闘い続ける英傑達
幻霊界フォートン。ここでは望む物が何でも手に入る。金、趣向品、たいていのものはですがね。ここに居る人達が一番欲しい者は、今では、絶対に手には入らないでしょう。
「それで君はどう思いますか?ラスウェル君」
「俺はどうでも良いけどよぉ。ジンの兄ちゃんよ。ところでさぁ、マジでアレンがあのペグレシャンを手に入れたのか?というか、そのネイストとか言うガキはアレンに変な意味で手を出してねぇよな。あいつ、女みたいだからよ」
「私も彼らを一目見ただけですからね。そこまではわかりませんよ。そこの彼の方が詳しいと思いますよ」
目の前で赤髪の男を睨む大男に回させて頂きます。最も私達の話なんて聞いてないでしょうが。
ラスウェル君は、不機嫌そうにグラスを煽る。本当に彼等は今何をやっているのでしょうかね?ジンサは何をやってるんでしょう?兄としては、そろそろ素晴らしい女性と出会っていて欲しいところですが。まぁ、あの朴念仁では無理でしょうね。
「ハッ、てめえの部下も可愛げが無けりゃあ、上も上だな。素直に敗けを認める度胸もねぇのな!」
「これは我の部下が大変失礼をしたようだ。どうも、我が部下はそなたと違って品が有りすぎてな。品の無い人間の言動を理解出来んのだよ。しかし、そなたの部下とやらを見てみたいものだな。さだめし上官がこれでは、苦労人もしくはよっぽどのお気楽人なのでしょうな」
「舐めるなよ。俺の部下は優秀な奴らばかりだ」
確かにご優秀でしたよ。そして、あの二人を纏めていた貴方もね。私も彼処まで華麗に立ち回られるとは思っていませんでした。ハシュカレ君達と違って貴方達を逃がす予定は無かったんですけどね。
「それは良いことだ。そなたのような粗暴な者がクーレに大勢居たら、クーレの王も大変であろうな。そして、我の後を継いだイルサがクーレを容易く征服した後の統制が大変であろうな」
また、二人の話が原点へと帰るようですね。
「それは、てめえに似て娘さんもはた迷惑な性格になっちまったもんだな。俺の性格まで可愛いいミシャとは大違いだ!」
「ハッ!どうだか分からんでは無いか。今頃、そなたみたいに末端の兵士になっているかも知れんぞ?それに比べて、我がイルサはどうだ。可愛らしさの中に高貴な品を持った素晴らしい女性になっているだろう!これは断言出来る!」
結局、貴方達は娘の自慢合戦になるのですよね。
「それこそ、どうだか!ミシャはとても良い子だ。しかもとても美人に育ってるに違いないな」
それを聞いて魔王はそれがどうしたと鼻で笑う。完全に上から目線だ。
「昔、我が凱旋した時に側に寄ってきて天使のごとき笑顔で、“お父様、お疲れ様”と言われた時に我がどれだけ癒されたか?その晩は我と添い寝したのだぞ。恥ずかしそうに俯きながら上目遣いで、たまにはお父様と一緒に寝たいな、だぞ!このイルサの可愛いさはそなたには到底理解出来ないだろう」
「あぁ、そんな父親として当然の事で威張れるてめぇの気が知れねえな。俺なんざなぁ~」
不敵に笑うラベルグ氏。
「大きくなったら私もお母さんみたいにお父さんと結婚したい!って言われたんだぞ」
「なっ、何!くっ、そんな羨ましい事をイルサに言われてみたかった。イルサは我よりもカイムにべったりだったから…」
肩を落とす魔王殿にラベルグ氏が勝利の高笑いを上げてます。なんて、低レベルな闘いなのでしょうか。何とも苛つきますね。
「ジンの兄ちゃん、どう思うよ。この親バカどもは」
「二人とも全く持って分かってませんね」
「おい兄ちゃん、俺のミシャに文句を付けるってのか?」
「レッドラートよ。我の前でイルサを侮辱する事は許さんぞ!」
怒りの矛先が向かって来ますが、私もこの二人の親馬鹿っぷりには多少うんざりしているので、言わせてもらいます。
「違いますよ。お二人のお嬢様は確かにとても可愛らしいのでしょう。でも、貴方達の考え方が私は気に入らないのです」
この愚か者達に真理を教えてあげましょう。
「子供は皆が可愛いのです!実子出なくても、我が儘であろうとどんな子も良い子達なのです」
ノースライン孤児院の皆は元気でしょうか?きっと、皆立派な大人になっていることでしょうね。
ロットは元気が有りすぎですから少し心配です。メールは逆に内気でしたからね。テドやキリアは私の後を継ぐ立派な騎士団員になるなんて言ってましたけど、うまくやってけているでしょうか?
そんな私の子供達に思いを馳せていると、ラスウェル君からの一言。
「ジンの兄ちゃん、あんたもジンやこいつらに似て、親バカだな…」
貴方だって、アレン・レイフォート君に五月蝿いでしょ。