第三章『告白』
分からない―何故、春奈先輩は私にあんなことを尋ねたのだろう?
春奈先輩は蓮会長のことをどう思ってるのだろう?
「す、好きです」
そんな声が聞こえてきたので私は戸惑った。
いったい、誰が誰に告白しているんだ?
好奇心に誘われ、私は中庭の方を見る。
「会長のことが好きなんです」
蓮会長に告白している―
「ごめん」
そう言って会長はあっさりと断ってしまった。
結構、可愛い子なのに。スタイルだって抜群だ。
「じゃあ、キスしてください。
キスしてくれたら、もう二度と会長に近づきませんから」
えっ―!!キ、キス!!
なんて大胆なことを言うんだ。
「馬鹿なこと言うな」
「お願いします」
私はその場を離れようと思っても足が動いてくれない。
見てはいけないんだ――
でも、自分の好奇心には勝てない。
「いい加減しろ!!」
「嫌っ」
女の子はそう言って、蓮会長に抱きついた。
私は見ていることしかできない。
会長は困ったような顔をしていた。
「俺はおまえの思っているような奴じゃない」
「でも…好き」
女の子は会長から離れようともしなかった。
そんな彼女を会長は無理矢理突き飛ばした。
「本当に俺を怒らせたようだな?
俺は優等生でもなんでもないんだよ!!
誰とも付き合わない、深く関わらない。
それが俺のモットーだ。
仲の良い友達なんていらない、彼女なんていらない。
おまえが好きだと言ったのは、俺の仮の姿だ。
本当の俺を知らないくせに―。消えろ、うざい」
女の子は会長の言葉に涙を流しながら、駆け足でその場を後にした。
会長が『消えろ、うざい!!』と発したことにびっくりした。
私は会長がそんなことを言うとは思ってなかった。
「おい、誰か居るのか?」
そう言って、会長はこっちにやって来る。
「あっ―星野。全部、聞いていたのか?」
「…はい」
「そうか」
会長はさびしい表情をした。
「私も会長が好きでした」
何を言っているんだ、私?それでも口が止まらない。
「でも、私もさっきの子と一緒で――
会長の仮の姿を好きだったのかもしれません。
あの女の子を傷付けるような言葉を、会長が言ったなんて信じられません。
だけど、そんな言葉を聞いた今でも、会長が好きなんです。
嫌いになんてなれない――」
そして、私は全力でその場から逃げた。
つに言ってしまった。
いずれかは告白しなければならないと、思っていた。
でも、こんな形で告白したくは無かった。
私は会長の何を見てたのだろう?
会長は裏表がある人だったのか――
なんで、会長……。入学式の日に見せてくれたあの笑顔も仮の姿だと言うのですか?
「おい、どうした?」
顔を上げると隼人が居た。
「好きな人に振られたんだよ…」
そう言った私の頭を隼人は撫でてくれた。
「そっか、そいつ見る目ないな」
そう言って彼は私の隣に座った。
「私、綾乃みたく可愛くないし。仕方ないよ」
「おまえは、可愛いよ」
「えっ?」
隼人の口からそんな言葉が聞けるとは思ってなかった。
「おまえは俺が守ってやる。寂しかったら、いつでも俺を頼れ。
俺はお前が好きだ」
顔が暑くなるのを感じた。
隼人、何言ってるの―?冗談きついし(汗
「嘘じゃないよ」
隼人はそう言って私を抱きしめた。
「ちっ」
二人の様子を影から見ていた蓮はおもわず舌打ちをした。
「星野、おまえには野村がぴったりだよ」
そう言って、連は苦笑をした。