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今なら空も飛べる気がする

「ヒロト、次の依頼は村の防衛です。」


エリスが手に持つ地図を指差しながら説明を始める。俺たちは王国の南部に位置する小さな村に向かっていた。どうやら近隣の森から出てくる魔物が村を襲っているらしい。


「また戦闘か…俺、もうちょい平和な仕事がしたいんやけど。」


「勇者様に与えられる依頼が平和なものであることは、まずありませんよ。」


「なんでそんな冷たい言い方すんねん。俺のメンタルが削られていくわ。」


「むしろメンタルを鍛える良い機会では?」


相変わらずエリスのツッコミは容赦ない。まあ、彼女がいなかったら俺はとっくにこの世界で迷子になってたんだろうけど。


村に到着すると、村長らしき老人が出迎えてくれた。


「おお、勇者様!来ていただきありがとうございます。最近、夜になると魔物が現れて村の作物を荒らしていくのです。」


「なるほどな…まあ、任しとき。俺のスキルでなんとかなるやろ。」


自分で言っておいて不安しかないが、村人たちの期待の眼差しに押されて引き受けざるを得なかった。


夜になると、村の周囲に簡易的な防御陣を敷いて待機することになった。エリスと俺は村の入口付近で見張りをしている。


「エリス、なんか静かすぎひん?逆に怖いわ。」


「確かに…こうも静かだと、逆に緊張しますね。」


そのとき、遠くから低い唸り声が聞こえてきた。暗闇の中から姿を現したのは、大型の猪のような魔物『バロッドボア』だった。


「来たな…エリス、準備はええか?」


「もちろんです。ヒロト、スキルを使ってください!」


俺は手の甲に浮かぶ紋章に集中し、村の兵士たちのスキルを探る。


「えーっと、これや!剛腕『烈震衝撃波(クリムゾンインパクト)』!」


スキルを発動すると、拳から強烈な衝撃波が放たれ、『バロッドボア』を吹き飛ばした。


「スキル名の中二病感は相変わらずやけど…やっぱりスキルの力ってすごいな。」


「感心している場合ではありません。まだ他にもいます!」


次々と現れる魔物たち、『シャドウゴブリン』や『フレイムハウンド』に対して、俺はスキルを駆使して立ち向かった。だが、その最中、体に異変を感じた。


「なんや…急に気分が…うおおおおお!めっちゃテンション上がってきた!」


「また副作用ですか!?今度は抑えてください!」


「いやいや、抑えるとか無理や!これめっちゃ楽しいやん!見てみ、俺のこの華麗な動き!」


「テンションが上がりすぎて戦い方が雑になっています!冷静にしてください!」


「身体が軽い!今なら空も飛べる気がする!」


「飛べません!いいからちゃんと前を見てください!」


スキル『代打』の副作用は相変わらずのハイテンションだったが、俺はそれをうまく利用して魔物を次々と倒していった。しかし、テンションが上がりすぎた結果、必要以上に力を使いすぎてしまう場面もあった。


なんとか魔物の襲撃を退けた後、俺たちは村の広場で休息を取っていた。テンションが下がり、どっと疲れが押し寄せてきた俺は地面にへたり込む。


「はぁ…なんやこれ…疲れが倍増してる気がするわ。」


「スキルの副作用についてはもう理解しているはずです。少しは対策を考えてください。」


「そやけど、あのテンションの高まりはなんかクセになるっちゅうか…あかんやつやな、これ。」


「その自覚があるなら、なおさら注意してください!」


エリスの説教はもっともだが、やっぱり耳が痛い。俺は深く息をつきながら空を見上げた。


「それにしても、このスキル『代打』、便利やけどデメリット多すぎひんか?」


「だからこそ、慎重さが求められるのです。」


「うーん…ホンマに俺、この役割向いてない気がするわ。」


「その発言、何度目ですか?そろそろ慣れてください!」


エリスのツッコミに苦笑しながら、俺は再び心を奮い立たせることにした。次はもっと上手くやる…はず。


こうして、スキル『代打』の副作用と向き合いながら、俺の異世界での生活は続いていくのだった。



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