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1章-2話 黒棒と初スキル!?

ログアウトして、魔女っ子が言ってた、初心者育成指南をネット検索する。


---

初心者育成指南

①訓練所でLv2にする

②ゴブリン狩でLv3にする

③Lv3で鍛冶屋にいく

④初回ログボ箱はLv5以降で開ける

これで100万円分相当の装備が手に入る。

---


「マジか、アカウント作り直すか……」


カプセルに乗り込み、ワルビルに接続する。


モーターの駆動音とわずかなオゾンの匂いが、再挑戦の緊張をさらに煽ってくる。


《ワールドビルダーへようこそ》


メニュー画面からアカウント削除を選ぶ。


《エラー》「?」


もう一度同じ操作をする。


《エラー》


「げ…これもバグ?まじか……」

気分が沈んだまま、とりあえずログインする。


---《ログイン》---《始まりの街*東門前》


街の景色を眺めて、この世界は生きている、改めて感じる。


石畳の隙間に小さな草が芽吹き、アンク達が息をするかのように自然に動く。作り物だと忘れてしまうほどの光景。


その景色を見ても、やる気は起きなかった。

地雷踏みまくりで、アカウントは作り直せない。けど、この世界で成り上がると決意はした。


――バチンッ!!――

頬をきつく叩く。


「過ぎた事はしゃーねーわな!ハハハ!」

「こんなので心が折れてたまるか!」


---《始まりの街*表通り》


表通りを歩き、訓練所に向かいながらATMを探す、所持金がないとなにもできない。


「確かこの先にあるって門兵に聞いたけどなぁ」


鼻をくすぐる屋台の香ばしい匂いに足を止めそうになるが、財布の中身を思い出し気持ちを引き締める。


訓練所を探し辺りをキョロキョロしていると、表通りの端で倒れている人が目に入る。

どうしようか悩んだが、目に付いたならしょうがない。


「大丈夫ですか?」

「水……水を……」


これはプレイヤーじゃない、アンクだ。助けたらクエ発生するフラグする期待を寄せ助けることにする。


「水はないけど、お茶なら」

アンクに神話級のお茶を一口飲ます。


「はあああ!ありがとう!生き返った!!なんかお礼しなきゃなあ!」


きたきた!これこそワルビル!よ!

レアなクエストか!レアなアイテムか!?

脳内のディスラナイトが騒ぎたてる。


「今手持ちがこれしかないけど!助かったよ!」

アンクは足早に立ち去ってしまった。


渡されたのは小汚い巾着袋。

中身はギル金貨が10枚と古びたリングが入っている。

手の中で転がる金貨はずしりと重く、現実の一万円札よりも価値がある気がしてくる。


フラグを期待しすぎた脳内の自分は撃沈しているが。1万ギルは得たから良しとすることにした。


「あ、これで訓練所に入れるか」

訓練所へ向かう。


「あの、アンク――お茶飲んだだけで元気になったけど、神話級*お茶って、何か効果あるのか?」


――ゴクッゴク―― お茶を飲む。


「う~っ!!うまっ!」

しかしステータスに変化は起きなかった。


「アイツ…んだよ。喉乾いてただけかっ!!」


---《表通り*訓練所》


訓練所に着いて、受付に5000ギル払う。


「しゃあ訓練やるか!」


一通り訓練をしたらすぐLv2になった

訓練といっても、単なるキャラクター操作説明。


だが、身体を動かすたびに視界が鮮明になり、ゲームとの一体感が深まっていくのを実感する。


「これで、5000ギルは高くね!?」

思わず口に出てしまった。


Lv2になったので、教官の元へ行く。


「おっLvアップしたか。んじゃスキルを渡すぞ。適性書はあるか?……」

背中の棒を見つめながら、考える教官。


「ん~まあ武器がそれだし。間違いなく物理だわな」

「え?いや、あの、これは」

「んじゃこれだな」


教官が俺の手を握り目をつぶる。互いの握り合う手が光る。


【基本スキル*打ち下ろし】習得


「基本技だが、スキルはスキルだ!カカシで試してみな!」

疑心暗鬼にカカシに向かい棒を握る。


「ふぅ~」

息を吐いて身体をリラックスさせる。


「せいっ!!」【打ち下ろし】ズドンッ!!


頭の中で打ち下ろしと考えただけで、身体が動いた。カカシは引き裂かれたように、胴体まで棒がめり込んだ。


乾いた木片が飛び散り、手のひらから痺れるような感覚が走る。まるで本当に斬撃を放ったようだった。


「これがスキルか――」

手をグッと強く握り、ディスラナイトはもっと強くなりたいと心から思った。


「頑張れよ!!」

教官と笑顔で握手交わすと、教官が思い出したかのように話す。


「そうだ!街出る前に表通りのスキル店に寄ってみな。色々スキル書が買えるからよ!!」


「わかった!!あっそうだ教官」

ディスラナイトも、あのリングを思い出した。


「これわかります?」「こ、これは!!!」

教官が目を丸くして驚く。


おおっと!?レアリティ高いアイテムだったか!


「フベンリングじゃねぇか」

「ふべんり??」

「あぁ、今では必要ない無駄でゴミアイテムだ」

またもや白目になる。もうこの負の連鎖は呪いかもしれない。


「昔は今のような、なんでも入るマジックバックが無くて、プレイヤー達のインベントリが圧迫して大変だったわけよ」

あー確かに、どのゲームもインベントリは課金で枠を増やすしかないからな。


「課金ができないプレイヤー達の為に、あるプレイヤーが制作したのが、このフベンリングよ」


「ほうほう」


「こいつは一度指定したモノを無制限に出し入れできる」

「おお!!かなり良いじゃないですか!」


思わず目が輝く。インベントリの枠を増やさなくて良いなら最強の節約グッズとなる、課金ができないディスラナイトにはピッタリのアイテムと言える。


「ただな。指定したら変更はできない」

「はい?」


「だから、ロングソードって指定したら。ロングソードだけ無制限に――」

それは……ゴミすぎるだろ……。


「状況に合わせて様々なアイテムで戦う戦術が主流になってからは、アイテム指定という制限がすごく不便になったわけよ」

「あー…」


「ゴミアイテムだが、未だに使ってる奴もいる」

「魔法、スキルそれさえも収納できるから、工夫次第では使い物になるちゅー事よ」


色々教えてくれた教官にお礼を言い、教えてくれたスキル店へと足を向ける。


1章-2話② 黒棒と初スキル!?

---《表通り*スキル店》


「いらっしゃい、ビギナーだねアンタ。ヒヒ♪」

胡散臭い、アンクの婆さんが薄気味悪い笑顔で出迎えてくれた。


「訓練所の教官に聞いて来たんだけど。俺にも使えるスキルってあるかい?」


「アンタ、棒術だね?色々あるよ。ヒヒ♪」


【彗星5段突き】5000万ギル

【会心連撃打ち】8000万ギル

【メテオ流星群】9500万ギル


ディスラナイトの目が飛び出る。動揺を隠せずに、婆さんに聞いてみる。


「ご、5000ギルくらいのやつ、ないっすかね?」


「なんだテメー!貧乏人間か!!愛想良くしてバカだったよ!!」

すごい険悪な顔でこちらを睨む婆さん。


「低単価のゴミスキルなら、その樽の中だよ!!その中なら一律1000ギル!!貧乏人にはお似合いだよ!!」


「ワゴンセール、いや樽セールかい!」

思わずツッコんでしまったが、使い方次第で化けるやつあるかもしれないと樽を漁る。


【育毛】

【微風】

【動体視力】

【柔軟】


あってもなくても変わらないスキルのように感じる。渋い顔をしていると婆さんが言う。


「ゴミって言ったろ!」


そう言われても、ディスラナイトは樽の中をゴソゴソしていたら、樽底に分厚いスキル書を見つける。


「おっ!?これは…」


「はん!それかい?ただの分厚い本だよ。誰が言ったかは知らないけど中身の無い本。スケルトンブックさ」


「これ、買うよ」

なぜか、この本に賭けてみようと思ったディスラナイト。


「買うのはいいが、返品・返金は受け付けないよ!」

店を出る前に婆さんは、俺を睨みつけながら怒鳴った。


---《表通り*噴水前広場》


噴水の縁石に座り、スキル書を取り出す。


「さて、スキル習得しますか!」

スキル書を広げて、手形が書かれたところに手を合わせる。


【基本スキル*動体視力】習得

【基本スキル*柔軟】習得


周囲の景色がくっきり見え、眼球がよく動くようになり、ストレッチすると身体はよく伸びた。


「うん、うん、こんなもん、こんなもん」

強さとは無縁かもしれないとは思いつつ、ディスラナイトはなにも感じないように努力をする。


次はスケルトンブックを手に取る。他のスキル書と比べてかなり分厚い。


ディスラナイトがページを巡ろうとしたら――。


顔を真っ赤にしながら、力ずくで本を開こうにも一切開く気配はなかった。


「まあいいや、これからも、やれることする!という事にしよう!」


「ハハハ!!前向いていこーじゃないの!」


気を取り直して金策をしに、街の外に出て、ゴブリンを探すことにする。


---《初心者エリア》


「ふふふ、ゴブリンよ。以前の俺とは違うんだぜ!」


「先手必勝!!」【打ち下ろし】ドンッ!


ゴブリンの頭部に一撃。

ゴブリンは反撃もできぬままに消失した。


「悪!即!斬!」

「1回これ言いたかったんよなぁ」


この後、2時間ほどゴブリン狩りをした。


ゴブリンの行動パターンを覚えてしまえば、ヌルゲーのマンネリ化になり、緊張感が解けてしまう。


「ヌルゲーすぎて睡魔がやべぇ、やっぱゴブリンは単なる初心者御用達仕様かなぁ」


「ドロップもレベルアップも一切しないし」


草原の風が額の汗をさらい、耳元で鳥の鳴き声が響く中、マンネリ化した狩りのリズムが身体に刻まれる。


草原を歩きながらブツブツ独り言をつぶやいてると。


「ガルルゥ」


ゴブリンではない、唸り声が聞こえる。一気に緊張感が高まり顔が強ばる。しかし、未知との遭遇に高ぶる好奇心は抑えられず、唸り声の聞こえる方向へ、音を立てず、ゆっくりと忍び寄る。


唸り声の主を見つけ、ジリジリと忍足で背後に近づいていく。


――グリンッ!――

ヘルドックがこちらに顔を向ける。


ヘルドッグがディスラナイトを視認した瞬間、すぐに飛びかかってくる。


「くそっ!気づかれたかっ!!」

慌てて攻撃をするディスラナイト。互いの攻撃は交差するように空を切った。


心臓がバクバクと鳴り、黒棒を握る手に、汗が滲んでいくのがわかる。その感覚が、ディスラナイトをさらに緊張させる。


(こちらの手札は打ち下ろしのみ、それしかないとバレたら――)


ダンスでも踊っているかのように、思考が目まぐるしく回る。

思考のダンスが導き出したのは、一撃で倒すしかない、一撃に全てをかけるしかない。


その気負う気持ちが、さらに身体を硬くさせる。

間合いを取り合い、視線を外さずに睨み合う。


互いが自分にとって最善の手を、頭の中でシミュレーションしている。


――次第に、お互いの呼吸が揃いだす。


「ガルッ!!」

ヘルドッグが飛びかかってくる、ディスラナイトも同時に攻撃を繰り出す。


「うおりゃあ!」【打ち下ろし】ドグシャ!!


ヘルドックの身体を鈍く引き裂いた。


「くう…マジ緊張感やべぇな……」


その緊張感の虜になり、ディスラナイトは疲れ果てるまで、狩りをしてから街に戻り、ログアウトした。


---《ログアウト》


VRカプセルから身体を投げ出し、仰向けに転がり部屋の天井を見つめる。


視界の隅には、まだ赤いHPバーが残っている気がする。身体に残る戦闘の残滓が、現実でも心拍を早める。息を整えながら、落ち着けと一言呟く。


「絶対に成り上がる――」


その誓いを胸に、俺は疲れ果て眠りへと沈んでいった。

--- 1章-3話①へ続く

---【毎週月・水曜21~22時頃更新!】

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