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本の紹介19『アブナー伯父の事件簿』M・D・ホースト/著

作者: ムクダム
掲載日:2025/10/28

開拓時代のアメリカを舞台に繰り広げられる探偵譚

 江戸川乱歩だったか、坂口安吾だったか記憶が曖昧ですが、古いミステリーガイド本で本作を優れた海外ミステリとして取り上げているのを読んだのがきっかけで手に取りました。アブナー伯父という探偵も、作者の名前も知らなかったのできっとマイナーな作品だろうと思っていたのですが、濃いミステリファンにはお馴染みのタイトルだったようです。

 本作はアブナー伯父が探偵として活躍する話を14編収録した短編集で、1話あたりのボリュームも手頃でちょっと時間が空いた時に読むのにちょうど良い感じです(ちょっと長いお話も一部ありますが)。開拓時代のアメリカが舞台ということもあり、荒野などの一風変わった場所で事件が起きる話もあり、なかなか新鮮です。

 主人公はマーティンという名の少年で、アブナーは彼の伯父に当たります、アブナーは大柄でがっしりとした体格をしており、いかにも開拓時代の男といった風情なのですが、いつも懐に聖書を忍ばせている信心深い性格とのアンバランスさが魅力です。その時代のアメリカでは普通のことだったのかもしれませんが。

 創元推理文庫の副題として「シャーロック・ホームズのライヴァルたち」と銘打たれており、本作は世界中で人気を博していたシャーロック・ホームズシリーズと競い合っていた探偵譚の一つのようで、役回りとしては、マーティンがワトスン、アブナー伯父がホームズに当たります。

 お話の中には意表をつくトリックが出てくるものもあり、古典的ミステリとしても十分に面白いのですが、それよりも印象に残っているのは、アブナー伯父の信条のようなところですね。

 アブナー伯父は信心深く、無法を許さぬ正義感を持っているのですが、正義と悪についての自分なりの芯を持っているような印象を受けます。開拓時代、まだ社会基盤が磐石でない段階であったからこそ、開拓者たちは自分たちなりの理屈、信条を持って困難に立ち向かう場面も多かったのかなと思います。この点が、古くからの歴史を持つイギリスを舞台にしたシャーロック・ホームズシリーズとの対比となっているようにも感じました。

 荒野に新たな社会秩序を築き上げていくような感覚で、アブナーは事件の解決に望んでいたのかもしれません。既存の法律や常識に従うだけでは正しい方向に進むことができないような場面に直面した際、彼は犯人を見逃すような行動に出ることもあります。事件の中でアブナーが語る正義や勇気、人のあるべき生き方についての言葉が、事件を支えるトリックよりも興味深かったです。

 ちょっと古めかしい人物像をしていますが、根底に流れるものの見方や考え方は現代にも通じる普遍的なものがあるように思えますし、自分なりの正義感を発揮する点などは、のちに隆盛するハードボイルド作品の原点なのかもしれません。

 ミステリに興味があるけれど、話を長引かせて真相が明らかになるまでがじれったいと感じる人は、まずは短編種から手をつけることをオススメします。長編ミステリのエッセンスがそこには詰まっているからです。

 短編というのは長編としても作れるお話を必要最低限の要素でまとめ上げたものだと思っているので、短編が上手い人は長編でも読者を飽きさせることがないという印象があります。短編で気に入った作品を見つけたら、同じ作者の長編に挑戦してみるのが良いでしょう。終わり

 

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