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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。

Stars.

作者: 狭山
掲載日:2011/02/22

春沢宙夢。彼は何故この学校にいるのか分からないといわれる同級生である。

彼に関する噂は少なくなく、そして彼はその噂を否定も肯定もせず、さらりと流し飄々とこの学校に所属している。父親がどこかの学者先生だとか、よく海外に行ってるだとか、寧ろ実は父親に作られたアンドロイドで眼鏡からはビームが出る、だとか。

どれが本当かは知らないがとてつもない秀才で、本当は私立の進学校に行く予定だったことは事実らしい。そんな彼は、何故か偏差値も生徒も極普通な公立高校に居る。


そして、そんな同級生が、何故か俺の隣で天体望遠鏡を用意しているのだ。

何という超展開なんだ。しがない格闘技研究会の俺が何故そんな秀才の隣でホットコーヒーを飲んでいるのだろうか。


「ごめんね、付きあわせちゃったみたいで」

飲み物、コーヒーでよかった? と尋ねながら春沢は手馴れたように望遠鏡をセッティングしていく。

そして何故か俺は「…ああ、」なんて言いながらセッティングを進める春沢を眺める。


事の起こりは数分前。部活を終えて帰ろうとしていた時に担任である地学教師に呼び止められ「ちょっと屋上に行ってくれ」と半ば強引に屋上へと直行させられた。何でも、夜に学校に居る為には、生徒一人ではいけないらしい。委任状さえあれば、生徒二人以上が居れば夜の学校に居ることが許可される、とか。担任が早口でまくし立てる内容がよく分からないままに委任状と書かれた紙切れを渡され屋上に行けば其処に居たのは春沢だった。1年の時はクラスメイトだったが、ケンカか飯か女の子の事が頭の大半を占めてる俺となんて会話をするような相手ではなかったし、彼の周りにはガリ勉クンのような奴らが寄ってきていて近寄る気にもならなかった。

「なぁ、春沢」こんな機会なんてどうせ今日だけだと思い、ついつい口を開いてしまう。

「何? …ええと、ふゆ…?」

冬峰(トウミネ)

「…ごめん、冬峰くん……それで、どうかした? やっぱりまだ寒い?」

初夏でも日が暮れればまだまだ肌寒い。しかし、地元の人間ならこの程度の寒さはどうって事はない。ホットココアで暖を取る春沢はやはりどこか違う場所から来たのだろうと、思う。

「いや、それは大丈夫……なぁ、春沢。何でお前はこの学校を選んだんだ?」

俺は、家が近くて、丁度行けるような偏差値だったから。それだけだった。だけど、春沢は他の場所に行けた。寧ろ、そのほかの場所こそが春沢に相応しい場所だったのかもしれない。

「……キミも、それを聞くんだね」

「春沢にはもっと他に行ける場所があったんだろ。なら何でそっちに行かなかったんだよ、この学校に取り得なんて無いだろ…?」

天文部なんか、幽霊部員は居るらしいが、活動は春沢一人だし、バカ話して盛り上がるアホな奴らばかりそろってるし、教師だってやる気はない。

「俺は、この学校の良いところが見つけらんねえんだよ。昔からのダチが居るコト位しかさ」

「……そういう聞きかたした人は、冬峰くんがはじめてだよ」春沢は少し驚いたような声色で言う

「そりゃ、アレだろ。春沢の周りに居る奴がガリ勉クンばかりだから、小難しい事ばっかり聞いてくるんだろ?」俺は既に春沢に対して遠慮というものを忘れてしまっていた

「うーん、そういう事じゃないんだけど……そうだ、覗いてみて」

春沢は困ったように笑いながら、俺に望遠鏡を覗くようにと言う。指示され、素直に望遠鏡を覗けば其処には大きな月があった。

「うお、本当にデコボコしてる……すげえ!」

「でしょう?望遠鏡を使えば教科書みたいに見えるんだ」

すげえすげえ、とガキのように望遠鏡を覗いている俺の後ろで春沢は軽く笑っているように感じた。

「だから、おれはココに来たんだ。こんなに綺麗な星空、おれの居た場所じゃ見れないから」

「確かに、ココは田舎だからなぁ…教えてくれてありがとな」

「別に感謝されることはしてないよ。冬峰くんにはこうやって付き合ってもらってるから、お礼、かな」

そういってクスと笑う春沢を見てなるほど、と思ってしまった。いつも物静かな秀才という外見はただ、話す相手が居ないだけか、だなんて。もしも、これが春沢の素であるとしたら、これ以上嬉しいことはない。 ――待て、嬉しいって何だ。

「あのさ、冬峰くん、ってのやめて貰えるか? 君付けって何かむず痒くてさ」

「あ、ごめんね……ええと、なんて呼べばいいかな?」

「君付けでなければ、何でもいい。冬峰でも、大地でも」

「ええと、じゃぁ、冬峰で」「オッケ」「…あれ? そういえば何でおれのコト、知ってるの?」

おれ、名乗ってないよね? と言う春沢に有名なことを自覚していないのか、と脱力してしまった。

「春沢、有名人だもん。それに俺、去年同じクラスだったんだけど……ていうか、それなら何で俺の名字「冬」まで覚えてたんだ?」

「……ごめん、去年は何か論理がどうとか言う子達に囲まれてたって覚えしかない……ええと、秘密?」

「何だよそれ」思わず笑ってしまった。 そんな風に笑いあっていれば、春沢は望遠鏡を仕舞いはじめる。

「アレ? もう良いのか?」そんな俺の言葉に、春沢はうん、と答える「記録つける場所は全部付け終わったから」

俺と普通に会話しながら、記録を取ってたのかよ、とか思いつつ、秀才の底力を見せ付けられた気がした。


「あ、おれこっちだから」

「俺はあっちだ、じゃぁな」

家の近くのY字路で春沢と別れる。 別れ際に春沢は「ありがとね!」と再び俺に感謝を述べる。

「あ、何か困ったことがあったら俺に言えよな!」言ってから気づいた、何を言ってる、俺。「俺、一応ここら辺じゃ顔広いから、さ」言い訳のように、付け足した。

キョトンとしていた春沢は、俺に満面の笑みを見せつつ「ありがと!」と言って俺に背を向けて歩き始めた。


春沢の笑顔に動悸が激しくなった理由を俺が見つけるのは、また別の話。




身長差と体格差があれば美味いと思ってる。

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