3. 馬車に乗って
水を被りサッパリしたところで
「改めまして、ハレオです」
「うむ、このBランクパーティ、
疾風の風を率いる、アランだ」
「ミューズよ」
「ロークだ」
疾風の風……風かぶっとるがな。
言いたい……風かぶっとるやーん。って言いたい。
けどあかん。今ええ感じに来とるのに、こんなんぶっ込んで気悪くされたらかなわん
ほんでミューズよ、まだ胡散臭そうな目で俺の事見とるがな。
ワイ、悪いおっさんやないよ!
「そして今、護衛クエスト中で雇い主である
商人のジルさんだ」
「どうも初めまして、商人をしてる、ジルです。
中々どうして大変な目に、合ったみたいですなハレオ殿」
「どうもどうも、お仕事中にわざわざすいません。助けて頂きありがとうございます」
「いえいえ、良いんですよ。
助け合いもまた人生の一部ですので。
それでハレオ殿、このまま進めば、我々の本拠地があるリパと言う街なのですが、ご一緒しますか」
ここ逃したら、歩き確定する。なんとか潜り込みたい所やけど。
「ありがたいんですけど。
今ご覧の通り、何も無い状態でして
お返しもお支払いも出来る物が無いんです」
「ははは、一目見たら分かる状態の人に何かを要求する事は、無いですよ。
そうですね。無料じゃちょっと怖いですよね? 」
「ええ。善意だとは分かっていますが
不安にはなりますね」
「じゃあこうしましょう。リパの街まで送って差し上げます。
そしてハレオ殿は、当分の間、そこで冒険者なり仕事なりをしながら暮らして行こうしてますよね。
と言うか、選択肢が無さそうな感じですよね」
おうぅ、マジな話し俺の手持ちの金、財布には入っとるけど……使えませんよねぇ。
スマホでバーコード決済ピッ、とかも無いっすよねぇ。まぁ圏外やろからどの道無理か
冒険者がどんな仕事か分からんけど、いやボヤーっとは分かるよ?
俺の宿敵、熊公とか倒してお金に変えるとかなんやろーけど、他の仕事で誰もが出来る仕事って無さそうやし、それしかないんやろな……
ファンタジーかよ! ファンタジーだったわ。
にしても、俺自慢や無いけど、防御だけ凄くて、攻撃力皆無なんやけど、冒険者できるんか?
弱パンチしかまだ覚えてへんのやけど大丈夫かな。
三十八歳、ハレオ肉体労働始めるってよ! って
わりかし無謀な気するけどなぁ。
「おっしゃる通りなんですよねぇ」
「では、リパの街で暮らして行ける位の稼ぎが出だしたら、我が商店をご贔屓に使って貰うって事でどうでしょう。
こうみえて、そこそこ大店の店主なのですよ」
マジか! ありがてぇ! 街まで行けりゃー何とかなるような気がしないでも無いから
メチャ助かるぅ!
俺に遣わされた、幸運の使者か?
ジルさん……足向けて眠れねぇなぁ!
「それじゃあ、お言葉に甘えて、ご一緒させてもらって良いですか」
「向かう先はリパの街、ジル商店の荷馬車にようこそ」
「ありがとうございます」
マジ感謝、あざーす!
ガタガタと進む馬車の後ろに座らせてもらい、アラン、ロークと話しながら情報収集に精を出す。
道中アランに、まずここの国? 世界? ここ何処やねん的な事を聞きだし分かったことが。
今いる国は、ローゼン。
良くある王政? の国で、今向かってるのが、ローゼン国のリパの街って事らしい。
ローゼン……やっぱ聞いた事無いな。
王都に比べれば小さいが上から二番か三番目位の規模みたいだ。
王の名前もローゼンなんとかになるらしい。
王政と言われてもピンとこないが、まぁ王様が一番なのだろう。
そして、世界の名は? 国って何個あるの? って聞いたが、世界の名前は分からないらしい。
国は無数にあるらしく、アラン達も幾つかの国を巡った事があるらしいが、馬車を連れて、行きに半年、往復一年って言うのが一番の遠出らしい。
馬車で一年……俺二時間で、もー馬車、嫌やなー思ってるのに、アラン達は、鋼の精神と鋼鉄の尻の持ち主らしい。
んで、何しに行ったん? て聞き出したら、高値で売れる強い魔物探したり、ダンジョンに行って来たらしい。
ダンジョン! 良いねーファンタジーだねぇ俺も攻撃手段確保したら、俺最強みたいなムーブかましながら無双したるねん!
よくよく聞くとダンジョンには大っきい虫が出て来る場所とかあるらしい。
虫か。まぁやっぱ……大分落ち着いて気が向いた時に出向くとしようか。
都会育ちは虫に弱いんだよ。
当分この国、この街、出れるような気がしないから、国の数とかダンジョンとかは、追々調べるとして。
次にお金どんなんなん? みたいな事聞いたら、アランが教えてくれたのは、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、大白金貨が、あるらしい。
鉄貨=十円
銅貨=百円
銀貨=千円
金貨=一万円
白金貨=百万円
大白金貨=一千万
らしい。ふーん、端数とか無いんやな。一円単位が無いのは楽だわな、そんな事しか思い付かんかった。
馬車に乗って不思議に、思ってた事を聞いてみた。
なんて言うか、今座ってる所って幌の付いた荷台の中って感じなんやけど……
荷物無いんよな? 不思議やの? と思ってアランに聞いてみたら
ジルさんはマジックバック持ちだから、この荷馬車分位ならバックに入るらしい。
みた感じ、一トンダンプ位の広さ、いやそこまで無いか。大人がギュウギュウ詰めに寝転んで五人位か?みたいな幅なんやけど、結構な量入るんやな。って……
マジックバック! 代名詞やわな。
ええのぉーええのぉー
アランに、ちなみに幾ら位すんの?と聞いた所、最低でも、一千万、入る量によって値段変わるらしいけど、中には数億の物もあるらしい。
ふーん。無理やん。今所持金ゼロで無職やのに、無理やん。
今すぐ欲しいのに、無理やん。
最初のファンタジーで、つまづいたんだが?
はぁ……無いわ。
ちなみに、アランは妻帯者らしくリパの街に嫁さんと子供が居るらしい。出張気分か。
俺に、怪しい動きしたら切る、と一定間隔で見てくるミューズちゃんは、ロークと付き合ってるらしい。
前衛の剣士と後衛の魔法使いでバランス良くやらせてもろーてますってか。やかましいわ。
いやまず回復役入れんかい! 怪我した時、困るやんけ! と思いもしたがポーションもあるから大丈夫らしい。
そーでっか。
俺とミューズちゃんとの恋は始まらないみたいです。
その途中優しいゴリラ事、アラン君がパンをくれた。
あの? フランスパン位、硬いのですが? なんか昔ながらの方法で作ってますみたいな感じで硬い。
パンっぽい味するけど、現代の食料に慣れた俺の味覚には刺さらんかった。
いや。マジ、これ飯関係大丈夫か?
そんな不安を抱きつつも、半日ほど進んで日が暮れそうになった時
眼前に見上げる位高い石造りの壁が見えてきた。




