から次の迷い人が入り込んできた。
占い師という職業のため大半の客は女性が占めている、だが紗季の眼前にいるのは
少数派である男性―――おそらくは妻か彼女にでも勧められたのであろう
サラリーマンかなんかが興味本位で寄ったに相違ないであろう―――が向かいの椅子に腰かけていた。
「やっぱり男性客は珍しいんですか。」
紗季は職業柄人の観察には長けている、男性は四十代にさしかかっており
中小企業でそれなりの位置にいる人間とみてとれる。
口角や目じりは下がっており優しそうな印象を受けた、その目尻がさらに下がり
少し困惑したように彼女に問うてきた。
「あら、私そんなに驚いた顔していたかしら。」
「眉間にしわ、寄ってますよ。ミス・ソリマチ。」
彼に指摘されようやく自分の眉と眉の間隔が短くなっていることに気付き
あえて人差し指でそこをなぞり直す。
と、その白く細い指をきゅっと軽く包み込むかのように男の左手がにぎった。
「ずいぶんお綺麗なお手をしていますね、やはり職業柄こういうことも気になさるんですか。」
「それで、今日はどんなことをお尋ねにいらっしゃったの。」
「あれ?スルーされちゃったのかな。」
「奥様がいるのに若い女に手を出すなんてことざらにやっているようにお見受けしましたので。」
「私、妻がいるなんて言いましたっけ?さすが占い師、心でも読んだのかな。」
「そんなことしなくても左手を見れば結婚していることぐらい分かります。
あと女性の手を掴むのが随分と慣れているので。」
「ありゃ、私としたことが指輪を外すの忘れてた。まぁねこんな歳だけど
顔が良ければ関係ないみたい、あと長年磨かれたテクとかね。」
男は何もためらうことなく認めた。
占い師としてコールドリーディングは自身の権威を示すために必要な一種の業だ。
であるからもともと観察眼に優れていて人間観察が趣味の紗季にはもってこいの職業なのである。
「今日はお仕事の後、時間空いてます?よろしければお食事などご一緒にどうですか。」
「お時間あと十分です、延長はできませんので。あなたの後にも数えきれないほどの
お客様をお待たせしているんです。」
男の誘いに乗ることなくただ営業スマイルで素っ気なく応える紗季が
淡々とタロットカードを出したその手を再び男が握る、さっきよりきつく熱く。
「十分もあれば女性一人口説くのに充分さ。」
「おもしろくもなんともないシャレですこと。」
「そう冷たく言う割には笑っているよね。」
指でそっと触れて自分の口元が綻んでいることにはじめて気づいた、
ナンパには何度も遭遇したことがあるがこんなタイプの男は初めてで何だか調子が狂う。
いつもなら冷たく突き放せば相手がすぐに諦めてくれるのだがいかんせん今日は分が悪い。
「今は営業時間ですのでこういったことは控えてくださらないと。」
「ちゃんと相談時間分の料金は払うわけだし、あとはこっちの好きにしていいでしょ。」
真っ直ぐ紗季を見据える瞳はとろりと甘い蜜のような色をしている、
これで今まで何人の女を落としてきたのだろうか、そして自分もその中の一人に
なりつつあることを自覚していた。
「それより私の悩み、聞いてくれないんですか。」
「聞きますとも、それが私の仕事ですから。で、どういったお悩みでしょうか。」
「今夜限りの僕の恋人は一体何故私に振り向いてくれないのだろうか。」
「それは私の占いをするよりもご自身の方でお答えが出ているんではないですか。」
「んー、ひとつ思い当たることと言えば私は女にすぐ手を出すこと。
これくらいしか思い浮かばないんだよね。」
「まさしくそれですわ。」
「けど私はたった数瞬でも数十年でも愛しい人といる時間はその人の事だけを
考え見て思っているんだ。だから例え不倫相手でも妻でも私に
愛された女性は皆幸せと言うわけなのさ。」
彼の持論は突拍子もない実に奇抜で普通の人なら呆れるであろうものだ。
ただその持論を語っている相手が紗季であったというのが彼にとってのラッキーであった。
なにせ彼女の考えも男のそれに非常に似通っていたためである、紗季はクスリと笑い
先ほどまでの態度をガラリと変えて甘い微笑をたたえてみせた。
「今日はついてますわよ、なにせ飛びっきりの美女と出逢えるんですもの。」
「ほほう。いきなりついてますな、ではそのとびっきりの美女とはどこに行けば出逢えるのかな。」
「午後九時にこの下のバーに行けば会えるとそう占いには出ておりますわ。三谷俊彦さん。」
久々にこんな胸の高鳴りを覚えた紗季はわざと時間を遅らせてバーに到着した、
そうした方が余計男に自分と言う女を特別だと思わせるためだ。
店内に入ると意中の人物はカウンターにいた、背中からも溢れ出る色気のオーラが
また紗季をドクリとさせる。
後ろからそっと近づき背中をつつくと彼は振り返り少し困ったように笑った。
「待ちくたびれた?ならさっさと帰ってもよかったのよ?」
「まさか君みたいな女性を待つ時間はまさに至福の時さ。」
紳士な返答をする彼に紗季はいつにもまして積極的な態度に出た、
そしてその行動が決定的なものとなった。
「ねぇ、下の名前で呼んでいい?」
「えっ・・・。」
「こんな時ぐらい名前で呼ばないと盛り上がらないわよ。ねっ、いいでしょ。」
彼女の悪戯っぽいそれでいて拒否することを拒ませる双眸が彼を直撃する。
「どうぞ、おきの召すままに。女王様。」
「俊彦。」
紗季は熱っぽくただ呼んでみる、しかし俊彦を煽るのにはそれだけで十分だった。
「部屋予約してるんだけど、どう?夜景が綺麗で有名なホテルなんだよ。」
かくして紗季と俊彦は互いのセオリーに基づいて行動した結果結ばれ
その夜、恋人たちは熱く激しくお互いを求めあった、まるで前から愛し合っている二人かのように。
だけど、目が覚めると俊彦は、私の恋人はここにいたという痕跡を跡形もなく消して
置手紙の一つもなく自分の目の前から消えていたのだ。
眠る前にはすぐ横で素肌越しに感じていた体温が今はベッドのぬくもりにすら感じられない。
それをまるで自分はおいてきぼりをくらった犬、もしくは捨て猫と重なった。
彼と会っ後の自分がひどく弱っているように心が刃物で穿たれたような
なんともいえない気分に紗季はとても困惑した。
こんな気持ちになりたくて彼と一晩ともにしたわけではないのに、どうしてこんな・・・。
がらんどうな心の隙間にふつふつと怒りの情念が埋まっていくのが分かった。
一晩だけの恋であっても一夜限りの恋人であってもそこに深い情熱があれば
問題ないというのが紗季の信条なのだ、だがこの男は今晩だけという短い時間ではあるが
仮にも自分の彼氏であったのにも関わらずひどい扱いをしたのだ。
そんなもの許せずはずがない。
故に彼女はある手段をもって男に報復することに決めた。
目には目を、歯には歯を。侮辱には屈辱を。
後半グダグダ感ハンパないっす・・・