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こぼれ話中のこぼれ話『勇者との建国記』

当作品は勇者との冒険記の原作と言える作品。


勇冒とは様々な設定が異なっています。イメージが崩れるかもしれません。お読みになる際はご注意を!

商人の息子として生まれ、商人の息子として育ち、そして商人として死んでいく。筈だった。

その俺が何故こんな物々しい飾り付きの座り心地は最高だが、居心地が最悪な椅子に座って居るのだろうか。しかも、歴戦の強者達に囲まれて。どうなってるんでしょうねぇ~本当に。


「ではでは~、明日のシーベルエ城進行作戦!発表しちゃいま~す」


元シーベルエ参謀ニーセ・ケルペスト。叡知の聖女と呼ばれた人物。噂には聞いて居たが実際はこんな軽い人間だとはね。ニーセと対面した時から、噂は信じない事に決めた。

しかし、実力は折り紙付き。その戦場での的確な采配は未だに一回しか破られていない。また、魔法の行使においても、彼女に秀でる者はそうそう居ないだろう。

そんなシーベルエの聖女様は故有って、今は俺の元に居る。おかしなもんだね。


「まず、様子見にレッドラート隊が適当に突っ込んで、適当にやられちゃて下さ~い」


「弓兵隊に最前線に出ろと本気で言ってるのか?それとも、ふざけてるのか?」


「ハハハ、冗談だよー。貴方一人で突っ込ませたいな~」


不敵な笑みを浮かべニーセの視線の先にただ座り真っ直ぐな視線を向けるジン。一触即発な状態。


「作戦参謀殿、真面目にやってください」


良く言ったロンタル宰相。こいつらが痴話喧嘩を始めると長くなる。


「はぁ~い。先鋒はカー君とアレン君の隊に任せるよ~。シーベルエ城、城門前でしばらく耐えてて~、レッドラート隊はその後ろで無駄弾撃っててよ」


「了解した」


いや、無駄弾撃ってたらいけないでしょう。


「僕に作戦は必要無い。ラベルス将軍の敵を討つだけだ。魔将クレサイダ以外に興味は無い。そちらで勝手にやってろ」


相変わらずチームワークの欠片も無い奴だな。


「カ~ぁ君?お仕置きしちゃうよ~?」


肩が震えるカー君。元シーベルエ最強の剣士殿もニーセにだけは弱い。ニーセの言うお仕置き…うん、想像しないようにしよう。


「クレサイダはカー君に任せるだから、俺たちに手を貸してくれ」


「まぁ、良いだろう。ネイストに今回は手を貸してやるよ」


俺の価値の無い頭を下げた価値は有ったようだ。まぁ、カー君はこれでオッケイだな。


「じゃあ、次はベーテちゃんの小隊だけど、タイミングを見て私と一緒に城の右から攻めるよ~。私が城壁に派手に穴を空けるからベーテちゃん達は城門へ直行して開いて~。重要な役割だよ~」


「はい!この命に変えても、陛下の為に血路を開きます!」


「いやいや、ベーテ。頼むから命に変えないでくれよ」


俺にそんな重いものを背負わさないで!


「陛下、私ごときにそのお心遣いを…、そこまで私の事を思って頂き、私は…」


いやいや、貴女には何度も助けられてるからね、俺。そんな眼を潤ませて赤ら顔で俺を見ないで。陛下は凄く心苦しいです。


「盗賊上がりにそんな大役が務まるのかな?」


俺の後ろで気配を殺して立っていた女の声に俺はびっくり。俺の命が縮むから、後ろに立ってないで席に着こうよ。


「クロツキ、貴様こそこの戦闘に紛れて再び陛下を暗殺を企てているのでは無いのか?元暗殺者?」


「なっ!私は身も心も陛下に捧げたのだ!そのようなことをするわけが無い!」


あれ、そうだっけ?アレンが側に居たお蔭で助かったユキちゃんの暗殺未遂。俺が彼女の隠密と剣の才能に“俺はお前が欲しい。俺のところに来ないか?”と勧誘したところ、照れ始めて“そんな事を急に言われても、その困る。その、私の心の準備がだな”と、はぐらかされて流れたままだった筈だけど。まぁ、いつまでも俺たちの陣営に居るって事は、今では立派な味方なんだろうけどね。


「なっ、身を捧げた!それはどういう事ですか、陛下!」


えっ!なんで俺がベーテにキツく詰問されてるの?


「ハイハイ~。ベーテちゃん、落ち着いて~。作戦は以上。細かい指示は明日、状況を見て送るからね~。陛下、問題ある~?」


「全く無い。ただし、明日は俺はアレンの隊に同行する。城門攻めの部隊は目立った方が良いんだろ?俺自ら出てってやるよ」


文句付けようにも俺って、戦術が全く分からないからニーセに任せるしか無いんだよね。でも、これは譲れない。皆が戦場に出るのに一人だけここで茶を飲んでる気は無い。


ロンタル宰相が咳を一つ。分かってますって。


「危険は承知してるし、出ても何にも出来ねぇのは分かってるんだけどよ。仮にも一国の王だぜ。堂々とした姿を見せてやるよ」


実際、戦場に出たく無いんだけどね。怖いから。



寝れない。明日の戦いが勝利に終われば俺は正式にシーベルエの王になっちまう。俺が王だぜ。あり得ないけどあり得ちまう現実。

なりたく無いけど、ここまで来て引き返す訳にも行かない。死んでいった仲間達の為にも。


「陛下、入ります」金髪と金色の瞳が灯りを落とした野営テント内に現れる。


「アレン、陛下は止めてくれ」


畏まる幼なじみな剣士様には苦笑いがもれる。


俺の誘いにやっと乗り、俺の隣に座った剣士様。


「えっと、ライ兄。それで…何か用かな?」


アレン、その上目遣いはわざとかな?君は少し自分が男にいつ襲われてもおかしく無い顔立ちだと言うことを理解した方が良いよ。


「あー、何か明日で終わっちまうだなぁーと」


無言で頷くアレン。


「明日でライ兄は国王だね」


「あぁ、うん。俺みたいな一般庶民がね~」


うん、言いたい事が言えない。辛いね。昔なら、ガキの頃なら、こいつにもっと素直に言えたんだけどね。

いい加減に覚悟を決めろ、ライシス・ネイスト。良し!行くぞ。


「アレン!」



俺のいきなりの決意の呼び掛けに驚くものの、真っ直ぐと俺の顔を見る金の瞳。


「えっと、アレンと二人で旅してた時は楽しかったなぁ~なんて」


アレンの綺麗な瞳に決意がポッキリ折られました。情けない俺。


「うん、あの頃はライ兄と二人きりだったね。でも、今は忙しくてこうして、二人きりで喋れないね」


もしかして、それは寂しいって事か。うん、そういう事だ。可愛い奴だなぁこいつは。良し撫で撫でしてあげよう。そして、いい加減に覚悟を決めよう。


「あの、だなぁ~。これが終わったら、旅に出ないか?二人で。今なら贅沢な旅が出来るぞ。…その、新婚旅行代わりに…」


「へ。エッ!新婚旅行って、僕とライ兄は結婚してないし!」


「だから、そういう意味なんだよ!」


「デッ、でも、僕はライ兄以外の皆に男だって嘘付いてるし」


「本当の事を言えば良いだけだろ。別に誰も責めねぇよ」


お互いにテント内が暗くて良かったな。俺の顔も真っ赤なら、この少女の顔も真っ赤だろう。


「僕で良いの?ライ兄は国王になるんだよ」


「お前で良いの。お前は王妃になるんだぜ。嫌か?」


全力で首を振るアレン。その後は恥じらい下を俯き黙り込む可愛いアレン。ネイスト軍の勇猛果敢な名将アレン・レイフォート形無しだな。

うん、まぁ、あれだ。俺にとってはシーベルエ城の玉座なんかよりも、素敵な御褒美も出来たことだし、明日は張り切っちゃおうかな。

三年前、大学の授業中に真面目に書いていた作品の一部。これが勇冒の基盤となっています。


アレンが男装してる女の子だったり、ライシスが国を創っちゃたり、まぁ、凄い設定だったんですね。悪い意味で。


訳ありで色々と設定を弄ったのが勇冒になった訳です。久々にノートを発見。少し改変して載せました。

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