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異世界に行きたい男の苦悩③

作者: シラ猫
掲載日:2026/06/22

今回でこのシリーズも終わりです。

連載作品の執筆にうつります

 答えは未だに見つからない。


 俺が異世界に行きたいのは紛れもない事実。

 もしかして思いが弱いのか?


 絶対に俺以外でも異世界に行きたいやつは、一定数いるはず。どれくらいの数か分からないけど、いるのは間違いないだろう。



 さっきまでは誰にも負けない熱意があったけど、色々試して行けないのはそういう事なのか。


 もし俺が異世界に行けるランキングで、圏外ならどう頑張っても無理だ。占い師に聞いて順位が分かるなら10万払うね。


 せめて先着順にしてくれんかな。

 それなら前向きになれる。


 いつか異世界に行ける事が確定してる場合、転生なら生まれ変わるから大丈夫。でも転移ヤバい。ジジイになってから行っても異世界を満喫出来ねぇじゃん。下手したら着いた瞬間にご臨終になるかもしれん。それはないと信じたい。頼むぜ神様。


 いつもはノリが悪いラノベ好きの友人が、自宅で出来る異世界に行く方法を教えてくれた。持つべきものは友だな。


 方法はこうだ。

 A3サイズの白い紙をテープで繋げて大きい正方形にする。それに赤字で六芒星を書いてからその中心に座る。


 友人曰く、無理に行こうとするから駄目なんだ。強く念じてあっちから召喚してもらえばいい。


 目から鱗が落ちるとはこの事だな。


 胡座(あぐら)をかいて座り、祈るように両手を合わせて強く念じた。

 俺をそっちに連れて行ってくれ!!


 結果としては駄目だった。

 正直、直ぐに召喚してくれるとは思ってなかったので、毎日祈り続けた。


 様子を見にきた母親から頼むから正気に戻ってくれと懇願された。


 泣かれるのは辛い。

 理解されないのは分かっていた。

 心がグラついたが、それでも祈りを続けた。


 10日過ぎた頃に、教えてくれた友人に駄目だったとメールしたら目を疑う返事が返ってきた。


『ねぇねぇ、今どんな気持ち? どんな気持ち(笑)? 異世界に行けなかった気持ち教えてww』



 殺意が湧いた。

 俺が裁判官なら死刑にしてやったのに。



 俺が遊びでやってたなら許してやれる。

 だが真剣にやってるのを茶化す行為は許さん。


 異世界に行って魔法を覚えたら、仕返しの為に戻ってきて髪の毛を消滅させてやる。そして額にハゲの文字を刻んでやるわ。


 奴の事は置いといて、異世界行きなんだが、正直な話手詰まりだ。他にも方法はあるが信憑性が低い。


 やはり俺には無理なのか……。


 暫くは無気力な日々を過ごしたが、リビングで家族と一緒にテレビ見てたら閃いた。


 マジシャンだ。

 マジシャンがいるじゃないか。


 テレビには奇想天外なマジックを披露しているマジシャンが映っていた。


 その日からマジシャンの映像を見まくって、異世界から転移して現代人に偽装してそうな奴を探した。異世界人なら移動手段を知っているはずだからな。


 モチベーションが上がってきた。

 今度こそは大丈夫だろ。


 目星を付けた。

 二十歳になったばかりの若い優男だ。

 彼は今までになかった驚くようなマジックを数多く披露していた。


 コイツ、異世界人で確定ですやん。

 名探偵でなくても分かるわ。


 素人さんは騙せても俺には分かる。

 コイツは魔法使っている。


 幸いにして彼は自分のマジックバーを都内で営業していた。たまにステージでマジックを披露してるらしい。


 何回か通い詰め、彼が現れた時に「貴方が異世界人なのは分かっている。どうすれば異世界に行けるか教えてください」と尋ねた。


 最初は丁寧に否定されたが、しつこく聞いたせいか警察を呼ばれた。


 前にも警察沙汰になったことがあり、尿検査されてから1泊する貴重な経験した。


 両親から精神病院を受診するように言われて、やり過ぎたと反省し謝罪した。


 自宅で落ち込んでいると、ラノベ好きの友人にお酒を呑みに誘われた。ケチなコイツがご馳走すると言ってまで誘ってくるのは初めての経験かも。


 本当は行く気は無かったのに、何故だか行くと答えてしまった。


 近場の飯屋だと思ったが、わざわざタクシーに乗って向かった先は、絶対に行くことはない新宿の呑み屋街。意外な場所に驚いてると、彼は慣れた感じで目的の店まで歩いていく。


 店の名は『ギルド』


 ドアを開けた瞬間に目を奪われた。

 そこは異世界アニメで見た事がある酒場兼用冒険者ギルドの光景。


 入り口直ぐにあるカウンターでラノベ好きの友人が、お金を払って銀色のコインを受け取った。


「これはな、銀貨だ。料理が来たらコイツを渡すんだ」


 そう言うと銀貨を俺に五枚渡してくれた。


 空いてる席に座り、友人がエール2つと干し肉を頼む。席にメニューなど無く、分からなければ店員に尋ねるそうだ。


 店員のお姉さんが、小樽のジョッキと木製の皿に盛られたジャーキーを運んできた。


 銀貨を二枚渡した。

 テンションが上がるわ。


 乾杯と言ってお互いのジョッキを軽くぶつけてから飲む。ぬるい。


 なるほど、本格的だ。


 塩味強めの干し肉を(かじ)り、エールで流し込む。


 調子が出てきた俺は店員のお姉さんにお薦めを尋ねると、『オーク肉と野菜の炒めもの』だと言われたので、それを頼む。


 実際は豚肉だけど、こういうのめっちゃ好き。


 ちゃんとクエスト用のギルドボードが置いてあり、『エールを1人で三杯飲む 銀貨一枚』みたいなクエストがいくつか貼ってある。


 友人と一緒にクエストして楽しんだ。

 ちゃんとギルドカードも用意してあるから、余計に力が入り、腹が苦しくなるまで飲み食いしてしまった。


 店を出た時に「また行こうな」と誘ってくれた。


 元気でた。


 異世界に行くことは叶わなったが、友情は育めた。


 少し前まで俺は孤独だった。

 何かに取り憑かれたように無茶苦茶な行動を繰り返してた。

 人生を半分近く生きて焦っていたのかもな。


 異世界行きを諦めた訳じゃないが、絶対に行くから、行けたらいいなくらいな感じで気楽にいこう。


 人生は1度きりだ。

 もっと気楽に楽しもう。


(完)







読んで頂いてありがとうございました


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― 新着の感想 ―
いつの間にか③迄掲載されて驚きました! 知らなかったので先程全話読みました。②も③も面白かったですよ。 主人公の心の声がめちゃくちゃ本音で笑いました!いやもう色々な方法があるんですね〜 駅はTVでやっ…
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